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ストロボの買い方~初歩の使い方

現在、写真撮影に使用されている照明器具は、主に、LEDライトとストロボの2種類です。LEDライトの場合は写真や動画用の製品という条件が付きますが、いずれも色の再現性に優れています。
今回は、主に自然科学系の学芸員さんや生き物愛好家など、標本や飼育中の生き物などをなるべくきれいに撮りたい人向けに、照明器具の中でもストロボの買い方~まず身に付けたい最低限の知識を紹介します。


LEDとストロボの特徴
まずは、LEDとストロボのどちらを買ったらいいのでしょう?言うまでもなく目的次第ですが、それを判断するには両者の特徴を知る必要があります。

① LEDライトの特徴
一瞬しか光らないストロボと違って光り続けるLEDライトは、どこにどんな影がでるか?どこに見苦しい反射が発生するかなどが一目瞭然。したがって、照明器具のセッティングがストロボよりも簡単です。
一方で多くのLEDライトは光量が弱く、動く被写体の撮影には適しません。動体の撮影に使用すると、よほどに大光量の製品を至近距離から照射し、さらにカメラの感度を高感度に設定しない限り、ぶれてしまいます。

② ストロボの特徴
生き物の撮影に関して言うと、ストロボの良さは、なんといっても被写体の動きを止められることです。
それからLEDと比較すると光量の割にコンパクト。用紙のサイズで表わすと、A5よりも大きな被写体をLEDライトでしっかり照らそうとすると道具がかなり大きくなりますが、ストロボならそこそこのサイズに収まります。また、光の質を調整するさまざまなアクセサリーも充実しています。
一方で、多くの人は瞬間光には慣れてないので、慣れるまでは扱いにくい光でもあります。

つまり、LEDライトは動かない被写体限定。
それに対してストロボは、動かない被写体にも動く被写体にも使用できます。また、動かない被写体の場合でも、ぶれにくいストロボなら手持ちで撮影できるのに対して、LEDの場合は、ちゃんと撮ろうと思うのなら、ぶれ対策で三脚が必須です。
上記のようにストロボの方が慣れるまでは難しいけどより万能なので、どちらか1つを持つのならストロボ。ということで、以下は、ストロボに限定して話を進めます。
ただし、2つほど、ストロボが明らかに不得手とするジャンルがあります。1つは、深度合成です。深度合成をする場合は、LEDライトをお勧めします。深度合成って何?と知りたい人は、記事の終わりの方にある「※深度合成」の箇所をご覧ください。
2つ目は動画の撮影です。動画の場合はLEDライトです。

ストロボの買い方

ストロボで一番大切なのは、光量の調整です。写真を撮ってみて写真が明るすぎる場合はストロボの光量を小さく、暗すぎる場合は大きくします。
光量の調整には幾つかの方式がありますが、現在主に使用されているのは、
TTLとマニュアル(M)の2つの方式です。
TTLは、カメラとストロボが高度な通信をして、自動的に適当な明るさに発光量を調節をします。マニュアルは、撮影者が手動で光の強弱を調節します。

生き物や自然の記録には、基本的にマニュアルが適します。光量の調節をなるくべ細かい幅でできる機種が理想です。
TTLは、機能すれば自動なので便利ですが、被写体や状況によっては機能しない場合も多く、室内で記録写真を撮る場合などじっくりと撮影できる状況では逆に不便になりがちです。使えないわけではないのですが・・・
ストロボは、機種によって、TTLしかできないもの、マニュアルしかできないもの、両方できるものなどあります。

参考までに機種名をあげてみると・・・

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上の画像は、僕が愛用しているNISSINのi40のコントロール部分です。このストロボは、TTLとマニュアル(M)の両方が可能で、左側のダイヤルで切り替えます。マニュアルの際の光量の調整は右側のダイヤルを使用します。1/1がフル発光、以下1/2発光、1/4発光・・・1/256発光と光量を9段階に変えることが可能です。
TTLが可能なストロボには、ニコン用とかキヤノン用などの区別が存在します。i40のニコン用、キヤノン用といった風に。
TTLが可能な機種でも、マニュアルで使用する場合は、例えばキヤノン用をニコンのカメラでも使用できる場合が多いのですが、絶対にトラブルがないとは言い切れないので、知識がない人は、当面は○○用は守った方がいいでしょう。

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こちらは液晶パネルを採用したGODOX Thinklite TT600です。
ダイヤル式が安心感があるのに対して、液晶パネル式は一般に多機能で、現在では多くの製品が液晶パネル式です。多機能とは、例えばダイヤル式のNISSIN・i40は光量の調整が1/1・1/2・1/4・1/8・・・ですが、液晶パネル式のGODOX Thinklite TT600はその間にも設定することが可能です。
TT600はマニュアル専用機でTTLはできませんが、その分、安価です。https://amzn.to/32vQzPl
マニュアル専用機は、一部の例外を除いて、どのメーカーのカメラでも使用でき、ニコン用とかキヤノン用といった区別がありません。
GODOXの製品は全体に値段の割に品質が良く、お勧めのメーカーです。強いて弱点をあげるなら、全体にややデカい傾向があることくらいかな。

