記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

『仮面ライダークウガ』第10話感想

第10話 熾烈 (その5)

 武道場。入り口の扉が開き、みのりちゃんが中に入ってくる。その時、別の側の扉から、帰り支度が整った五代雄介が出て来て、「あれ?」と驚く。
 兄の顔を見て笑みを浮かべるものの、みのりちゃんはすぐに目を伏せてしまう。妹の様子に、何かを察する五代。

 東京タワーが見える公園の通路。ゆっくりと歩くみのりちゃん。少し離れて後ろをついて行く五代が、その背中に、どうしたんだと声を投げかける。名前を呼ばれ、みのりちゃんが足を止める。五代も同じように立ち止まる。

 あたしね、とみのりちゃんがぽつりと話し出す。「お兄ちゃんがクウガになるのは仕方ないと思ってた。けど……」
 言葉を止めた妹に「ん?」と短く問い返す兄。
 「けど、なんか、何となく怖いの!お兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなっちゃうような気がして……」と、みのりちゃんが一気に不安を吐き出す。
 妹の言葉を、静かに受け止める五代。みのりちゃんは抱え持ったリュックの生地を、ギュッと握りしめる。

 警視庁内。携帯電話の着信音が鳴る。通路を歩きながら一条刑事が電話に出る。かけてきたのは榎田さんで、第21号が現れた現場に残っていた緑色の破片から分かったことがあると言う。何ですかと問う一条刑事。

 榎田さんが淡々と説明する声が流れる中、物質についてのグラフや分析結果を記した文章などがスクロールしていく。
 画面が切り替わり、ノートパソコンで作業中の男性研究員の横で、結果をまとめた紙の資料を見ながら、立って電話をかけている榎田さんの姿が映る。さっきのスクロール画面はパソコンの物だったようだ。

 榎田さんの説明によると、緑色の物質は第21号が吐いた体液が燃えた物で、元の体液が別の物質に触れると爆発的な反応を起こす恐ろしいものだと言う。
 つまりイカ型グロンギが飛ばしていた黒くて丸い物は、爆弾ではなく、イカ墨っぽい体液なのだな。「体液が付着すると爆発」……恐ろしいというか……字面がなんかヤだな……。

 しかし、榎田さんは体液が付着すると爆発する仕組みこそが弱点ではないかと仮説を告げる。当然、食いつく一条刑事。

 イカ型グロンギのイカ墨……体液を生成する時には、280℃という温度が発生するため、一定間隔で体を冷やさないとホメオスタシスが保てない、と榎田さんが説明する。ちなみにホメオスタシスとは、簡単に言うと、生体における体内環境を一定に保とうとする働きだそうだ。

 目撃証言で、第21号が突然海や川に消えたというのはホメオスタシス(←知った言葉を私が使いたいだけ)を保つためであり、多分体のどこかに蒸気を吹き出す穴があるはずだ、と榎田さんが自説を述べる。
 一条刑事が、五代がそんなことを言っていたと告げ、榎田さんの仮説を裏付ける。
 そして、榎田さんがさらに仮説を述べる。蒸気を吹き出す穴は内臓と直結しているはずだから、体の表面よりは弱いと思う、と。
 超重要なヒントに、思わず息を呑む一条刑事。

 東京タワーが見える公園。うなだれた姿勢で、みのりちゃんがブランコに座っている。五代はというと、みのりちゃんとは別の砲口に体を向け、ブランコを囲む柵をまたぐように腰かけている。カッコいいのだが、色々危ないので、良い子も悪い子も真似をしてはいけない。
 黙ったままの兄と妹。

 「俺だって怖いよ」と、五代雄介がつぶやく。みのりちゃんがハッと顔を上げて振り向き、少し意外そうに「怖いの?」と問いかける。
 柔らかな笑顔でみのりちゃんを見ていた五代は、「怖いさ」と答えて立ち上がる。「ホントに?」とみのりちゃんがさらに尋ねる。五代はみのりちゃんの隣りのブランコまで歩きながらうなずく。ブランコの鎖を握ると、座り板を華麗に飛び越えて、そのままブランコに座る。何てカッコかわいいんだ、五代!

