そこじゃないだろ?電動キックボードの社会実験
経済産業省から2021年4月23日付で、電動キックボードのヘルメット無し車道の通行が一種の社会実験的に認められたとの発表がありました。
電動キックボードは2010年代半ばから世界中で普及しています。私もアメリカやヨーロッパで何度も乗ったことがありますので、シェア型の電動キックボードの便利さはよくわかります。日本でも今後普及させたいとの思いもよくわかります。
そこで、車道でヘルメット無しで走行できるというのが、今回の目玉なわけですが、電動キックボードで社会実験するべきところはそこじゃないだろう、というのが正直な感想です。
というのも、電動キックボードのビジネスモデルは基本的に今の自転車や原付のような「所有型」ではなく、「シェア型」というところにあります。街中のいたるところに転がっていて、さっと乗って、次の目的地で乗り捨てられる、というところに便利さがあります。
しかし、この「街中のいたるところに転がっている」というところが問題で、世界中で景観の問題やバリアフリーの問題、環境汚染の問題など、多くの社会的な問題を引き起こしています。この原因を解決しないことには、社会問題が起こっていずれ消えることは目に見えています。実際に、シェアサイクルは全然うまく行っていません。
逆に言えば、ヘルメット無し走行の事故の危険性といった安全性の問題については、外国の例を見れば一定のことはわかっているわけで、わざわざ社会実験するほどのことではありません。当然に死亡事故が増えることを覚悟の上でやるか、やらないかというだけの話です。
今重要なのは、キックボードでも何でもいいですが、シェア型の乗り物を置いておくステーションを街にどれだけ作れるか、という社会実験が必要なのです。ステーション作りをせずに、放置型モデルでは失敗することは目に見えています。
台湾のように公道にバイクを置くスペースを作ったり、街のあちこちにシェア型乗り物を置くスペースを作ったりするために必要な、様々な法的な制限を取っ払う必要があります。これをやらずして、シェア系の乗り物は普及しませんし、普及させてはいけません。シェア型乗り物のステーションは社会インフラなのです。本気でマイクロモビリティの社会実験するなら、ここからじゃないか、と思います。別にキックボードに限る必要もなく、自転車からでも可能です。
コンパクトシティという意味でも、シェア型乗り物が普及することには一定の価値があります。政府は、小手先の規制緩和で引き起こされるとわかっている問題を起こすのではなく、根本的に社会構造を変える社会実験をやっていただきたいと思います。
もはや日本が世界の最先端から遅れているのは明らかですが、せめて単なる後追いではなく、先行者から学んで上回るようにしてほしいと願っています。
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