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『仮面ライダークウガ』第10話感想

第10話 熾烈 (その3)

 まだ第10話だから捕まるまいとは思いつつも、手に汗握った警察の突入作戦。グロンギたちはどこに姿を消したのか?イカ型グロンギは無事に合流できるのか?

 豊島区内・わかば保育園。午後1時45分過ぎ。
 園児が『桃太郎』の絵本を音読する声が流れる。年長さんだとしても、相当に上手である。
 画面には、絵本の中、桃太郎一行が鬼のアジトに乗り込もうとするページが映っている。この時まさに、一条刑事たちがグロンギのアジトに乗り込んで行方を追いかけているので、タイムリー過ぎる。

 視点が絵本から保育園の園児室に変わる。『桃太郎』を二人の女の子が代わる代わる読み上げている。二人の前にはみのりちゃんが座っている。自分の膝の上に頬杖を突き、女の子たちを優しく見守っている。

 別の一人の女の子=りさこちゃんが、棚の上に並ぶたくさんの絵本の背表紙を見ながら、『花さかじいさん』の絵本がないとつぶやく。
 すると、本を見ていた男の子=ひろ君が顔を上げて「しゅうと君が見てたよ」と教える。りさこちゃんが困った様子を見せると、ひろ君が「取ってきてあげようか」と持ち掛ける。「ホント?」と喜ぶりさこちゃん。
 ひろ君が意気揚々と「だって僕4号だもん」という声に、みのりちゃんがハッとしたように頭を起こし、ひろ君の動きを目で追う。

 ひろ君は立ち上がり、『花さかじいさん』を読んでいる男の子=しゅうと君に、その本を貸してと話しかける。
 今は読書タイムのようで、部屋のあちこちで、園児たちがそれぞれ自分の好きな本を読んでいる。
 読んでいる真っ最中のしゅうと君は、憮然とした顔で「イヤだ」と言って絵本を背中に隠す。ひろ君が「次はりさこちゃんの番だよ」と続ける。その様子を微笑ましく見守るみのりちゃん。

 自分は4号だと言ったひろ君が、まずは相手に説得を試みた点が、確かに五代雄介っぽくて、みのりちゃんが思わず笑ってしまうのもうなずける。
 しゅうと君が、自分が読んでいた本をいきなり寄越せ貸せと言われて、とっさにイヤだと言って取られないように隠してしまうのも、感情の成り行きとして自然である。
 大人でもこじらせることがあるのに、幼児同士である。穏便に解決するだろうか。

 ひろ君は、次はりさこちゃんの番だと言い張り、しゅうと君から絵本を取り上げようとする。しゅうと君にとっては理不尽な話なので、絵本を渡すまいとする。絵本を引っ張り合い、怒鳴り合う二人。
 揉めた原因となってしまったりさこちゃんが、困ったようにみのりちゃんにすがりつく。

 実は『桃太郎』の音読がずっと続いていて、男の子たちがもめる直前で「めでたしめでたし」でちょうど読み終わるのだが、こんなエッジが効いたこと、誰が思いついたんだろう。
 製作サイド、色々冴え渡り過ぎである。

 りさこちゃんをチラリと振り返り、みのりちゃんが優しく「こら、やめなさい」と男の子たちに声をかける。子ども同士の揉め事も、心の成長過程には必要なことなので、大人がいきなり割って入ったりしないのだ。
 しかし、男の子たちは絵本の取り合いに夢中で、みのりちゃんの声は届かない。引っ張り合いの末、しゅうと君の手から『花さかじいさん』が離れてしまう。

 しゅうと君は様々な感情が収まらず、ひろ君の体をぺしりとたたいてしまう。ひろ君も反撃して叩き返す。しゅうと君が「いてぇな」とさらに叩き返す。
 お互いに手を出し合ってしまって、収拾がつかない。見守るべき限度を越えたと判断したみのりちゃんが、すっくと立って、二人のそばに近づく。