 みのりちゃんが「でもやるの?」と尋ねる。妹の問いを受け止め、兄はうなずく。妹は「どうして?」と重ねて問う。兄はゆっくりとブランコをこぎ出す。

 何度かブランコが往復した後、五代雄介は不意にみのりちゃんに問いかける。「お前はどうして先生やってんだよ?」
 突然の問いに、とっさに答えられず、みのりちゃんはうつむいて考え込む。五代は漕いでいたブランコをピタリと止め、みのりちゃんに笑顔を向ける。「誰かの笑顔のためだろ?」そう言うと五代は立ち上がり、ブランコから離れる。間を置いて顔を上げたみのりちゃんは、ゆっくりと五代の背中に目を向ける。

 五代は妹に背を向けたまま語りかける。「俺は俺の場所で、お前はお前の場所でやってるってだけさ」
 くるりと振り返った五代が、とびっきりの笑顔とともに左手の親指を立ててみせる。
 ブランコから立ち上がったみのりちゃんも、とびっきりの笑顔で力強く「うん!」とうなずき、右手の親指を立ててみせる。

 元気になったみのりちゃんが、五代の前に駆け寄る。「そうだ、お兄ちゃん、これ!みんなで作ったの」と言って持っていたリュックに手を入れる。
 誕生日プレゼントの言葉とともに、色とりどりの紙で飾られた、たくさんの手製のお守りが五代に差し出される。両手で受け取る五代。
 子どもたちが、冒険家でいつ帰るか分からない五代雄介のために作ったという。手作りのお守りを見て、五代が嬉しそうに微笑む。お守り一つ一つに、「けがしないで」「またいっしょにあそぼうね」などと子どもたちからのメッセージが書いてある。何て健気なんだ(´;ω;`)ウゥゥ

 五代が笑顔でみのりちゃんにお礼を言い、Gジャンの胸ポケットにしまう。何の陰りもない笑顔で、微笑み返すみのりちゃん。
 心境を新たにした二人のような、青い空。

 兄妹がトライチェイサーの前に来た時、まるで見計らったかのように無線の通知音が鳴る。緊迫した一条刑事の声が告げる。第21号が有明に出現したこと、第21号の弱点が腹部であること。何と端的。

 「分かりました」と端的に答え、五代はヘルメットを被るとトライチェイサーにまたがる。エンジンをかけ、みのりちゃんに「じゃあな」と別れのあいさつをする。ちょっとそこまで出かけてくるくらいのノリで。
 心が定まったみのりちゃんは、五代にうなずき返すと、笑顔で「気を付けてね」と言葉をかける。五代はお守りを入れた胸ポケットに触れ、トライチェイサーを発進させる。
 走り去るトライチェイサーを、みのりちゃんは明るい笑顔で見送る。

 江東区内・有明。午後4時になろうというところ。
 爆発音が響き、覆面パトカーが燃え上がる。退避を命じる声、逃げ惑う警察官や刑事たちの悲鳴が上がる。
 怪人体のイカ型グロンギが、グロンギ語で話しながら歩いてくる。「本日は私のためにご足労頂きありがとうございます」と言っていないことだけは確かだ。

 警官たちが逃げ去ろうとする方向から、何かがやってくる。鳴り響くバイクの走行音。
 イカ型グロンギが狙いを定め、口元に手をやったその時!燃え盛る覆面パトカーの後ろから飛び上がる、一台のバイク!もしかしたらもしかして⁉

 驚いて見上げるイカ型グロンギ。飛び上がったバイクはそのまま前輪をイカ型グロンギの胸にぶち当てる!表皮が頑丈とはいえど、当たった衝撃の大きさに耐え切れず、イカ型グロンギが地面に倒れて転がる!

 バイクが着地して止まる。バイクはもちろんトライチェイサー、乗っているのはもちろん我らが五代雄介!
 五代は素早くヘルメットを脱いでグリップにかけながら、左足をステップに乗せて勢いをつけ、地面へと飛び降りる。
 え?何だか分かんない?つまり、両手を使わずにトライチェイサーから降りたのだが……それが何とも五代雄介にしかできないような動きなので、是非とも映像で見てほしい。TTFCに入会すれば、クリアな映像で何度でも見られますぞ!(ダイレクトマーケティング)

 イカ型グロンギが起き上がり、短くグロンギ語で呟く。
 五代雄介が自らの腹の上に両手をかざすと、ベルトが現れる。ベルトの真ん中の丸い宝玉の色は紫である。五代が「変身!」の掛け声とともに、ポーズを取る。
 イカ型グロンギが、クウガに変身する前に倒そうと、急いで口から体液を飛ばす(←ホントこの表現、何だかイヤだわ……)。
 体液が着弾し、爆音とともに大きな炎が上がる。果たして変身は間に合ったのか⁉

 一瞬ののちに炎が消える。そして、そこには上半身に鎧のような銀色の装甲をまとったクウガの姿。装甲にはベルトの宝玉の色と同じ紫色のラインが入り、仮面の目の部分も同じ紫色に変わっている。新しいフォームのお披露目だ!カッケェェェェ!!!!!

