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企業経営者からみた地方の大学の問題

私は学部から博士課程まで9年間東京大学に在籍し、さらにそれから6年間大学内のインキュベーションにいて、さらに香川で中小企業を経営している。大学と企業の端のほうにずっといたので、地方の大学はなぜ中途半端な研究をあきらめて、もっと社会の役に立つ教育をしようという気がないのか、不思議でならない。

1,企業のニーズに適合していない

企業の採用と教育に関するアンケート調査」(10p,経済同友会,2016)によれば、企業が求める(課題設定⼒・解決⼒、耐⼒・胆⼒、異⽂化適応⼒、コミュニケーション能⼒)といった全ての資質について、十分備わっているという人が半分以下しかいない。

2,学生の役に立っていない

香川大学の卒業生アンケートによれば、経済学部では(50ページ)、各知識や○○力といった各項目で、16個中11個が「役立っている」と答えた人が半分を超えていない。
また、工学部でも(62ページ)、「外国語運用能力」「地域の風土・文化の特徴や強みを理解する力」「地域に貢献したいという意識」などが、企業等からの評価と大学教育で身についた能力のギャップが大きく、地域の教育機関として、またグローバルに活躍できる人材を育てる場所として機能していない。

3,リカレント教育の不足

時代の変化の速さと、長寿命化によるリカレント教育の必要性が叫ばれているが、四国内の大学で文部科学省の「職業実践力育成プログラム」は全国で350以上あるが、四国では国立4大学でたった7つしか開催されていない
地域の高等教育機関として、リカレント教育に真面目に取り組んでいるとは全く思えない。

4, 研究成果には良いものが眠っているが、社会が活かせていないだけという幻想

TLO(技術移転機関)法ができたのは、平成10年と、もう日本では20年以上の実績があるわけだが、(一財)大学技術移転協議会によれば、大きな大学以外、ほとんど収入がない。

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*10大学(2017年度の収入トップ10):東京大学、京都大学、東京工業大学、東北大学、大阪大学、九州大学、名古屋大学、日本大学、東京医科歯科大学、東京理科大学

残念ながら大都市の大きな大学以外で、技術移転により収入を上げるというのは幻想にすぎない。時間がないというのなら、いつまで待てばいいのか?

5,大学の経済効果はかなり大きいが、研究の経済効果は小さい

大学の教育研究が地域に与える経済効果等に関する調査研究 」(p23)によれば、富山大学の教育活動の経済効果は667億円、大学立地による経済効果は483億円もあるが、研究活動によるものは約25億円しかない。

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地域としては、大学に対し、研究の経済効果よりも教育活動や立地による経済効果を期待せざるを得ない。

地方の大学は教育に力を入れてほしい

20年後30年後を見据えると、地方の未来は若者の成長と活躍にかかっている。地域が衰退すれば、多少の研究ができたところで、その地域の大学は衰退するしかない。そうなる前に地域の企業に求められる人材を輩出し、地域の社会人にリカレント教育を提供できる高等教育機関となるべく教育に力を入れてほしい。

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