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【TAKEFUのはてな?】インナーキャップ

2022年発売の、TAKEFUのインナーキャップ。
癒布やヤクのキャップとは違い、かなり薄く頭の形にフィットする素材で作られていて、その名の通り“インナー”として使っていただく帽子です。
あまり馴染みのないもので、どう使えばいいかわからないという方もいらっしゃるかもしれません。
今回は相田社長にこの製品を作った目的や、様々な使い方、製作上のこだわりを伺いました。
このインタビューによって、必要な方にひとりでも多く届くことを願います。




インナーキャップの使い方



―まず、インナーキャップの使い方をお聞きしたいです。―

「一番の目的は、病と闘う方に使っていただきたいということですね。ガンになった方が放射線や抗がん剤による治療をする中で、副作用で髪の毛が抜けることがありますよね。そんな時に被る帽子を…ということで、まずは癒布のワッチキャップを作りました。ただ、帽子ではなく、カツラやウィッグを被っている方も多いですよね。カツラって、ものすごく中が蒸れて痒くなったり臭くなったり…そういう状況を我慢しながらも人の目を気にして被っている、というお話を、闘病中の方から聞いたんですよ。大変な状況な上に更にそんな不快感があるっていうのはとても辛いですが、それでも綺麗にしたいっていう思いがあるならその思いも大切だし、やっぱりカツラも必要だなと思うんですよ。それならば、少しでも快適に被れるようにお手伝いがしたい。癒布ワッチキャップは凄く気持ちいいけど、ちょっと厚いんですよね。厚いワッチキャップの上にカツラを被るとぼこっと浮いてしまう。だから薄手で頭の形にフィットするインナーのようなキャップを付けて、その上にカツラを被れば大丈夫かな?と、その観点から製作しました。一番の目的はこれですね。そこから派生して、色々な使い方はあるのですが…。」

 
―以前『わたしとTAKEFU』のインタビューで通販会社に勤めるHさんに取材した際、「ガンを患ったお子様からカツラを被るときに蒸れるというお話を聞いて、相田社長に紹介したことがあったので、今回完成して嬉しい」というお話がありました。―


「そういうご意見や、色々なものを見て聞いて、ああやっぱり作らなきゃな…という思いが私の中でどんどん蓄積していったんでしょうね。技術面なども鑑みてこのタイミングで形にできたんだと思います。」


 

ブラックのインナーキャップ



―長年の構想があったものが実現したんですね。そういった紹介によって、当事者の方々からの声が届くのでしょうか?―


「紹介や、お話会の時にも聞くし、お客様からのお問い合わせや、いろんなところで伺いますね。そんな中で、『大きな治療をする前に、カツラやウィッグを作ってから治療に入る』というお話を聞いたんですよね。これが個人的にとっても辛い感じがして…。なんで自分が一番辛い時に人の目を気にしなきゃいけないんだろう?って。そんなことを考えずに快適な帽子を被って過ごしてほしいと、つい願ってしまうこともありました。ワッチキャップだったら被っていてずっと気持ちいいし、汗かいても吸ってくれるし、臭いもしないし、できる限り心地よい状態を保てるから、免疫力が落ちている時にも適するだろうなと。でも、カツラを被りたいという思いもやはりありますよね。それならばせめて不快感はなくしてほしいと思い、製作に至りました。」
 


―大変な時だからこそ、精神的にも体感的にも少しでも楽に過ごせればと願わずにはいられません。もし体に合えば日々のストレスのひとつが軽減されますし、それはとても大きなことのように思います。では製品について、こだわりを教えて下さい。―

「まずTAKEFU®100%で、“無縫製”という作り方をしています。その名の通り、縫製の継ぎ目がないので肌への負担が可能な限りないようになっているわけですね。TAKEFUのガーゼ手袋や筒状ガーゼ、無縫製インナーなど、主にガーゼ製品を作っている自社の編み機がありまして、その編み機で作っています。」

―自社の編み機は、無縫製の製品を作るために購入したんですよね?―


「そう、結局無縫製製品を作れる編み機がそれしかなかったので、買うしかなかったんですよね。まぁ買わずに無縫製を諦める選択肢もあったかもしれないけど、その機械を使えば作れるっていうことを知った以上、自分の性格的に諦めるっていう選択肢はなくなったんです。」


 

無縫製へのこだわり


―なぜそれほど無縫製にこだわったのでしょうか?編み機を購入した経緯を教えて下さい。―


「まず、無縫製の製品が必要だと思った時の話をします。ある日の午後、空き空きの電車に乗っていた時、10歳ぐらいの男の子とお母さんが目の前にいてね。その男の子がすごいアトピーで、体を掻いてるんですよ。お母さんは最初優しく『掻いちゃダメよ』って言ってたんだけど、その男の子が痒さを我慢できずにガーっと掻き始めた。そしたらお母さんが手を押さえて『掻いちゃダメって言ってるじゃない!』と、怒鳴ったわけ。顔を見たらね、男の子もお母さんももう泣いてるんですよ。それをじっと見てる時に、『掻いていいよ』って言ってあげられる包帯を作りたいなと思いました。縫い目の継ぎ目がなければ、掻いたときに肌を痛めつけることもないんじゃないかな?と。その時から2、3年、中国と日本の工場でイメージするものを作れる工場を探しました。試作もたくさんしてもらったけど、全部ダメで。最後の最後に、とある機械のメーカーと出会いました。イメージを絵に描いて、その機械で試作してもらったところ、なんと、イメージ通りのものができちゃったんです。今販売している筒状ガーゼやガーゼ手袋のようなものが、出来上がったんですよね。そうなると、もう私の中には買うっていう選択肢以外ないわけ。だってこの機械があったら、あの男の子に使ってもらえるかもしれないでしょ?まずは3台購入しました。 」 



