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経過報告

この記事を読まれている方は、多分、何度か経験されていると思います。
「続きが無いんだけど、どうなったのかな?」
私も、妻も、同じような悪性リンパ腫の闘病ブログを読んでいて、同じ事を想ったことが何度かあります。

続きが途切れてしまうのは、自分たちの経験で以下の事が原因だと分かりました。

1. 書くのが辛い

まぁ、闘病の話というのは、書いていて、気乗りがしないです。

2. 忙しい

家族の一人が闘病生活に入ると、残りの家族で分担して家事などをしなくてはいけないです。
これが大変で忙しい。

3. 良くない結果になった

寛解の目途が立つと、希望に満ち溢れる話で、報告しやすいですけど、悪い結果だと、まぁ、書き辛い。

A+AVD療法で半分しか効かなかった

妻が受けた療法は、A+AVD療法です。
80%以上寛解と言われていたので、結構、楽観視してました。
でも、PET検査の結果、半分しか消えてなかった。

担当の医師は、「これで効かないというのは…」とショックみたいでした。
病名に「難治性」という接頭詞が付いちゃった。
現在の病名は、難治性古典的ホジキンリンパ腫。

悲しむのは後、まずは問題解決に取り組む

私は、ITのエンジニアなので、問題解決が仕事です。
世の中では、誤解されていますが、エンジニアって、プログラムを書く人じゃないですよ。
エンジニアは問題解決する人です。

これは、IEA(International Engineering Alliance: 国際エンジニアリング連盟)が明確に定義してあって、国際協定も結ばれていて、日本も署名しているんで、これが世界の定義です。
日本では、文科省が管轄している、「技術士」がエンジニアの国家資格です。

ちゃんと教育制度にも取り込まれていて、日本では、日本技術者教育認定機構(JABEE)が、IEAの分野別の協定に則って、大学の技術系の学科の教育カリキュラムや、高専の教育カリキュラムの認定を行っています。

JABEE認定を取得しているカリキュラムで大学を卒業すると、技術士の一次試験が免除になります。
これ、結構大きいのです。
あと、国によって優遇措置は異なるのですが、アメリカでは、日本のJABEE認定のカリキュラムで取得した単位をそのまま加算してもらえるとか、オーストラリアだと就労ビザが不要になるとか、色々あります。

日本の大学の技術系の学科の先生方は、推進派と反対派に真っ二つに分かれるみたいですが、世界では、スタンフォード大学やMITも認定を取ってますし、中国の清華大学も認定を取ってますし、シンガポール国立大学も取ってます。
年々、認定を取っている数は増えていて、政府が高専の制度を東南アジア諸国に輸出して指導していることもあり、更に増えるでしょう。
高専は、国の政策で、JABEE認定は必須です。

JABEE認定って、世界的な技術者教育の質保証制度と思って貰えれば分かりやすいです。

是非、高校生には大学選びの基準の一つにして欲しいし、企業の採用担当の人には、JABEE認定で卒業した子はかなり優秀だって知って欲しいです。

経産省が管轄している「基本情報技術者」「応用情報技術者」などは、IEAの定義するところでは、「テクニシャン」、「テクノロジスト」という名称に該当します。

こういう仕事の話だと、すらすら書けるんですけどねぇ…

エンジニアには、製造業のエンジニアもいれば、プラント建設のエンジニアもいれば、土木工事のエンジニアもいます。
いずれも、専門分野は違っても、問題解決するのがお仕事。

だから、私が気落ちしてる場合じゃないということで、妻が気落ちするのはしょうがないとしても、私は推進役にならないといけない。

救援化学療法

ITのプロジェクトで失敗するケースって、途中で定期的に検査とかチェックしてない事が理由として挙げられます。
今回の治療も、6か月の投薬で、途中の検査が無かった。
これは、失敗するケースですよね。

エンジニアもピンキリなのと同様に、医師もピンキリ。
それって、頭では分かっちゃいるけど、でも、心底分かってなかったりします。
こういう時に、骨身にこたえるほどにショックを受けて、理解する。

PET検査は、制度上、回数制限とか期間の制限とかあるらしいので、頻繁にできるわけじゃない。
そういうのは、先に言ってよ、先生…
何でも「自分が源泉」と考えて、自分に原因があると考えれば、物の視方が変わります。

「自分が途中の効果状況確認をしなかったのが悪い」
そう考える事にしました。

私は、Webサイトなどを中心としてITシステムのパフォーマンスチューニングが専門で仕事をしています。
パフォーマンスチューニングでは、行った施策毎に、Before/Afterの検証を必ず前後一週間分の計測データで検証します。
「ITシステムのお医者さんですね」ってお客様に言われることがありますが、同じことを妻の治療でやってなかった、依頼しなかった私が悪い。

「8割方効く療法が、どうして、半分しか効かず、特に腹部のリンパ腫については効果が認められなかったのか」という点が問題だと、医師と話し合いました。
ITシステムの場合は、そこって詳細に調査するのですが、人体の場合はそうもいかないというのは理解できます。

そこで、こちらから外科手術で、その腹部のリンパ節にある粒状の腫瘍細胞を採取して検査することを提案しました。
システムのボトルネックを分析しないと、高速化できないのと同じで、そのリンパ腫、どうなってるの?どういう癌なの?って調べないと分からない。
でも、外科手術の手配に4週間掛かると言われて、そこは断念せざるを得ませんでした。
まぁ、お腹を切るので、負担も大きいし。

