『仮面ライダークウガ』第11話感想

第11話 約束 (その4)

 茨城県。つくば市・上郷。午後0時過ぎ。
 高速道路の高架下では、何台ものパトカーや覆面パトカーが十重二十重に取り囲む。その中心には人間体のサイ型グロンギが仁王立ちしている。苛立たし気にリントという単語を口にする。

 パトカーの陰には、何人もの警官や刑事がいて、彼らはみなサイ型グロンギに向けて銃を構えている。
 パトランプの赤く明滅する光とサイレンにさらされ、サイ型グロンギの苛立ちが抑え切れなくなる。肩を怒らせ前のめりに自分の正面にいる警察官たちへと迫っていく。

 現場に急行中の一条刑事の覆面パトカー。現場にいるパトカーからの無線が入ってきたが、状況を伝え始めて間もなく、連絡していた男性警官の悲鳴と爆発音のようなものが聞こえる。茨城県警本部の無線担当の警察官が呼びかけるが、現場からの応答はない。

 同じ無線を、トライチェイサーを走らせながら五代も聞いている。

 電車に揺られつつ、目的地へと向かう桜子さんと神崎先生。神崎先生はサイン帳の五代のページに指を差し入れたまま、眉間にしわを寄せている。五代に伝えた言葉をまだ思い出せないのだろう。

 まだ現場に向かう途中のトライチェイサー。

 一条刑事の覆面パトカーがついにつくば市上郷の現場に到着する。すぐ近くにパトカーを停め、降り立った一条刑事は辺りを見て言葉を失う。
 現場に先着していた茨城県警の警官や刑事たちが、誰も彼もが地面に倒れていて、ピクリとも動かない。

 すぐ近くでうつぶせに倒れていた警官が一人、体を震わせながら頭を起こす。一条刑事は慌ててそばに駆け寄り、声をかける。

 警官はどうにか自力で仰向けになったものの、目を開けることもできない。第22号が逃走した方向をどうにか告げて、そのまま力尽きてしまう。一条刑事は再び声をかけ、体を揺さぶる。

 トライチェイサーに無線が入る。前置きなく五代雄介、と呼びかける声はもちろん一条刑事のもの。

 一条刑事は第22号が田倉方面に逃走したこと、今いる現場の収拾がつき次第自分もそちらへ向かうと伝える。新しい逃走先へ向けて、疾走するトライチェイサー。

 茨城の土地勘がないし、調べてもいないのでアレなんですけど、もしかしなくてもサイ型グロンギはかなりの高速で移動してるのでしょうか……サイって本気出したら走るの速いって何かで見た気が……。

 どこかの工場の敷地に堂々と不法侵入したサイ型グロンギに怯え、逃げ惑う作業員たち。謎の下からの赤いライティングが超怖いぞ。
 サイ型グロンギはどうしても車の出す音が癇に障るようで、急に我慢の限界が来てしまい、逃げ惑う作業員たちに鬼の形相で迫ってくる。

 一人の作業員が作業用の車の運転席に乗り込み、車を出そうとエンジンのキーを捻ろうとする。しかし間に合わず、サイ型グロンギが来て、作業員を掴み出す。

 そのまま外に出された作業員は必死に助けてくれと懇願するが、サイ型グロンギが聞き入れるはずもなく、高々と掲げられた状態でのどを締め上げられてしまう。

 作業員さん大ピンチ!というまさにこの時!マフラーの爆音が響き、建物の陰からトライチェイサーに乗った五代雄介が現れる!
 カッケェェェェェェ!!!!!!

 トライチェイサーは爆音を上げ、高速でサイ型グロンギへと迫ってくる。
 サイ型グロンギはトライチェイサーが向かってくるのを睨みながらも、作業員を締め上げる手は緩めない。

 爆速で走ってきたトライチェイサー、何とサイ型グロンギに体当たりをぶちかまして去っていく!さすがのサイ型グロンギも当たった場所と勢いのためにバランスを崩して地面に倒れる!放り出された格好のものの、作業員はとりあえず一命を取りとめる。

 トライチェイサーの向きを変えて停まる五代雄介。そこへサイ型グロンギがさっきの体当たりのお返しとばかりに突っ込んできて平手打ちをぶちかます!え?平手打ち?
 しかしその威力は強烈なもので、完全に不意を突かれた五代はトライチェイサーの上から吹っ飛ばされてしまう。

 五代に真向かったサイ型グロンギが、目を据えながらグロンギ語で話しかける。「お初にお目にかかります。そうです私が変なオジサンです」と言っていないことだけは確かだ。

 やっとのことで立ち上がった五代は、変身しようと腹に手のひらを向けるが、一瞬早くサイ型グロンギが動き、五代の体を担ぎ上げるとぶん投げる!
 背中から落とされた五代、かなり痛いはずだが、すぐに立ち上がろうとするも、サイ型グロンギの強烈なアッパーが入り、仰向けにひっくり返される。サイ型グロンギはすかさず五代の後ろに回って首を腕で締め上げる。苦しみ悶える五代。

 サイ型グロンギとの初戦ですが、パワープレイがスゴイ!えげつない!付け入るスキを与えない!イカツイ体つきは伊達じゃない!

