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公開討論会と青年会議所

公開討論会とは

「青年会議所はどんな事業を行っている団体ですか?」と聞かれて一言で答えるのは大変困難です。青年会議所はその地域地域でその時青年会議所に所属している会員が自らの実施する事業を会議で決めていくので、地域によっても、また年によってもやっている事業は違います。しかし、青年会議所の行っている社会的な影響の大きい事業を一つ挙げるとすれば、それは選挙における公開討論会です。

公開討論会の定義は明確なものはありませんが、国や自治体の首長や議員の選挙において、立候補者を集めて特定テーマについての見解を求めるのが公開討論会だと言えると思います。実は1983年までは公営の立会演説会というのがありました。この立会演説会は形骸化したために廃止されました。現在の日本では、立候補者の意見を有権者が一方的に聞く機会は個人演説会や政見放送、また近年ではネット上の発信などがありますが、同じテーマで複数の候補の意見を聞く機会というのはほとんどありません。公開討論会が開催されなければ、有権者の聞きたいテーマに触れることなく当選する候補者も出てしまうのです。

青年会議所は公開討論会の主な主催者

これに対し、各地で民間の団体が候補者を集めて公開討論会を行うことがあります。この主催者には、マスコミや地域のNPOなどもありますが、日本で最も多く主催しているのは間違いなく青年会議所です。すべてではありませんが、公開討論会の支援を行っているリンカーンフォーラムのデータを見てもこれは明らかです

なぜ青年会議所が最も多く行えるのかについては、いくつかの理由が考えられます。

政治的に中立である
青年会議所は良く自民党寄りとの声がありますが、全くそんなことはありません。私は2019年に青年会議所の会頭を務めましたが、自民党はもちろんどんな団体から圧力を受けたこともありません。青年会議所の予算の主な出どころは青年会議所の会員の会費であり、どこからも圧力を受ける筋合いはないのです。
実際、自民党に都合のいい団体なら青年会議所の行う公開討論会には自民党の公認候補者は必ず出そうなものですが、拒否されるということもよくあります(もちろん野党の公認候補者が来てくれないこともよくあります)。

一定の社会的信用がある
公開討論会を全く知らない団体が主催することに抵抗を覚える立候補者も少なくありません。その点、青年会議所は地域で数十年以上続いている団体であり、多かれ少なかれ一定の知名度や信用があります。当然合法に公開討論会は実施される必要がありますから、日本青年会議所は公開討論会を支援するために、総務省の選挙部と定期的に意見交換しています。

候補者とのつながり
民間団体が公開討論会を行うときに、最も困難なのが多くの立候補者を集めるということです。候補者と全くつながりがないと、事務所に正面からお願いしても門前払いされかねません。その点、青年会議所は地域で長い歴史がありますから、与党でも野党でも必ず支援者のOBやメンバーがいるため候補者とつながりを見つけることができます。

全国に存在する
青年会議所は47都道府県すべてにあり、ほとんどの都市をカバーしています。だからこそ、国政選挙だけでなく首長選挙などの公開討論会も実施することができます。そして、公開討論会の実施ノウハウも青年会議所のネットワークで共有されています。

青年会議所が公開討論会を主催するメリット

公開討論会を主催する青年会議所にも、多くのメリットがあります。

青年の観点を政治家に提供する
青年会議所では時々、アンケート等によって集められた青年の声を政治に反映させるために提言などを行いますが、提言が採用されるかどうかは行政の担当者の胸先三寸に委ねられてしまいます。一方で、公開討論会でアンケート結果をもとに立候補者に見解を問うことは、政治家に青年の観点を提供することになります。これは時として提言よりも有効に働くことがあります。

青年会議所のブランディング
ある程度の間隔で開催される公開討論会の主催者となることは青年会議所のブランディングに繋がります。メディアにも多く取り上げられるため、青年会議所の社会的信用と知名度の向上につながります。

メンバーへの機会の提供
公開討論会を設営し、コーディネーターと内容を詰めていくことは、通常の仕事ではありえないことです。一方で、仕事と趣味以外に興味がないという人でも、現代社会に生きる成人として、政治と自分の仕事や生活が全く関係がないということにはなりません。政治は自分と全く関係がないと今まで考えていた人が、公開討論会の運営を通して政治に触れることで初めて政治の重要さに気づくことはよくあることです。公開討論会はメンバーの成長にとって貴重な機会となります。

オンライン公開討論会の増加

従来は公開討論会といえば、ホールや体育館に立候補者と有権者を集めてリアルで開催するものでしたが、2010年代中ごろからオンライン中継での配信が行われるようになりました()。選挙運動のインターネット利用の解禁もあり広がりを見せています。これは立候補者にとっては、個人演説会ができない20時以降でもオンラインなら出演できるなど、時間を有効に使うことができます。また、有権者にとっても会場に足を運ばなくても簡単に視聴できるという意味で有用です。2021年はこの傾向はさらに広がると思われます。

青年会議所には公開討論会の実施を期待したい

2019年に私が日本青年会議所の会頭を務めたときには、参議院選挙がありました。青年会議所のネットワークを生かし、全国の全ての選挙区で公開討論会を実施することを目指しました。残念ながらいくつかの選挙区では公開討論会という形式ではなく、青年会議所の質問に対し各立候補者の見解を映像で答えていただく形での実施となりましたが、一応すべての選挙区で立候補者の意見を有権者に届けることができました。

青年会議所が公開討論会を実施しなくなれば、代わりに公開討論会を実施する団体があるかといえば今のところ見当たりません。個人演説会に足を運ぶ40代以下の有権者はもともと多くありませんし、若年層の聞きたいテーマと高齢者の聞きたいテーマはどうしてもずれてきます。これでは、ただでさえ低い若年層が選挙に関心を持つことは望めないでしょう。

私は青年会議所を卒業した身ではありますが、今後も青年会議所にはぜひ公開討論会を実施し続けてほしいと期待しています。それは本来青年会議所が必ずしもやらなければならない事業ではないかもしれませんが、全国各地で実施できるのは青年会議所だけなのですから。

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