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雪の日、信号待ちしてる時、傘に入れてくれた聖母みたいな人へ

「信号待ってる間だけでもどうぞ」
雪の日、傘に入れてくれたあの女性を一生忘れないと思う。

社会人2年目のある夜、
会社を出たらぱらぱらと雪が降っていた。
朝、家を出る時は雪の予報ではなかったから、
傘をさしている人はまばら。
珍しい雪にワクワクしつつも、
顔にかかる雪はやっぱり冷たくて寒かった。

会社を出てすぐのところにある信号は、青になるまで長い。
早く早く、と思いながら信号待ちをしてた時、
「信号待ってる間だけでもどうぞ」と、
40代くらいの、会社帰りであろうメガネをかけた女性が声をかけてくれた。

聖母かと思った。
お言葉に甘えて入れさせてもらった。

「ありがとうございます」
お礼は言ったが、まだ私も若かったし、
気の利く会話などはできず、お互い無言で青になるのを待った。

今思うともうちょっと、信号待ちの間、たわいもない会話をすれば良かった。


ほんの数分の出来事だったけど、私は一生忘れない。

あの時の私は社会人2年目で、
仕事も一人前には程遠く、いろんなところに気を遣い、心身ともに疲れていた。
その時受けたあの優しさは、涙は出なかったけど涙が出て出るほど嬉しかった。

人に優しくしてあげたいと思う気持ちと、それができる心の余裕さ、私も持ち合わせていたいと思った。

「隣人を自分のように愛しなさい。」
私はキリスト教信者ではないが、
聖書に書いてあるこの言葉が好きだ。

見ず知らずの他人に優しくするのは
変に思われないか、逆に気分を害されないか、
不安で勇気がいる時があるけど、
私もあの女性のような優しさを、
勇気を出さずとも、自然に出来る人になりたいと、今でもたまに思い出す。

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