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『ファミコンの驚くべき発想力 限界を突破する技術に学べ』

日本を代表する家庭用ゲーム機…ファミリーコンピュータ。
そう、ファミコンである。
世界のゲームを変えた歴史的な名機といっても過言ではあるまい。
スーパーファミコンの時代を経て、家庭用ゲーム機の王座にプレイステーションが君臨していた時代になっても「テレビゲーム=ファミコン」というイメージを持ち続けていたオトナは少なくなかった。
数々の名作を世に出し、厳選された作品を収録したファミコンミニをオトナたちが熱狂をもって迎えたことは故のあること。
本書はプログラミングの視点からその設計思想にアプローチし、制約の中から名作を生み出した発想力の源を探る。

いうまでもなく現在のゲーム機と比べればマシンパワーは文字通り吹けば飛んでしまうくらい低い。
当時、他にも発売されていたゲームができるコンピュータと比べても「総合的な」スペックは低い。
ファミコンはゲームに必要ない部分はすべて削ぎ落とした。
こうして「ゲームに関する」スペックは他のコンピュータにも比肩(部分的には勝る)し、一万五千円(他のコンピュータは軒並み十万円を超えていた)という価格を実現する。
これもファミコンが普及した大きな要因なのである。
それでもハードのスペックはまだ十分ではなく多くの制約が課されていた。
現在のアイコンひとつに消費されるデータ量よりも初代ドラクエの容量が小さいというのは有名なお話。
徹底して無駄を省き、限られたスペックを最大限に引き出す…いかにしてプログラミングがそれを可能にしたのかを明らかにしていく。

この本の枕はRPGのパーティ数の定番が4人というのはなぜかという解き明かしである。
実はこれにもファミコンならでは技術的な理由がある。
そしてゲーム製作は根本的な基礎はファミコン時代に完成しており、4人パーティはそのひとつの象徴ということだ。

正直、プログラミングに関する部分は知識がないとよくわからない(私もそうだった)。
細かい専門的な部分はおいても、その発想法は思わず唸ってしまうことが多かった。
愛すべきファミコンという実例があるからこそ、プログラミングの部分が理解できなくても、その凄さが伝わってくる。
きっと知識があればより楽しく読めるだろう。
ファミコン好きならば先に挙げた4人パーティの話のようにその技術の背景を「実感」ができる。

コンピュータの進歩は日進月歩。
この本が出てからすでに10年が経つ。
おそらくは内容に古い部分はあるだろうが、ここに書かれている発想法はプログラミング以外の部分でも応用可能。
ワクワクしながらファミコンミニを楽しむオトナたちの姿。
制約が必ずしも悪ではないことを教えてくれる。

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『ファミコンの驚くべき発想力 限界を突破する技術に学べ』
著者:松浦健一郎、司ゆき
出版:技術評論社
初版:2010年

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