上に紹介したNISSINやGODOX 以外に、メーカー純正のストロボも存在しますが、なかなか高価です。お金にゆとりがある場合は、安心を買う感覚で、純正を買っておくといいかもしれません。

必用なアクセサー

ストロボを発光させる際に一番大切なのは適度な光量ですが、次に大切なのはストロボの位置です。
ところがストロボをカメラに取り付けた状態では、ストロボの位置を変えることができません。ストロボをカメラから離して発光できるアクセサリーを入手しましょう。
大きく分けると2つの方法があります。1つ目はストロボとカメラをコードで接続する方法、2つ目はワイヤレスで接続する方法。
今はワイヤレスシステムが安価なので、コードが邪魔にならないワイヤレスがお勧めです。

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カメラのストロボを取り付ける位置に送信機、ストロボ側に受信機を取り付けカメラのシャッターを押すと、ストロボが発光します。
因みに僕が使用しているのは、
https://amzn.to/2YnNBe9
です。上記の製品はストロボをカメラから離して発光させる他、カメラを遠隔地からレリーズするリモコンとして使用可能で、ニコン用と記載されているのはリモコンとして使用する場合の話です。
ストロボをカメラから離して使用する用途では、ニコン以外のメーカーのカメラやストロボで使用できます。

ストロボを発光させる際のカメラ側の設定

カメラは、まずはマニュアル露出を選択してください。
絞り優先オートAやシャッタースピード優先オートSやプログラムオートPを選ばないように。
そして設定するのは二か所。
1つ目は絞り、
2つ目はシャッタースピード。
絞りは、必要な被写界深度が得られる値にセットしてください。絞りは、どの程度の被写界深度が欲しいかによって必然的に決まります。分からない人は、まずはf11とかf16にセットしておいてください。数字が大きくなるほど被写界深度が深くなります。
シャッタースピードは、使用するカメラのストロボ同調速度にセットします。自分のカメラのストロボ同調速度が分からない場合は、当面1/60秒にセットしておけばいいでしょう。
シャッタースピードは、自然光での撮影の場合は非常に重要な要素ですが、ストロボ光だけで撮影する場合は、割とどうでもいいと思っておいてほぼほぼ大丈夫です。
なぜ、どうでもいいのか?そのメカニズムを知りたい人は、記事の終わりの方の「※ストロボとシャッタースピード」をご覧ください。

実写~ストロボの光量の調整

自然界では太陽は上にある場合が多いので、人の目は真上からの光を自然と感じるようになっています。まずは三脚やアームを駆使して、ストロボを被写体の真上あたりに固定して撮影してみてください。
そしてストロボはマニュアルにセットして一枚撮影してみて、写真が暗い場合はストロボの光量を上げ、明るすぎる場合は下げます。

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↓ 明るすぎる場合はストロボの光量を下げます。

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↓ 暗すぎる場合はストロボの光量を上げます。

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↓ ちょうどいい明るさに写りました。

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次に、ストロボを被写体の真上にセットすると言っても、いろいろな高さがあります。ストロボの光量の調整を覚えたら、ストロボの高さを変えてみましょう。どう違うのかを覚えてください。例えば、ストロボを高くすると、背景までよく光が回ります。
ストロボの高さを変えると、再度光量の調整が必要になります。

レフ板とディフューザー


ストロボの光量と位置を決めたら、最後に光を微調整します。レフ板とディフューザーによる調整を試してみましょう。

① レフ板を置く
ストロボを被写体の真上から発光させた場合、被写体の側面は暗くなります。暗くなっている箇所の近くに白い物体(レフ板)を置いて光を反射させることで、暗部を明るくできます。
模型の顔の部分をレフ板で明るくしてみます。

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↓ レフ版なし

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↓ レフ板あり。

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説明のために画面右側にわざとレフ版を写し込んでみました。模型の顔の辺りが明るくなっています。お尻側も明るくしたい場合は、あと1つレフ版を加えます。

② ディフューザーを加える
ストロボと被写体の間にトレーシングペーパーや乳白色のアクリル板や布などを挟むと、ストロボの光が柔らかくなり汚い影や反射が減り、きれいに写ります。試してみてください。ただし、その分暗くなるので、ストロボの光量を再度調整する必要があります。

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上の画像で僕がディフューザーとして使用しているのは、
https://amzn.to/3ge8LBO
です。布製で軽く、折り畳み可能で使わない時に邪魔になりません。

