影響力の武器【ロバート・B・チャルディーニ】のまとめ
はじめに
人は
・自らで合理的に考え
・多角的な視野で判断し
・常に理性的でありたい
と、数多くの人が思っていますが、
人は様々な条件が重なると
ビデオテープのスイッチをカチッと押すと中に入ってるテープがサーと自動で回っていくように、しっかりとした思考をすることなく行動をとってしまします。
影響力の武器では
そのようにしっかりとした思考をすることなく特定の行動をしてしまう状況を
返報性・一貫性とコミットメント・社会的証明・好意・権威・希少性
という6つの条件について様々な論文とともに紹介しています。
では行きましょう。
返報性
「返報性の原理」という言葉そのものを知っている人はかなり多くいると思いますが、おそらくほとんどの方が思ってる返報性の原理は、、、
相手のやってくれたことは、お返ししたくなってしまう。
というものだと思います。
確かに間違ってはいませんが、これだけでは不十分です。
この本に従うならば返報性の原理とは
相手のやってくれたことは、お返ししたくなってしまう。そして、その相手のやってくれたことは余計なお世話だったとしても構わない
というものです。注目するべき点は
・やってくれたことは余計なお世話だったとしても構わない
という点です
米国退役軍人障害者協会の寄付に関する報告によれば
・普通郵便で寄付のお願いをした場合
→ 返答率18%
・頼まれてもいないちょっとしたグッズ(オリジナルのシール)を同封して郵送した場合
→ 返答率35%
なんと、頼まれてもいないシールを同封するだけで約2倍もの返答率を得られることができたのです。
この結果から示されることは、
自分から頼んだどうかとは関係無く恩義の感情が生まれてしまう
ということです。
ここで、この返報性の原理をとてもうまく利用したクリシュナ協会の募金活動の例を紹介します
クリシュナ協会は普段空港などの通行人が多い公共の場所で寄付金を募っていましたが、思うように寄付が集まらず困っていました。
そこで、クリシュナ協会は標的とする相手に寄付を求める前に「これは私たちからのプレゼントですから」と言いながら本や花を無理やり渡します。
その上でクリシュナの信奉者たちは協会への寄付を求めるのです。
これの戦略によりクリシュナ協会は莫大な経済利益を獲得しその資金を元手にアメリカ国内外に321箇所もの協会支部をもつまでになりました。
一貫性とコミットメント
一貫性の原理:
一度ある立場を表明してしまうと、その立場を貫こうとすること
これも言われてみれば当たり前のことですが、この一貫性の原理がどれほど強い影響力を持つのかがよくわかる研究を消費行動の研究者ダニエル・ハワードが行なっています。
彼はテキサス州ダラスの住民に電話をかけ、2つの聞き方で飢餓救援協会のクッキーの購入を求めました。
1、「飢餓救援協会のものがお宅までクッキーを売りに行っても構わないか?」とだけ尋ねるグループ
2、「お元気にお過ごしですか?」と聞き
好意的な反応(「上々です」「まあまあです」など)を聞いてから
「飢餓救援協会のものがお宅までクッキーを売りに行っても構わないか?」と尋ねたグループ
1、2の違いは最初に相手に「お元気ですか?」と聞き、相手の返事を待ってから「クッキーを売りに行ってもいいか?」と言っている所のみです。
たった、これだけのことでクッキーの販売を許可をする人の割合は18%→35%にまで上昇しました。
たとえそれが挨拶の決まり文句であっても、「うまくやってる」と答えた人は恵まれた環境にあると自分で認めたために、ケチな人間だと思われたくない。というのがこの作戦の背景にはあるのです。
社会的証明
社会的証明:
特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断する
大抵の場合、多くの人が行なっている行動に沿った行動をした方が、それと反対の行動をとるよりも、間違いを犯すことは少なくなります。
この原理のおかげで、私たちは行動の仕方を手っ取り早く決められるのですが、同時に、この方法を悪用して利益を得ようとする人にひっかかりやすくもなっています。
例えば、ある製品を紹介する時に、ある商品を進められている時に
「この商品はこんなにもたくさん売れています!」や
「あの有名人の〇〇さんも使ってます!」
というように、製品そのもの良さではなく、他の周りの人がどれだけ他の人に必要とされているのか?ということをセールストークとして語ってくることがよくあります。
ですが、よく考えると他の人がどれだけ使っていたとしても、逆にどれだけ使われてなかったとしてもその製品の良さは変わらないはずですが、人はそれらの情報におおいに流されてしまうのです。
しかしこれらの現象は時にとてつもないデメリットを引き出すこともあります。
自分の不確かさを解消するために、他人の反応を調べる時、私たちは、そうした他者も、おそらく同じように周囲の人の反応を吟味しているという点を忘れてしまう。
このような状況を
集合的無知
と言います
この現象をよく表したアメリカニューヨーク州クイーンズ区の事件から見ていきます。
ある日、20代後半の女性が深夜、仕事から帰宅する途中、自宅近くの路上で暴漢に襲われ、殺害されました。しかし、その事件は誰も見ていない路地裏で行われた事件ではなく35分間の間大勢の人の目の前で3回に渡って襲われた事件でした。
しかも信じられないことに38人の隣人たちは。アパートの窓際という安全なところから見ているだけで警察に電話をかけることすらしなかったのです。
とても衝撃的な事件ですが、果たしてアパートの窓際という安全なところからこの事件を見て助けることをしなかった38人の隣人たちは皆冷酷で利己的な「非人間的な人」たちだったのでしょうか?
