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ケースバイケースもしくは箱男の話

きのう近所の激安古着屋さんにうんこティーを買いに行った。
うんこティーを知らない人に説明しておくと、うんこTシャツのことだ。
けどそれはほんとうにうんちがついたTシャツなわけではない。
大きめサイズで、経年劣化でだるだるでところどころ破れてたりシミがついてたりするあれだ。
うちで風呂上がりや寝るときに着るもので、デザインなどはどうでもよく、1番は着心地、締め付けられず寝返り打っても何しても引っ張られないあれだ。
「そのうんこティーいつまで着るの?捨てちゃえば?」と家族から咎められるあれでもある。
ついこの間までは4.5枚のストックがあった。
簡単に4.5枚と言っても大変なことだ。
育てないと育たないのだ。
それには数年を要する。
首周りや胴回りをグイグイ引っ張り広げて、自分好みのスタイルに仕上げていく。
体との摩擦で、生地はてんてんにはげてより滑らかになっていく。
オーバーサイズのやつを買えばいいじゃないかと言われるかもしれないが違うのだ。
体にフィットしつつフィットしないように仕上げていくのだ。
一朝一夕には無理だ。
そして自分好みに仕上がっていくには10のうち1か2くらいだろう。
美味しんぼのまる鍋みたいなものだ。
まさに黄金の鍋より価値あるうんこティーだ。
金では買えない。
近年そうやって育ててきたうんティーは4着ほどあり中3日くらいの登板でいい具合のローテーションだった。
その中には2004年だかのロッキンオンジャパンでもらったやつもあった。
擦れて相当見にくかったが、バックプリントの大量の出演バンドの中に我がバンドの名前も見てとれた。
しかし最後は悲惨だった。
ビリビリになったうえ、床にこぼしたコーヒーを慌てて拭いたので、臭いもひどいし汚いし、流石の俺も捨てた。
過去のメジャーシーンとのようやくの決別だったのかもしれない。
うんティーがうんこ以下に成り果てた。

そうこうするうちに手元には2着しかなくなった。
となるとローテがやばい。
ヤバティーだ。
しかもうち1着は相当劣化がひどく、右の乳首が見えてしまう。
安全ピンで繋ぎ止めたところで俺の唯一の弱点である右乳首に刺さったりしたら、、、
あんな神経の集まっている一番敏感な部位に
想像するだけでものたうち回る。

というわけで冒頭の古着屋さんへと向かったのだ。
将来有望そうな選手を独自の目利きで見極め、2着くらい、ドラフト1.2くらいを抑えればよいだろう。
プロ野球のそれと違って、かなり人気薄なジャンルだ。
探すのは容易だろう。
安さとサイズと肌触りだ。
あっさりと2着見つけた。
そこで店内放送が。
「上下でも靴でも小物でも店内のもの5点ご購入いただくと10%引きになります」
なんと消費税分がまるまる浮く計算だ。
けど5着となると選ぶのが相当大変だ。
うんこTを5点、うんこファイブも検討したが、そこまで期待の新人はなかなか見つけられない。
4点まで無理に選んでうろうろする。
すると目に留まったのが変な色のナイキのバッグ。
大きくもなく小さくもない、言わば中途半端だ。
こんなサイズのをいつ使うのか、しかも変な色だ。
ダサいかダサくないか判断がつきかねる。
しかし一回気になると頭から離れない。
買うか買わないか。
そうだ、手ぶらで来てしまった。
うんティーを入れる袋がない。
レジで貰えばいいが有料だ。
小泉進次郎のせいだ。
ろくなことしない、他にやることいくらでもあるだろ。
そうか、バッグを買って中に入れて帰れば袋を買わなくて済む。
というわけで、正当な理由を持って気になる変なバッグを選んだ。
何そのダサいのー!と言われてもエコのために仕方なかったと言い訳もできる。

家には小さいのから大きいのまで様々なバッグがある。
滅多に使わないのもあるが、幾つも並んでるのを見て心がときめく。
ときめきトゥナイトだ。
新しく仲間入りする変な色のバッグも使うかわからないが、日々を潤わせてもらおう。
あんまり自覚は無かったけど、そうか、俺は入れ物好きだったんだ。
釣り用のバッグは4つも5つもある。
こないだバンドの物販グッズを持ち運ぶために大きめのごろごろトランクを買った。
最初こそ大量にグッズを詰めて運んだが、そんなに必要はないことがわかった。
そんなに売れないのだ。
だからも一回り小さいトランクも欲しくなっている。
必要なものがちょうどピタッと入ることにエクスタシーを感じるセイヘキがあるようだ。
釣りのルアーやオモリや針など細かい道具が、100均のピルケースにすっかり収まったときは身悶え喜んだ。

ケースならなんでも好きだ。
文房具たちがきれいにまとまるやつとか、EPレコードがピッタリハマるやつとか。
そうだった、俺は箱好きだった。
これからは大いに全面に出していこう。
目指すは人生シンデレラフィット。



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