↓ ディフューザーなし

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↓ ディフューザーあり

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ストロボと被写体の間にディフューザーを挟むと言ってもいろいろな位置があり、被写体に近づけるほど効果が強く、ストロボに近いほど効果が弱くなります。
因みに上の画像は、ディフューザーの効果を分かりやすくするために極端に被写体に近づけているのですが、光が柔らかくなり過ぎ、被写体の立体感がやや損なわれています。ディフューザーをもう少しストロボに近づけた方がいいでしょう。

ともあれ、まずはここまでを知っておけば、その先の伸びしろが大きくなります。いろいろな被写体を撮影して、上記の知識が身に付くように努力してみてください。
以下は、必要とする人だけが知っておけばいい知識です。

※深度合成

深度合成とは、ピントを少しずつずらしながら複数の画像を撮影して(フォーカスシフト撮影)、それらのピントが合っている部分だけをパソコンを使用して合成し、深くピントが合っている合成写真を作り出す技術です。
普及したのは比較的最近で特殊な技術の部類に入りますが、被写体をきちんと説明しなければならない立場の人にとっては是非とも習得したいテクニックです。
今ではそのフォーカスシフト撮影~合成作業を自動的にやってくれるカメラが存在しますが、フォーカスシフトの際には機械式のシャッターではなく電子シャッターが使用され、電子シャッターを使用すると、カメラはそのしくみ上、ストロボが使用できません。したがって、カメラ任せでフォーカスシフト撮影をする場合は、LEDライトが必要になります。
電子シャッターとは電気的にシャッターを切る仕組みで、機械式のシャッターと違って機械を動かさないのでブレないし、超高速での連写が可能です。また機械を動かさないので、膨大な量の写真を撮っても、カメラのシャッターは傷みません。
合計で20枚以下くらいの深度合成なら、フォーカスシフト撮影をカメラ任せにせず、機械式のシャッターを使用して手動でも可能なので、その場合は深度合成にストロボが使用できないこともないのですが・・・

※ストロボとシャッタースピード

 真っ暗な暗室の中でカメラのシャッターを開けても何も写りません。シャッターを開ける時間が一秒でも十秒でも同じです。
 ところその間にストロボを一瞬ピカッと光らせれば、ストロボが光った間の出来事が写ります。ストロボは光る時間がとても短いので、被写体が動いていても一般的な速度の被写体ならぶれません。ストロボが光った時間が1/5000秒なら、1/5000秒のシャッターを切ったのと同じような効果が得られます。
 これが、ストロボを使用すると動体でもぶれにくいしくみです。

 また、暗室の中でシャッターを開けてストロボを光らせた場合、シャッタースピードが一秒であっても十秒であっても、写真の明るさは同じです。自然光で撮影する場合は、シャッタースピードは写真の明るさを左右するとても重要な要素ですが、ストロボの光で撮影する場合は、写真の明るさを決めるのは絞りとストロボの光量のみで、シャッタースピードは関与しません。

 ただし、僕らがストロボを使用する場合、ほとんどすべてのケースで、そこは暗室ではありません。
 自然の光が存在するので、シャッターを長く開けておくと、ストロボの光に加えて自然の光が写り込み、ある種の二重写しになります。
 その二重写しを利用して、自然の光とストロボの光をミックスして使うテクニックもありますが、ストロボの光だけで撮影したい場合は、可能な限りシャッタースピードを速くし、自然の光が紛れ込んではいるけど、無視できる割合に収まるようにします。

 その場合のシャッタースピードは、どこまでも速くできるわけではありません。ストロボを発光させる際に使用できる最速のシャッタースピードは、ストロボ同調速度と呼ばれ、カメラによって異なります。
 カメラのシャッターボタンを押すと、シャッターを覆っている幕が開き、シャッターを全開にします。そして例えばシャッタースピードが1/30なら、その1/30秒後に別の幕が追いかけてきてシャッターを閉め、今度は光が入らないようにします。
 2枚の幕によって開閉するわけです。
 そしてシャッターが全開になっている間にストロボが光るわけですが、シャッタースピードが速くなっていくと、最初の幕が動いてシャッターが全開になる前に次の幕が追いかけてきてしまい、シャッターが全開になる瞬間が存在しません。その場合、ストロボを光らせても、ストロボの光は一部にしか当たらないことになります。
 例えるなら、お店に買い物に行ったら、一方ではお店がオープンするためにシャッターを開けようとしているのに、他方では早くも店じまいのシャッターが閉じ始め、すべてのシャッターが同時に開く瞬間がないような状態です。
 シャッターが全開になる瞬間が存在する最も速いシャッター速度がストロボ同調速度です。

さて、今回の記事に記載した知識には、厳密なことを言えば例外が存在することもありますが、話をなるべく単純化するために例外は無視しておきます。

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