『仮面ライダークウガ』第11話感想

第11話 約束 (その2)

 冒頭が3月24日なので、第10話から少し日が経っています。2話で1エピソード構成ならではの時間の飛ばし方です。
 場所についても、神崎先生は栃木、五代は東京、サイ型グロンギは埼玉と広範囲です。さてはて、何がどのように展開していくのか楽しみです。

 栃木県・宇都宮市。午前9時少し前。
 宇都宮市でも都市部ではなく、大型のビニールハウスがいくつも並んで立つような農業地帯の中。
 手入れの行き届いた生垣に囲まれた広い敷地には、家や小屋が建っている。その母屋には「神崎」の表札がかかっている。

 神崎家の座敷。
 所狭しと置かれた数々の段ボール箱。よく見ると箱の表に日付が書いてある。摘まれた箱にはほうきが立てかけられていたり、タオルが掛けてある。片付けの最中のようだ。

 段ボール箱に囲まれた中、太い黒縁眼鏡にモスグリーンのシャツと同じ色味のカーディガンに暗い色味のスラックスという、激渋かつカジュアルな服装の神崎先生が、座卓に置かれた冊子を手に取る。他にも習字や水彩画などが置かれている。

 神崎先生が一冊の文集を手に取る。パラパラとめくっていると、神崎夫人がバケツと雑巾を手にして座敷の前の廊下に現れる。掃除すると言って散らかして、と神崎夫人が冗談めかして言うと、神崎先生はのんびりとすぐにしまうよ、と答えて文集を置く。そしてその手を隣に置いてあった卒業アルバムに伸ばし、手に取ってパラパラとめくる。完全に掃除する気がない。

 神崎夫人は廊下にバケツと雑巾を置くと、笑顔で座敷に入って夫の隣に座り、彼が手にしていた卒業アルバムをのぞき込む。仲良しだなあ。
 懐かしいと声を上げ、前の学校のものかと神崎夫人が尋ねる。妻の問いに頷きながら、神崎先生は卒業アルバムのページをめくる。

 神崎夫人は「そういうの見始めると、夜になっちゃうわよ」とこの世の真理を説いて、夫のそばを離れる。神崎先生は卒業アルバムから目を離さず、生返事をする。

 一通り見終えて、神崎先生は座卓の上に卒業アルバムを置く。今度はすぐ隣に置いてある「昭和62年度6年2組」と横に書かれた段ボールの中に手を入れる。小さめの横長の冊子を取り出す。開いたページには、名前とメッセージが記されている。

 それは当時の卒業生たちからのメッセージが書かれたサイン帳だった。
 ページをめくると、涙を流す男の子の顔のイラストと、大きな文字で書かれたメッセージと名前が書かれている。メッセージはペンの色を変えたり、縁取りがされたりなどしていて、見やすいながらも熱い思いが伝わってくる。書いた生徒の名前は〈五代雄介〉!

 「先生の言葉に大かんどー!」「ぜったい約束はたします」「教室で見て下さい」などなどの文字を目にし、神崎先生はふと眼差しを上げて「俺の言葉……?約束……?」と呟きながら記憶を手繰り寄せる。
 すぐには思い出せないまま、再びサイン帳に目を戻す。そこには「2000年3月25日」の日付が書かれている。

 神崎先生はハッとしたようにサイン帳を置いて立ち上がる。家の中のどこかにいる妻に向かって、ちょっと出かけてくる、と大きな声で呼びかけ、そのまま座敷を出て行く。
 あ、これ「ちょっと」じゃ済まないヤツだぞ、多分。

 神崎先生のセンチメンタルジャーニーが始まるまでの場面。まるで違うドラマが始まったかというぐらい穏やかな雰囲気で、ご夫妻の仲良し場面にほっこりする。仲良し熟年夫婦のキャッキャウフフ、若者カップルのイチャイチャとは違う心の栄養素が絶対あるわー。

 卒業の時期を迎えると、過去に担任した生徒たちの思い出を見返したくなるのは、学校の先生あるあるなんでしょうか?それとも神崎先生がそれだけ情が厚いのでしょうか?

