一度は見たことのある古き良き日本の風景に欠かせない<建仁寺垣>ひと筋。__肥後竹材

はじめまして、熊本県竹産業振興会です。
熊本の竹の魅力をみなさんにお伝えすべく、熊本県内の竹事業者のみなさんのところへ潜入取材いたしました。これをきっかけに、一人でも多くの人に竹の素晴らしさが伝わりますように。

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<建仁寺垣>をご存知でしょうか?竹垣の一種で、四つ割竹を垂直に皮を外側にしてすきまなく並べ、竹の押し縁(ぶち)を水平に取り付け、しゅろ縄で結んだものを指します。京都の建仁寺で初めて用いた事でこの名前が付いたそうです。その<建仁寺垣>の材料を生産しているのが、球磨郡あさぎり町にある『合資会社 肥後竹材』です。

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今回お話を伺ったのは代表の久保尚人さん。

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ロック好きという久保さんの事務所では、取材中もエアロスミスやローリング・ストーンズが流れていました。

『肥後竹材』は、久保さんの父が昭和46年に創業。久保さんは昭和60年に入社し、平成8年に代表になった2代目になります。

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以前は生産する品目も多く、垣根材以外にも私たちにも馴染みの深い竹のあみ針や、農家のビニールハウスの割竹なども作っていたそうですが、今は<建仁寺垣>に特化しています。

「建仁寺垣は京都あたりからの注文があります。京都以外でも、宿や料亭の周りにある竹垣があるじゃないですか?その材料を生産して出荷しているんです。しかし現在はプラスチック製の竹垣が主力になってしまい、以前よりも販売自体は下降しています」。

私たちが一度は目にしたことがある竹垣も、時代とともに洋風の建物が増えるにつれて、減ってきているのが現状です。

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しかし、竹特有の存在感や雰囲気、自然環境にも配している事から、いまだに根強いファンがいることも事実です。

「プラスチックでは出ない色合いや経年変化。これらを楽しめるのは竹じゃないといけないと思います。竹は成長が早く山でグングンと育っていくわけですから、放って置いたら放置竹林になってしまうんですよ。だから竹山をきれいにするために竹を伐採する事は、自然環境のことを考える事とイコールなんです。社会のためにこの仕事をやっていて良かったと、心の底から思いますよ」。

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しかし、現実問題、課題は山積み。竹専門の業者が今はほとんどおらず、久保さんは宮崎県に2時間かけて仕入れに行っているそう。

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肥後竹材は現在社員1名、パート1名の二人三脚。前述した建仁寺垣と同様、竹を板状にするさまざまな依頼も受けているそうです。

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早速作業を見せてもらうと、そのどれもが感覚と長年の技を駆使した工程ばかりで驚きました。4メートルほどある竹を規定の長さにカット。板状にする機械で縦にし、専用の釜で煮沸。この煮沸により、竹の中に入っている微生物を排除したり、竹表面の油分を取り除きます。その後表面をブラッシングし、夏は一週間、冬は二週間ほど干します。

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竹の三面を削る機械で形を整え、防虫・防カビ剤の薬液剤にどぶ漬けし、乾燥機にかけてようやく完成です。完成したものは等級別に選別し、出荷します。

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今後について聞いてみると、「厳しいことには変わりませんが、小さなことでもやり続けるということが一番大事だと思っています。竹の魅力や存在意義に気づく人が一人でも増えたらいいですね」と、にこやかに返してくれました。

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合志会社 肥後竹材(ひごちくざい)
球磨郡あさぎり町免田東4784
0966-45-1836

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