そこで、まずは、違う療法、「救援化学療法」をやって、それで、エコーを使って検査をしましょう、という話になりました。
「おい、それ、なんで最初の治療でしなかったんだよ!」って話ですよね。
さすがに、ムッとしました。かなりむかつきました。この無能め!と思いました。
まぁ、IT業界でも、そこそこいます。そういう人。手を抜きやがって。

エコー検査の結果を見て、効果が無ければ、外科手術で細胞を採取して検査という事で、次の一手が決まりました。

まぁ、業者にまかせっきりで、プロジェクトマネジメントしなかった発注者側のミスってことですよ。えぇ。そう考えるって決めましたし。

あと、病院を変えるのが、これまた大変。
千葉って、埼玉と同様に、人口あたりの病院や医師の数が足りていない地域なのだそうです。
通いやすさを考えると、都内の病院より、今の病院が良いと妻に言われました。コロナ禍で、千葉から都内に移動となると、コロナ感染のリスクが足されるので、それは避けたい。
医師から、効果が出なかった場合は、都内の血液内科の優れた先生のいるところを紹介してもらえるという話になったので、一旦は継続という判断をしました。

2.3cmが1cmになった

救援化学療法の治療が5月からスタートしました。
3週間入院して、1回目の投薬し、エコー検査で、腹部の粒状の腫瘍の一番大きい2.3㎝のものが1cmになったを確認できたという報告が。

しかし、白血球の数と血小板の数が予想通り少なく、輸血が必要なレベルになってしまったので、2回目の投薬は中止となってしまいました。
スケジュールとしては、1日目と8日目に投薬なのですが、8日目は無しにしましょう、という事に。

救援化学療法で効果があったので、自家造血幹細胞移植(大量の抗がん剤を投与したあと、骨髄機能を回復させるために保存しておいた患者さん自身の造血幹細胞を移植する)をやりましょう、という提案が医師からありました。

現在、妻は、この治療のために6月8日から入院しています。

Trust, but Verify

今回の件は、病気や健康についての考え方、医師との接し方を考え直すきっかけとなりました。
「分からないから、お任せ」ではダメだという事です。
それは、ITシステムも同じなんですけどね。

病気も、問題の一種と考えて、問題解決に向けて能動的に動く。
治療はプロジェクトマネジメント。
医師や病院は、業者と思え。

「じゃぁ、何ができるっていうんだよ」って思う方もいるでしょう。
この間読んだ本で、凄い深い一文を見つけました。

私の知る限り、ウマにプラセボ効果は起きない。
デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント著
「LIFESPAN―老いなき世界」東洋経済新報社

これ、凄くないですか。
プラセボ効果は知っている人は多いと思います。
プラセボ効果って、人間で観察されるものです。
動物では出ない。

だから、「病気の治療は医師にお任せ」ではなく、積極的に問題解決に取り組めば、医療行為の効果を高めてくれるという事です。
人の心の力、意思の力は、プラセボ効果を生み出すほどに強い。

そう考えると、妻と私は、反省すべき点はいくつもありました。
例えば、早寝早起きをするとか。
仕事が忙しくて、通いで抗がん剤治療をしていた時期は、いつも通りに、夜中の2時ぐらいまで仕事をしてたこともあります。

運動は免疫効果を上げる事も有名ですが、全く運動をしていなかった。

腸内環境を整えると、悪玉菌が発生させる有害ガスが減って、ガンの発生を抑える効果があるというのを、「はたらく細胞」を見て知って、ヤクルトとミルミルを飲み始めました。
(病気じゃなくても、毎日、1000個ぐらいガン細胞が生まれているというのも知らなかった)

「Trust, but Verify」という言葉があります。
Wikipeidaでは、以下のように書かれています。

1984年から1987年にかけて、ロナルド・レーガン大統領と何度も面会したアメリカ人学者のスザンヌ・マッシーは、レーガン大統領にロシアのことわざ「Doveryai, no proveryai」(ロシア語:Доверяй, но проверяй:信じて、でも確かめて)を教え、「ロシア人はことわざで話すのが好きなのよ。ロシア人はことわざで話すのが好きだから、いくつか知っておくといいわよ。あなたは役者だから、すぐに覚えられるでしょ」とアドバイスした。1987年12月8日のINF条約調印式で、レーガンが「双方が条約の遵守を監視できる広範な検証手続き」を強調するためにこの言葉を使ったところ、相手のゴルバチョフ書記長が「あなたは会議のたびにそれを繰り返す」と答えた。これに対してレーガンは「気に入っている」と答えた。レーガンがロシアのことわざを引用したのに対し、ゴルバチョフはゴルバチョフが大学時代にソ連で人気を博したラルフ・ウォルドー・エマーソンの「よくやったことの報酬は、それをやったことである」という言葉を引用した。2013年のグータ襲撃事件の後、ジョン・ケリー国務長官はジュネーブでの記者会見で、米国とロシアがシリアの化学兵器を廃棄する枠組みに合意したと述べた。ケリー長官は、「レーガン大統領が唱えた『信頼はするが検証はする』という古い格言は、今こそ更新が必要だ。私たちはここで、『検証と確認』という基準にコミットしたのです」と発言した。

誰か専門家にまかせっきりにするのではなく、信頼しつつも検証する。
これは、どんな仕事でも大事な事で、医療についても同じだという事です。
セカンドオピニオンも、その点において意義がある。

仕事では分かっていても、いざ、自分の専門分野ではない事になると、そういう事を考えられなくなってしまう事があると思います。
でも、本質的には、どんな事も問題解決。
そう考えれば、医療との接し方や考え方も、改善の余地が色々ありそうです。

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