 東京都・文京区内。ポレポレ。午前9時ごろ。
 日めくりカレンダーがめくられ、3月25日になる。土曜日なんだな。
 めくったのは五代雄介で、満面に笑みを浮かべてカレンダーを指差す。今からワクワクが止まらないようだ。カワイイ。

 めくった方のカレンダーを手のひらで手早くクルクルッと丸めてカウンターに向かう。丸めた紙をカウンターの灰皿に入れ、カウンターに置いてあったヘルメットを手に取る。

 カウンターの中でコーヒー用のフラスコを拭いているおやっさんに、五代が出かけるあいさつをする。完全にデートだと思っているおやっさんは「手ぐらいつなげよ」と五代に声をかける。

 五代が店を出ようと入り口を開けると、若い女性が同じタイミングで店に入ってくるところだった。女性は驚きつつも店の中に入ってくる。すれ違いざまに五代は女性に大丈夫かと声を掛ける。女性は五代から目を離さないまま、彼の問いかけに黙ってうなずく。
 女性の様子に安心した五代は、そのまま外へ出て行く。女性は店のドアを開けてまで五代の後ろ姿を見つめている。

 女性の様子が明らかに変なのに、おやっさんは全く気にしていない。カウンターの中から彼女に向けて機嫌良さそうに、来たか、と呼びかける。
 おやっさんにナナと呼ばれた女性……あれ、見覚えあるな。ジャンに早口で話しかけていたり、おやっさんのことを「おじさん」と呼んでた女性ではないか?

 女性はなおも入り口で外を見ながら、おやっさんに今のは誰かと関西弁で尋ねる。おやっさんは名前と職業(冒険家ではなく、働かない従業員)を教える。別名も教えようとするが、そもそもクウガが何なのかを知らないし五代も今のところちゃんと教えてないので、どうしても適当な説明になる。

 ナナさんはおやっさんの別名以降の説明には耳を貸さず、うっとりと外を見ながら「五代雄介か……」と悩ましげに呟く。めっちゃカッコイイ!と叫び、連ドラの主人公みたいだ、といわゆるメタ発言をする。
 するとおやっさんは渋~い顔をして「アイツがかあ?」と鼻で嗤う。
 そうなんだよ、五代雄介はカッコイイんですよ……ちょっと色々アレだけど……。

 東京都・警視庁。午前9時10分過ぎ。
 コート姿の一条刑事がとある大きな会議室の前にやってくる。中からは杉田刑事が待ちかねたように出て来て、二人は朝のあいさつを交わす。もうこれだけでカッコイイ。

 杉田刑事が、対グロンギたちの捜査本部の再編成の話を聞いたかと一条刑事に尋ねる。
 一条刑事はもちろん知っていて、グロンギたちに対しては長期戦を見越して、より専門的な体制が必要ということなのではと推測を語る。杉田刑事も賛同してうなずく。

「お前も仮住まいじゃなく、こっちに腰を落ち着けることになるな」
 杉田刑事にそう言われ、一条刑事がそうですねと淡々と返す。
 一条刑事の立場が長野県警からの出張ということではなく、正式に東京警視庁への移動になるかもしれない、ということだろう。

 杉田刑事が残念そうに「今度こそは向こうに残してきた彼女が泣くなぁ」と言い、一条刑事の肩の辺りをポンとたたくと、離れていく。令和だったらハラスメント扱い。良かったよ、平成で。
 一条刑事は去っていく杉田刑事に向けて否定する言葉を投げかけるが、それはそれでどうなんだ……。

 しかし何故に杉田刑事の中では一条刑事は彼女持ち設定なのでしょうか?確かにイケメンで優秀でジェントルだけど、とんでもないワーカホリックですよ?普通のホモサピエンスにはまず無理ですよ?


 東京都。城南大学・考古学研究室。午前9時20分ごろ。
 本日も朝からラジオ番組を掛けつつ、桜子さんが研究の続きを行っている。パソコンのキーボードを叩いてエンターキーを押す。
 モニターにはこれまで判明した、クウガの色と特徴について記された文章が並ぶ。

 桜子さんは満足そうに微笑んで「これでカンペキ(←やり遂げた感を出すため、あえてカタカナ表現)」と言い、マグカップを手に取る。口を付けようとした時、携帯電話が鳴る。