―他の製品は工場と協力して作っているものが多いと思うのですが、その機械を置いている工場がないから、購入という形になったのでしょうか?―


「置いている工場自体はあるんだけれども、その中で包帯や手袋のような安いものを扱ってくれる工場があるかというと難しくて、自分たちでやらなきゃと思いましたね。この無縫製の機械を持ってる工場は大体がアパレル系の、高級なものを作る工場だから。」 
 


―いずれ大量生産になることを見据えると、尚更自社のものが必要になりますよね。―


「そうなんです。それで買うことを決めたんだけど、そのメーカーには、『今年中に3台買うから、値段は伝えないでくれ』と言いました。普通は、見積もり出してください、できるだけ安くしてください、って言うと思うんですが。でも、3台でも結構な額で、いずれ何十台必要になるだろうっていうこともわかってるからね。そんなに高額な値段を聞いちゃうと、ちょっと辛くなるじゃない(笑)。だから値段を見ずにその瞬間、買うっていうことだけ決定にしました。 もし1億円したとしても、買ってたと思うよ。」
 


―躊躇しないためにも値段を聞かないという方法を取ったんですね。その結果、無縫製の製品は敏感な状態の方にこそ重要なものになり、「本当にあってよかった」というお声をいただくことが多いですね。―


「これしかないっていう方がいるんだよね。今回のインナーキャップも一番は病と闘う人に届けるのが目的なので、体に負担のない無縫製にしました。また、カツラの中でずれないようピタッとフィットさせるためにゴムが入っていますが、肌に触れないような入れ方をしていて、更に締め付けは無いように気をつけています。」



 
―体になるべく負担がかからないことが第一に作られているんですね。よく見ると“TAKEFU”というロゴが浮かび上がるデザインになっていますね。―

「これはね、特に意味はないのですが、なんか入れたかったの(笑)。タグなどを入れてしまうのではなく、生地自体に浮かび上がるようになっています。」
 


―カツラやウィッグのインナー以外での使い方としては、何がありますでしょうか?―

「私自身の使い方で言うと、よく雪山に行ってスキーをするんですが、あのヘルメットの下はマストなんですよ。汗かいて頭痒くなるし、気持ち悪いんですよ。ヘルメットの上からだと掻けないしね。インナーキャップを付けていると快適です。それで言うと、ヘルメットを被ってやるお仕事をしている人たちがたくさんいますね。そういう人たちにも合うんじゃないかな?夏とか、蒸れて汗かいて痒くなったりすると思いますよ…。汗を吸い取ってくれるからその分涼しくなるでしょうし。あとはバイクや自転車に乗っている方々。自転車でヘルメットを被っている方は最近あまり見かけないけど、転倒するかもしれないと考えると本当は被った方が安心だし、ヘルメットに不快感があるのならインナーキャップをつけてみてほしいですね。そしてもちろん、普通の帽子のインナーとしても。汗取りになって快適だし、帽子の汚れも防げて良いと思います。」
 



―夏は帽子に汗が染みて、かといって型崩れしてしまうから頻繁に洗えないし、気になるんですよね。大切な帽子を使う時ほどインナーを付けたいですし、一度習慣づけばなくてはならないものになりそうです。―


「あとは最近あまり見ないけど、学生帽の中って物凄く臭いんだよ。とてつもなく臭い。嗅いだことないと思うけど、あれは鼻が曲がるからね。そんな学生帽がもしあれば、付けた方が良いと思います。剣道をやっている方は正に必要でしょうし、カツラを被る役者さんだって助かるんじゃないかな?それこそ汗だくになるのに掻くことができないし、長い公演になるなら余計、蒸れや汚れ、臭いを防げて良いと思いますよ。」
 




 
今回はインナーキャップについて、相田社長にインタビューしました。
この製品は、「誰に届けたいか?」がとても明確です。
使い方はある程度限られるかもしれませんが、その分求めている方の目的にはよりフィットする、限定的だからこそ深い思考の上に成り立った製品だと感じました。
不快感で苦しむ方の日々が、この製品によって少しだけ変化するかもしれません。
このインタビューを読んだお客様にも、この商品が必要な方を見つけたらお伝えいただき、ひとりでも多く必要な方に届くお手伝いを一緒にしていただければと、不躾ながらお願い申し上げます。
また、これまで「インナーキャップ」という習慣がなかった方にも是非使ってみていただきたいです。
 



インタビュアー・みー
1992年生まれ。ナファ生活研究所直営店 Shop of TAKEFU "eau" 勤務。趣味は宝塚観劇、旅行、食事、ラジオなど。 寒がりなので、冬はソフトフィットインナーに癒布を重ねて温まっています。


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