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不妊治療卒業旅行

令和5年の誕生日。私はそれまで4年ほど頑張って来た不妊治療をやめました。

昔から「結婚したら赤ちゃんを産んで育てる」のだと信じて疑いもしなかった私は、子どもを持つ事ができないという事実に到底納得できませんでした。しかし、その時期は仕事やパートナー、メンタル…いろんな事で八方塞がり状態だったのです。

つい何ヶ月か前にも院長先生と不妊治療のやめ時について相談させていただいていました。誕生日が来てクリニックに行くことが無くなり、自由な時間が戻って来た事に身体的、精神的に少し楽になりました。

それから数ヶ月後、前々から夫くんと約束していた卒業旅行を計画しました。

出かける前に
「ちゃんと気持ちに整理がつけられるかな」
と、夫くんに打ち明けると

「うーん?いきなりは無理だろうけど、その時はまたどこか行けばいいやん」
そんな答えが返ってきました。

それもそうだよな。4年間抱えていた“子どもが欲しい”という思いが、たった1回の旅行でどうにかなる訳ない。

2人で何回も旅行に行けばいいんだ。楽しい事をしよう。そうすればいつの間にか楽しい事で上書きされて、この思いも忘れてしまうか、良い思い出に変わるはず。


そんな思いで卒業旅行と銘打った旅行にでかけました。関門海峡の綺麗な景色や海を見て、海鮮丼とかフグ料理とか美味しいものを食べてお土産を見て回って楽しい気持ちでいっぱい。


でもまぁ、やはりそんな簡単にいく訳ありません。思ったとおり旅行から帰ってからも「あの時ああしていなければ」「もっとこう事すれば良かったのかも」不妊治療中の反省、後悔みたいなものが頭をグルグル回ります。

そんな堂々巡りをしながらの年明け。新婚時代の話になり、思い出の温泉に入りに行くことがありました。


私の住む地域では人気の、ホテルの上にあるお風呂です。何が良いって、日中の晴れた日は綺麗な青空、街の様子や電車やバスの行き来などを眺める事ができます。夜は星空と街の灯りが綺麗です。

残念ながら私が再び訪れたその時は小雨。屋根の下を陣取って、温泉に浸かりながら綺麗な夜景や、絶え間なく現れては流れて消える湯気をぼんやりぼんやり心地よく眺めていました。

そしたら自然となんの前触れもなく

「たまちゃん、バイバイ。またお腹に来てね。」

心のなかでふとそんな事を思いました。


“たまちゃん”とは私が勝手につけていた胎児ネーム。胎児というには早いですけど、だからこそ卵子の“たま”と、魂の“たま”が由来です。

ふと我に帰って、今さっき本当に私の中の“たまちゃん”とちゃんとお別れする事ができたんだなって思いました。今度はちゃんとあなたを育ててみたいよ、ともお空に向かって付け加えて。

あれから半年経ちますが相変わらず、オムツ、住宅のCMを見たり、職場では、出産、育児、孫自慢なんてとても聞けない日々が続いていますが、不妊治療をやめた時より徐々に心の壁が薄く、あるいは低くなっていくのを感じています。


自分でも常に高みをめざしていきたいと思っているので、こんなところでは終われません。辛かった不妊治療がいつかいい思い出になるように、楽しい事いっぱい、嬉しいこともいっぱい、幸せは無限大に、感じられる日々を待っています。

そう遠くない日かもしれません。


#忘れられない旅

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