 たたき合いはどつき合い、蹴り合いになっていた。みのりちゃんは男の子たちを引き離しつつしゃがみこみ、少し強めの声で二人を制止する。
 しかし、ひろ君は怒りが収まらぬ様子で『花さかじいさん』を両手で持って頭の上に振り上げる。それに気づいたみのりちゃんが鋭く叱りつける。振り下ろされる絵本を片腕で受け止めたみのりちゃん。一瞬だけ痛みで顔をしかめたものの、すぐに立ってひろ君の腕を取り、そのままひろ君の体の向きを変えて背後からその両腕を押さえ、「止めなさい!」と叱りつける。

 これまでは、どちらかと言えば静の印象が強いみのりちゃんの、先生としての厳しさが現れた場面。ハードカバーの表紙で叩かれていたので、相当痛かったと思う。背表紙じゃないだけマシだけど……。
 絵本でたたかれた後、ひろ君の腕を取って押さえる動きは「さすが五代雄介の妹」と思わせる、自然で滑らかなものだった。

 それはそれとして、自分は4号だと言ったひろ君の行動が一方的で高圧的であり、最終的には感情をコントロールできずに暴れてしまうの、色々な「もしも」を想像させる。
 目の前でコレを見ていたみのりちゃん、もっと不安が倍増しそう。

 午後2時ごろ。港区内・大きな陸橋(レインボーブリッジ?)が見える港近くの広場。
 レンガ造りの高台のへりに座り、足をブラブラさせている五代雄介。その下の遊歩道に立つコート姿の一条刑事。
 ロングショットで捉えた構図が絵になり過ぎて、ずっと見ていられる。(実際、静止画面にして10秒くらい見つめてウットリしていた)

 一条刑事が、五代に「あの倉庫は奴らのアジトだった」と告げる。そして五代に向けて「これが遺留品だ」と言いつつ手に持っていたものを見せる。
 五代が受け取ったのは、遺留品を撮影した何枚ものポラロイド写真だった。一枚一枚めくっていた五代が、ある写真を見て動きを止め、じっと見つめている。一条刑事がどうしたと声をかける。

 五代が見ていたのは、グロンギたちが置いて行ったボードの写真だった。「何か数えてんのかな?コレ」と言い、一条刑事に手渡す。一条刑事もじっとボードの写真を見つめる。五代は違うかな?と独り言を言う。さすが2000の技を持つ男!どの技を使ったか分からないけど、多分その通りだぞ!

 一条刑事が写真から目を離し、五代を見上げながら第21号について尋ねる。五代の雰囲気が真剣なものに変わる。BGMが入り、五代の真剣さがより強く伝わる。
 イカ型グロンギの爆撃を受けた肩に触れながら、「強かったです」と冷静にはっきり言う五代。「俺にとどめを刺しかけた時、腹から蒸気を出して逃げたけど……」と続けた五代の言葉に、考え込む一条刑事。

 高台から身軽に遊歩道へと着地した五代は、爆発があるから前からの攻撃はダメだとか、後ろは衝撃を吸収する体だとか、イカ型グロンギについての分析を一人ぶつぶつと呟いている。
 五代が攻略法を考える様子を通して、イカ型グロンギの特徴をまとめて視聴者に教えてくれる、いつもの親切設計である。ありがとうございます!

 考え込んでいた五代が、はたと閃いて顔を上げる。「そうだ、剣!」
 それまで五代を黙って見守っていた一条刑事が、突然出てきたワードに思わず「剣⁉」と聞き返す。
 五代が一条刑事の方を振り返り、熱弁を振るう。桜子さんが言うには、クウガにはまだ別のタイプがあって、それは剣を使うのだ、と。
 五代は考え、一つの結論を出す。「剣なら、何とかなるかもしれない」

 晴れた空、きらめく水面、そよぐ風……音声消したらただのお台場デートにしか見えないくらい、絵になり過ぎる五代雄介と一条刑事。
 いやあ、眼福眼福。

 園児の音読やケンカで、警察やクウガ対グロンギたちの戦いを連想させるというアグレッシブさが光る作劇に脱帽です。
 お台場デート……もとい、イカ型グロンギについての一条刑事との意見交換で五代が考え付いた、剣を使った戦い方とは何なのか?
 ということで、その4に続きま~す!

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