基本にして奥義!?武道空手の短打法!其之壱─「短打法」は奥義なのか?

私の記事を読むのが初めての方は、先に下の記事を読んでください。

 こちらの記事は、『月刊空手道』の2015年7月号に掲載されたものです。相手に拳を密着させた状態から威力ある打撃を叩き込む。中国拳法で、寸勁とか短勁と呼ばれる技術が秘伝でも奥義でもなく、基本技術であることを解説したものです。具体的な鍛錬法については次回に回しているのでご注意ください。

『月刊空手道』2015年7月号 表紙

以下は当時、編集者に付けていただいたキャッチコピーの引用です。

柳川理論、再起動!
拳が相手に触れるか触れないか、そんなゼロ距離から放たれる突きで、大男がいとも簡単に吹っ飛んでしまう。かつてブルースリーが大衆を前に披露したワンインチパンチは、中国武術において寸勁、短勁とも呼ばれる。しかし、これらは、なにも中国だけに伝承される技法ではない。柳川昌弘氏は、20年以上も前に”短打法”を武道空手の基本技として断じている。基本にして奥義ともいえる、この短打法について、愛弟子・宮路健文氏が解説する。
 もし宜しければご購入のほど、よろしくお願いいたします。

『月刊空手道』2015年7月号 P30

 もし宜しければご購入のほど、よろしくお願いいたします。

寸勁は奥義なのか?

 拳を相手に密着させた、あるいは数センチ離した状態からの威力ある打撃。中国拳法では寸勁とか短勁と呼ばれ、パンチに威力をもたせるためには対象との間に一定の距離が必要である、という常識を覆す技術として知られています。

 具体的な習得方法に謎が多く、実際に可能な人間も少ないこともあり、数十年にわたる長い修行の末にようやくできるようになるという指導者もいるなど、寸勁・短勁を取り巻く状況が、この技の神秘化に一役買っているようです。或いは、格闘漫画やアクション映画などで必殺技や秘技、奥義のように取り扱われることも、そのような傾向に拍車をかけているといえるでしょう。

 では、寸勁・短勁のような極近距離打法は、本当に秘技・奥義なのでしょうか───。

 答えは否です。はっきりさせておかなければならないのは、このような打撃法は決して秘技・奥義といった特別なものではないのです。柳川昌弘先生は少なくとも20年以上前に、その著書『続・空手の理』(福昌堂)の中で以下のように述べられています。

短打法はむしろ空手(日本武道)の基本的打撃法であり、決してインファイト上の技術として用いられるような狭い技法ではない。アウトファイトや防御法として広く用いられる空手の基本技である。<中略>短打法を知らずして空手の技を覚えてもほとんど意味がない。武道空手が忘れられた主な原因はこの点にあるといってもよいほど武道の常識的打撃法なのである。

『続・空手の理』(福昌堂)P113ーP114

 「短打法」とは、空手の中に寸勁・短勁に相当する言葉が当時見当たらなかったために、柳川先生によって便宜上名づけられたものです。本稿では以後、寸勁・短勁のような極近距離打法を「短打法」と統一して使用します。

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