 桜子さんが携帯電話を取る。電話に出ると、相手はジャンだった。桜子さんが元気かと尋ねると、ジャンからはお気に入りの梅干しで元気いっぱいだと返ってくる。

 長野県。長野パークホテル。同時刻。
 ジャンは長野に発掘調査のために滞在中である。今はホテルのロビーにいて、桜子さんに電話をかけている。
 発掘について尋ねられたジャンは、同じようなものが次々と出て来ていると答える。桜子さんは「それは大変じゃない」と心配そうである。

 ジャンは桜子さんと話しながらも、辺りを見回していて落ち着きがなかったが、窓ガラスの向こうに小柄な女性の人影を認めて表情を明るくし、桜子さんにノープロブレムと告げる。「かわいいアシスタントがいるからね」

 ジャンと桜子さんが話している間に、ホテルの外にいた女性はジャンを見つけてピョコンとお辞儀をすると、小走りでホテルの入り口に向かう。ホテルの中に入って駆け寄ってきたのは……。

 折良くジャンが桜子さんに今変わると告げて、自分の携帯電話をそばに立つ女性に向け、電話の相手が桜子さんだと教える。女性は嬉しそうに声を上げ、電話を受け取る。
「もしもし、夏目ミカです」
 まるで別人のような明るい笑顔と口調でミカちゃんが名乗る。

 城南大学・考古学研究室。
 意外な人物の登場に、さすがの桜子さんも驚く。しかし明るく元気な声に笑顔になり、ジャンと一緒なのかと尋ねる。

 長野パークホテル・ロビー。
 ミカちゃんがはきはきと元気よく答える。無理を言って発掘チームに入れてもらったこと。父の夏目教授の分まで頑張りたいこと。
 何というバイタリティと行動力。見習っちゃいかん人を見習っちゃった気もするが(2000の技を持つ男とか、ワーカホリック過ぎるイケメン刑事とか)。
 しっかりと前を向いて歩きだしたミカちゃんに、桜子さんが頑張ってねと心からのエールを送る。

 というわけで、ミカちゃん再登場!前の登場時より髪の長さ以上の成長を感じます。ジャンと和解し仲良くなり、今や発掘チームの一員になるため、様々なことを相当頑張ったのでしょうね。きっと夏目教授も喜んでるでしょう( ;∀;)

 栃木県。JR宇都宮線。午前10時過ぎ。
 大きな川を渡って電車が走り抜けていくところ。
 電車の中、一人で座席に座る神崎先生。渋い。膝の上には黒いカバンを乗せている。その上で、家から持ち出したサイン帳の五代雄介のメッセージが書かれたページを開いている。
 表情があまり晴れやかではない所を見ると、まだ約束の内容が思い出せていないようだ。

 とある陸橋。トライチェイサーにまたがった五代雄介が、待ち遠しそうに微笑みながら駆け抜けていく。

 茨城県・石下町内の高架下。午前10時20分過ぎ。
 車用の信号が黄色から赤に変わる。そこへ一台の大型トラックが差し掛かり、一時停止する。道を確認するため、ドライバーが地図の冊子を手に取った時。不意にトラックが大きく揺さぶられ、ドライバーは地図を座席の下に取り落とす。

 何かと思って体を起こした時。いったん落ち着いた揺れが、再び襲いかかってくる。
 揺れが収まると、ドライバーはさすがに不審に思って、運転席から外に出てくる。あ、イヤ、出ちゃダメなんだってば!

 ドライバーはトラックの前を回り込んで、左側をのぞき込む。荷台のコンテナの左側が、不自然に大きくへこんでいる。何だこりゃ、とドライバーが呆然と見上げていると、その襟首の辺りを横から伸びてきた腕にどんと突き飛ばされる。

 すぐそばの橋脚に前向きに押し付けられたドライバー。顔だけは左へとひねって打ち付けずに済んだが、自分を襲った何者かを確かめようと、どうにか背後に視線を向ける。

 そこにいたのはやはりというか何というか、凄まじい形相のサイ型グロンギ。溢れる殺気か、鬼気迫る表情か、ヤバい風体か、はたまたその全てに恐怖を覚えて、ドライバーはうめき声を発することしかできない。彼が見ているのは、人の形をした絶望だった……。

 ということで、サイ型グロンギの神出鬼没ぶりに怯えつつ、その3に続きます。
 何であの風体で外をうろついていて、ニュースにならないんだ?

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