 そして五代雄介の生成りのズボンが砂にまみれて茶色になっていくのが何ともいたたまれない!あれ洗濯で落ちるかな???

 神奈川県山北町谷峨。午後12時45分過ぎ。
 踏切の警報音が鳴る。山間を通るレールを走る電車が、三角屋根の愛らしいたたずまいの建物の前でゆっくりと停車する。こここそが五代が言っていた「ヤガ」の駅だった。

 久しぶりに訪れたものの、勝手知ったる様子でサクサク歩いて行く神崎先生。
 駅舎の外で辺りを見回す桜子さん。バス停を見つけて、そちらへ歩いて行く。

 バス停にはもちろん神崎先生が先についていて、バスの時刻表を見ている。小走りに駆け寄った桜子さんが、腕時計で時間を確認しつつ、時刻表に右手の人差し指を伸ばす。
 神崎先生は桜子さんには気づいていない様子で、バスの時刻表にスッと右手の人差し指を向ける。二人の指先が同時に同じ場所を指す。

 二人は指を引っ込め、思わずお互いの顔を見合わせる。神崎先生は何かに驚いたように声を上げ、もう一度時刻表を見直す。桜子さんが思わず神崎先生の顔を見る。

 時刻表には、上りも下りも朝と晩に2本、日中は1時間に1本あればいい方で、どちらにも予定がない時間帯さえある。
 神崎先生は自分の腕時計を見ながら大きなため息をつくと、どこかへスタスタ歩いて行ってしまう。

 神崎先生が向かったのはバス停近くの喫茶店だった。木の幹を縦割りにした大きな一枚板に「田舎ぜんざいあります」と筆書きで書かれた半紙が貼り付けてある。
 神崎先生は喫茶店に入っていく。桜子さんはその姿を目で追っている。

 喫茶店内。
 テーブル席に着いた神崎先生に、ご年配の女性が湯飲み茶わんに入れたお茶を出し、注文を確認する。神崎先生は田舎ぜんざいを注文した模様。女性が厨房の奥に注文を伝える。奥から返事が聞こえる。

 注文を伝え終えたところで、神崎先生が山部平(やまべだいら)に向かうバスがずいぶん減ったようだと女性に話しかける。神崎先生が驚いて声を上げたのは、そのことについてだったようだ。

 女性が人がいなくなったから、と穏やかに答える。昔のバス事情を知っていることを不思議に思ったのだろう、彼女は神崎先生に「こちらに住んでらしたの?」と上品に問いかける。勤めていたと答える神崎先生に、女性はそうですかとにこやかに微笑む。

 神崎先生は出された緑茶を口にして、息をつく。やや間を置き、「私ね……」とつぶやく。カウンターで作業をしていた女性が振り返る。神崎先生も女性に向け、意を決したように教え子に会うのだと話す。女性が戸惑いつつ相づちを打つ。

 13年前に6年生だった生徒だと神崎先生が言うと、微笑ましい話のようだと分かり、女性が今度は明るく相槌を打つ。
 しかし神崎先生は顔を戻して目を落とすと、心許ない表情で「でも、来るかな……?」と自問する。思っていたのと違う方向に話が転がり、女性は思わず「えぇ?」と声を上げる。

「来ないと私ね……教師を辞めなきゃならない」
 神崎先生はそう言って黙り込んでしまう。右手に湯飲みを持ったままの背中には、不安と哀愁がある。温もりを求めるように、左手を添え、両手で湯飲みを包み込む。

 神崎先生の時の移ろいへの寂しさと、五代雄介が果たして約束を守ってくれるだろうかという不安と、それが彼の教師としての進退を考えるほどに重い物であることetcを、湯飲みの中でゆったりと漂う茶柱の映像とBGMにより、情緒たっぷりに描き出すという手法に感嘆せざるを得ません。

 この話のメインは、あくまでも「子どもたちと先生との約束の重みってどれくらいなの?」なんだぞとハッキリここで示してくる製作サイドの肚の座り方、いつもながらスゴイです。

 一体どんな約束をしたのか気になりますが、その5に続きます!

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