 笑顔で道を走るみのりちゃん。向かった先は……わかば保育園!保育園の庭にいた園児たちが、みのりちゃんの名前を呼びながら駆け寄って来る。その愛らしく元気な姿に目を細め、みのりちゃんも園児たちに駆け寄る。

 江東区・有明。紫色のクウガが、トライチェイサーのグリップを素早く外して、握りしめる。するとグリップは紫色の刀身に金の装飾が施された剣に変わる。
 クウガが切っ先を下げて「行くぞ!」と気合を入れると、何と剣の先端がさらに伸びて長剣となる。ゆったりと踏み出したアスファルトには、変身直後に着弾した痕跡らしき穴が空いている。穴からは蒸気が立ち昇り、そこから四方八方にヒビが伸びている。
 そんなえげつない高温と威力を持つイカ型グロンギの体液が何発も飛んでくる中、紫のクウガは避けもせずに自然体の構えでゆったりと前進する。

 わかば保育園。園児室で園児たちと向き合い、元気いっぱいに手遊び歌をするみのりちゃん。

 江東区・有明。イカ型グロンギの攻撃による炎と煙の中、淡々と進む紫色のクウガ。

 わかば保育園。満面の笑顔で、園児たちと『大きな栗の木の下で』を身振り手振りをしながら歌うみのりちゃん。

 江東区・有明。緩めることなく、かと言って早めることもなく、真っ直ぐにイカ型グロンギに歩み寄る紫色のクウガ。
 イカ型グロンギは体液を放って攻撃し続けるが、いよいよクウガが間近に迫ってくる。
 焦りを感じたイカ型グロンギが、至近距離から攻撃する。しかしクウガは、恐るべきことにそれを左手で受け止める!えええええ⁉

 イカ型グロンギはクウガの予想外の行動に驚いたのか、それとも体を冷やさなければならないタイミングが来てしまったのか、短く叫び声をあげる。
 その隙を逃すクウガではなく、雄たけびを上げて剣の向きを変えて、前へと力いっぱいに突き出す。剣がイカ型グロンギの腹から背中へと貫通した瞬間、炎と煙が上がる。イカ型グロンギが悶え苦しむような声を上げる。

 剣の黄金色の装飾から貫通した傷口へと進入したエネルギーが、イカ型グロンギのバックルのような装飾へと伝わる。固いものにヒビが入るような音が鳴り、ついにはイカ型グロンギの体が炎を上げて粉々に吹っ飛ぶ。

 クウガがイカ型グロンギに歩み寄って倒すまでのBGMが、人知れず行われる一騎打ちという風情で、スローテンポで哀愁があるエレキギターがメインの楽曲なのが実に渋くてカッコ良くて、心に沁みる。

 イカ型グロンギの姿が影も形も失ったのを確かめた後、ようやくクウガが剣を下ろす。
 傾いてきた太陽とクウガを見上げるようなカメラのアングルを合わせて、暗すぎない逆光とヒーローらしい輝きとを両立させてるのがさすがである。

 ひと時の平和を取り戻した空には、穏やかな夕日に染まる雲。

 その空の下、わかば保育園の園庭を笑顔で走るみのりちゃんと園児たち。

 クウガのマークが現れ、その背景が紫色に変わる。

 以上、第10話本編となります。

 サブタイトルに偽りなく、様々な〈熾烈〉が描かれていましたね。
 クウガとイカ型グロンギ、警察とグロンギたちの手に汗握る攻防と同じくらいに描かれていたのは、兄と妹、それぞれが心に定めた熾烈な覚悟でした。

 第10話では特に、園児同士のケンカがエスカレートしていく場面で、子どもに関わる仕事の難しさと厳しさが描かれています。どのタイミングで動き、どのように子どもを守るのか。覚悟がなければ見極めができません。

 グロンギたちの殺戮から人々を守ることも、子どもたちと全力で向かい合うことも、「誰かの笑顔のため」にそれぞれが選んだ道なのです。

 他にも、グロンギたち同士(というか、第3号とそれ以外)の内輪もめとか、サイ型グロンギとミカド号とか(泣)、一条刑事大好きな女性警察官の心の内とか、おやっさんと謎の若い女性とか、細かいけど熾烈な争いがありましたね。

 クウガの新形態と新しい武器、新キャラ登場の予感とか、さらに熱くなりそうな予感の第11話やいかに⁉

 ……ええと、更新は遅めですよ~とは申しておりましたが、まさか第9話の感想から2年以上経過するとは……。自分でもビックリ( ゚Д゚)です。
 いい意味でずっとバタバタしていて、ようやく色々落ち着いてきました。
 今後も不定期になろうとは思いますが、遅くても月単位くらいで続けていけたらなと思います。
 海のように深く広いお心で、お付き合いいただければ幸いです。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?