見出し画像

和解の契約書、示談書の作り方

トラブルを話し合いで決着させるのが和解です。いろんなケースがありますが、とにかく結論がでたら早めに書面で残しておきたいものです。そこで、和解契約書の基本的な形式と、具体的な事例を挙げておきます。いつか、あなたの身を守る知識になるかもしれません。


和解契約とは

和解とは、当事者が互いに譲歩をしてその間に存在する争いをやめることを約束することによって成立し、効力を生ずる契約(民法695条)です。和解には「確定効」があるので、あとで争っていた内容に真実があったり、間違えていたりしても和解の効力は覆らないという性質があります。


どんなことを書くのか?

和解は諾成契約であるので、口約束でも成立します。しかし、単なる仲直りなら口頭でしても構いませんが、和解はそういうなまやさしいものではなく、争いの結果であり、通常は金銭のやり取りを含むことになります。記憶間違いの起こらないように、また、やはり証拠を残すためにも文書化が強く推奨されます。

書く内容は、一般的な契約書と同じく、タイトル(示談書、和解契約、和解確認書など)、日付、当事者であり、そこへ和解特有の内容として、事実関係、和解内容、清算条項、その他を加えます。

少し補足すると、「和解内容」とはつまり、和解によって負うこととなった義務の確認です。たとえば、

甲は、乙対し、〇〇〇〇についての和解金として、金〇〇〇〇万円の支払義務のあることを認める。

といった内容になります。

また、「清算条項」とは、他に争いのないことを確認し合うためのものです。たとえば、

甲と乙とは、本和解契約書に定めるもののほか、当事者間に何らの債権債務のないことを相互に確認する。

といった条項のことです。

最後に具体的なひな型の例を挙げます。


具体例【業者間の未払トラブル】

たとえば卸売業者Aから商品を買い付けていた買主Bが、仕入れた商品の代金をいつまでも支払わなかったことで、この業者間でトラブルになったとします。

話し合いの結果、売主Aが取引契約を解除し、買主Bのもとに残っていた商品は返品させて、それでも損害額に満たない部分については所定の金額で弁償させることにしたとします。

「じゃあ確認のために書面にしよう」ということで、和解契約書を起案します。


       
        契約解除及び弁済に関する和解契約書

卸売業者A(以下「甲」という。)と買主B(以下「乙」という。)及び乙の代表取締役である〇〇〇(以下「丙」という。)とは、これまで継続されてきた甲乙間の令和○○年○月○日締結の売買基本契約(以下「基本契約」という。)の解除と、乙の甲に対する債務の弁済について、本日次の通り和解(以下「本和解契約」という。)する。

第1条(契約解除)
甲と乙とは、乙が複数回に渡り、甲より仕入れた商品代金の支払を怠ったとの乙側の理由を基礎として、本日、合意により基本契約を解除する。

第2条(在庫品)
 乙は、その保有する別紙リストの在庫商品を、本和解契約の締結の日から○営業日以内に、乙の費用負担で、甲にすべて返還するものとする。
2 甲は、前項により返還を受けた在庫商品について、〇営業日以内に破損・劣化等の有無を調査し、乙に連絡する。〇営業日以内に破損・劣化等の連絡が乙に届かなかったものについては、甲による検収の合格とみなす。

第3条(債務承認)
 乙は、甲に対し、本日現在、商品代金残債務として、金○○○万円が未払いであることを認める。
2 甲乙は、前項の金員より前条で返還された在庫品の内、検収に合格したものの仕入代金相当額を差し引いた金額を、本和解契約に基づく乙の甲に対する残債務(以下「本件債務」とする。)とすることに合意する。

第4条(支払)
 乙は、本件債務について、令和〇年○月から完済まで、毎月末日限り金10万円(但し、残額が10万円以下となったときはその残額)を、甲の指定する銀行口座に振込む方法により支払う。尚、振込手数料は乙の負担とする。
2 乙が、前項の支払について1回でも期限に支払わなかったときは、乙は当然に期限の利益を喪失するものとし、乙は直ちに甲に対し、本件債務から支払済みの金額を控除した残額に期限の利益喪失日から完済まで年14.5パーセントの遅延損害金を付加した金額を支払う。

第5条(連帯保証)
丙は、甲に対して、本件債務につき乙と連帯して支払の責を負う。

第6条(清算条項)
 甲と乙及び丙との間には、本和解契約で定められた以外に、何らの債権債務のないことを相互に確認する。

本和解契約締結の証として、本書3通を作成し、甲乙丙記名押印の上、各自1通を保有する。
(日付、記名押印)


あわせてお読みください

契約書のひな型をまとめています。あなたのビジネスにお役立てください。


もしこの記事が少しでも「役に立ったな」「有益だな」と思っていただけましたら、サポートをご検討いただけますと大変嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。