心理学教授のビブ・ラタネとジョン・ダーリーによれば、
今回のこの事件は
38人という多くの観察者がいたのに、誰も助けなかったのではなく、
38人という多くの観察者がいたので、誰も助けなかったのです。
と述べています。
助けられそうな人が他に何人かいれば、
「他の誰かが助けるだろう。もう誰かがそうしてるかもしれないな」
と、皆が考え結果的に誰も助けないという集合的無知の効果が出てしまったのではないかと考えられています。
好意
外見的な魅力のある人の方が、他者との付き合いで有利になるのは一般的によく知られていることですが、最近の研究によれば外見による魅力は私たちの考える範囲よりはるかに大きな影響力を持っているそうです。
例えば、1974年のカナダ連邦選挙を扱った研究によると、外見が魅力的な候補者はそうでない候補者の2.5倍もの票を獲得しました。
この結果だけを見ると、当たり前のような結果に見えますが、この研究の最も驚くべきことは、
有権者が外見によるバイアスに気づいてないということです。
実際有権者の73%もの人は投票するにあたって候補者の身体的魅力の影響など一切なかったと断言しています。
表面的には外見的魅力は大きな問題ではないとしていても外見的魅力に影響される事象は数多く確認されています。
権威
専門家の言うことを正直に聞くことは多くの人にとって有益であるということは紛れもない事実ですが、権威の力もまた私たちの考えている以上に大きな影響力を持っているのです。
心理学の有名な実験でミルグラム実験という実験があります。
この実験は2人の参加者が「教師」「生徒」の2つの部屋に分けられお互いの音声のみが聞こえる状況に置かれ、「教師」側は「生徒」側に単語リストを読み上げ間違えた場合には15~450ボルトの電気ショックを与えて行くものです。
実はこの実験は「生徒」側は実験者側のサクラであり、実際は電気ショックを受けることはなかったのですが、受けた電気ショックによってサクラである「生徒」側は電圧の大きさによって以下のような演技をすることとなっていました。
・75ボルトになると、不快感をつぶやく。
・120ボルトになると、大声で苦痛を訴える
・135ボルトになると、うめき声をあげる
・150ボルトになると、絶叫する。
・180ボルトになると、「痛くてたまらない」と叫ぶ。
・270ボルトになると、苦悶の金切声を上げる。
・300ボルトになると、壁を叩いて実験中止を求める。
・315ボルトになると、壁を叩いて実験を降りると叫ぶ。
・330ボルトになると、無反応になる。
被験者が実験の続行を拒否しようとする意思を示した場合、白衣を着た権威のある博士らしき男が感情を全く乱さない超然とした態度で次のように通告するようにしました
1、続行してください。
2、この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません。
3、あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。
4、迷うことはありません、あなたは続けるべきです
4度目の通告がなされた後も、依然として被験者が実験の中止を希望した場合、その時点で実験は中止されました。
この実験では当初最大電圧を「生徒」側にかけるものは1.2%ほどだという仮説があったのですが実際の実験結果ではなんと65%もの人が最大電圧の450ボルトまで実験を継続し他のです
この実験から分かるように、以下に我々が権威の力に対して絶対的な服従をしているかがよく分かる実験です
稀少性
・100食限定!
・特売タイムセール中!
・世界に10個しかない!
といった、商品の希少性に高いものを欲してしまうのは非常にわかりやすい例ですが、これらの希少性の問題もさることながら特定の事柄に関して禁止するということも、逆にその対象のものを欲してしまうという現象があるのです。
パデュー大学の実験によると、学生たちに2種類の小説の広告を見せました。
1、「成人向け。20歳以上購入禁止」という文を含む広告コピー
2、年齢制限の入ってないコピー
を読ませました。
その後その本に対してどのような気持ちを持っているかと学生に質問してみると、その本に年齢制限があると知ったものは、制限がないと考えていたものよりも。、その本を読みたいと思い、また、その本が面白そうだとも感じていたそうです。
この実験結果から示すように希少性の効力は禁止されているものに対しても働いてしまうということです
まとめ
返報性・一貫性とコミットメント・社会的証明・好意・権威・希少性
という紹介した6つの原則はそれぞれがとても強くセールスマンの方などがよく使う手法の一つです。
まずはこれらの原則を知り悪意を持ってこれらの原則を使う人に対して防衛を行うことができるようにしたいところです。
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