真の「居着かぬ足捌き」とは何か?

私の記事を読むのが初めての方は、先に下の記事を読んでください。

 こちらの記事は、『月刊空手道』の2014年9月号に掲載されたものです。柳川先生が提唱している理の1つ、「居着かぬ足捌き」の必要十分な条件について自分の中で整理が進んだため、記事を書いたところ、運よく掲載していただける運びとなりました。

『月刊空手道』2014年9月号 表紙

 以下は当時、編集者に付けていただいたキャッチコピーの引用です。

師・柳川昌弘の提唱から20年、愛弟子が明かす真実!
今から20年余り前、フットワーク全盛の時代、柳川昌弘氏が提唱した「地面を蹴らずに膝を抜き、重心移動で体を運ぶ」という「居着かぬ足捌き」は、一大センセーショナルを巻き起こした。そして、現在、「地面を蹴らない」「膝を抜く」「居着かない」という言葉自体は空手界に浸透しているように思える。だが、その真意が根付いたとは、言い難い現状がある。柳川理論を継承する愛弟子、宮路健文氏が真の「居着かぬ足捌き」について解説する。

『月刊空手道』2014年9月号 P78

 もし宜しければご購入のほど、よろしくお願いいたします。

フットワーク全盛から20年

 柳川昌弘先生が『空手の理』(福昌堂)をはじめとする一連の著作で「居着かぬ足捌き」を世に問うて20年余りが経ちました。

 つま先立ちで踵を浮かせ、ピョンピョンと小刻みにジャンプし、踏み込む際には後ろ足のつま先で強く地面を蹴り出すことで体を運ぶ、所謂「フットワーク」全盛の当時、先生の地面を蹴らずに膝を抜き、重心移動で体を運ぶ「居着かぬ足捌き」は、一際異彩を放っていました。

 現在の空手界をみまわすと、足捌きの状況は、当時より幾分変わってきており、移動の初動において膝を抜くことの重要性を説く声も少なからず耳にするようになりました。

 動きの初動で膝の抜きを使うことのメリットとしては、いきなり地面を蹴る運足に比べて初動の動きが小さいため、動き出しを相手に気づかれにくいとか、膝を抜くことで重心を前方に送り、地面を蹴る後ろ足にかかる負担、労力を軽減し、より遠くまでより速く移動することができるとか、こんなようなことがよく挙げられていると思います。

 しかし、それらのメリットも、所謂「フットワーク」に対して絶対的優位に立てる要素となり得るかというと、残念ながらそうではないというのが、皆さんの実感ではないでしょうか。

 初動を読まれにくい、一定の距離をより速くより遠くまで移動できるといっても、それはコンマ何秒程度の差であり、実際に10回競って10回とも勝てるというほど確実性のあるメリットではないのです。

 そのため、競技空手における運足の主流は、相変わらず従来の「フットワーク」のままというのが現状なのは、皆さんご存知のとおりです。

 それでは、初動において膝の抜きを用いる柳川先生の提唱される「居着かぬ足捌き」もまた「フットワーク」にとって代われるものではないのでしょうか───。

 答えは否です。本稿では、真の「居着かぬ足捌き」とはどういうものかを解説し、その「フットワーク」に対する優位性、有効性を明らかにしたいと思います。

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