JC論:なぜ多子社会実現の議論が必要なのか
少子化対策ではなく、なぜ多子社会実現の議論を行うべきなのか、一言で言えば多子社会実現の議論は今の日本社会の様々な問題を浮き彫りにするからです。日本青年会議所では2019年度多子社会の実現こそが日本の成長戦略であるとして、全国で国民討議会を行うなど、積極的に多子社会実現の議論を推進しています。
問題の本質
子供を産み育てるかどうかは非常に個人的な問題であり、個人に社会が押し付けることはできません。子供が増えない問題は個人にあるのではなく、社会にあるのです。政府は希望出生率の実現を目指していますが、そもそも希望出生率が低いことを問題にすべきです。
どうしてこの国では、子供を産み育てようと希望する人が少ないのか、そこに問題の本質があるのです。今子供がいる人を助けるだけでは、少子化の問題は解決されません。これから子供を産み育てたい、という人を増やす議論が必要なのです。
誰が議論しているのか
なぜこの議論をしないのか、それは今少子化対策の議論をしている人がほとんど子供を産み育てることのできる世代ではないからです。しかし、これから子供を産み育てられない世代が考えた政策が、今の時代の若者に合ったものになりうるでしょうか?そもそも子供が増えることによって最も利益を得るのは、若者なのではないでしょうか。
それなのに、子供をこれから産み育てる人ではなく、産み育てられない年齢の人が議論しているのは、ほとんど悲劇です。正直な話、20年前に必要だったと思っていたことを今実現されても、若い人の心を動かすとは到底思えません。
社会を不透明にする原因は少子化
だからこそ、子供を生み育てることの可能な年代である青年会議所が多子社会実現の議論を行うことには大きな意味があります。あなた自身が子供を産み育てようと思うかどうかのポリシーは関係ありません。たとえあなたが子供を持たなくても、子供が増える社会はあなたを幸せにするはずです。
なぜなら、人口減少が起こることによって、今後さらに税金や社会保険料は増加して生活が苦しくなるだけでなく、サービス産業は縮小しGDPは下がっていきます、これらの原因は全て少子化にあるのです。
多子社会の実現は、子供がいる人も、子供がいない人も両方幸せになることなのです。
社会の問題を浮き彫りにする多子社会実現の議論
そして、多子社会実現の議論にはもう一つ大きな意味があります。それは、現代の日本社会におけるジェンダー平等の問題、性による役割の分担の不公正さ、女性の不当な賃金格差、長時間労働などの労働環境の問題、歪んだ性教育、高い教育費、伝統的な偏見、子供を受け入れない社会風土などなど、多子社会の議論をすることによって多くの問題が浮き彫りになります。
私たちはなんとしても、これらの問題を解決し、子供が多く産み育てられる社会を実現しなければならないのです。
財源も問題にならない
多子社会の実現に向けた政策は、財源すら問題にはなりません。そもそも、子供が増えれば、その子供は20年も経てば税金や社会保険料を払うようになるのです。多子社会の実現に向けた予算は税金を使っても、いずれ帰ってくるお金です。使って無くなってしまうお金とは違って、仮に借金でまかなっても、後の世代に借金だけ残すということにはなりません。
多子社会の実現に向けた政策は、社会保障の範疇ではなく、経済政策、未来政策として予算を用意し、実施すべきことなのです。高齢者の社会保障と同じ枠組みの予算で語ることではありません。
ではなぜ、国は借金をして多子社会の実現に向けて税金を使わないのでしょうか。それは、多子社会の実現に向けた政策に自信がないからです。少子化の問題は古くは80年台後半から言われ、90年代から政策課題となってきました。しかし、ことごとく失敗し、今の現状があります。その結果政府は少子化対策などという不確実なものにお金を出すのはいかがなものか、ということになっているのです。
しかし、失敗原因は明らかです。それは、若者がこの議論をしてこなかったからです。これから子供を産み育てる世代が政策を考え、実施をするならば多子社会の実現は不可能ではありません。
テクノロジーは助けにはなっても解決にはなりません。日本国の存亡は多子社会の実現にかかっているのです。そして、その第一歩こそが、若者による多子社会の議論なのです。
さあみなさん、議論を始めましょう。議論を封殺しなければ、どんな考え方でもかまいません。
自分は子供を産み育てる気は無いが、子供が増える社会づくりには参画するという態度は決しておかしいものではありません。それは車に乗らない人が交通安全運動に参画するのと同じです。個人の自由意思と、社会の問題を解決しようとすることとは並列しうるはずです。
全ては私たち自身と子供たちの未来のために。
参考文献
「少子化対策はなぜ効果があげられないのか」 大泉博子,2016
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