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第4章 科学的知見によるイメージの再構築:「特別展 恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造」 見聞録 その04

2023年04月29日、私は兵庫県立美術館を訪れ、一般客として、「特別展 恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造」(以下同展)に参加した([1])。

1960~70年代にかけて、「恐竜ルネッサンス」ともよばれる大きな変革がもたらされた。「鈍重な生き物」から「活発に動く恒温動物」へと恐竜像が変化したことに伴い、恐竜画もさらなる進化を遂げ、新しい表現のアーティストが次々と登場してきた。

「第4章 科学的知見によるイメージの再構築」([2])では、マーク・ハレット(以下敬称略)、ウィリアム・スタウト、ダグラス・ヘンダーソン、スティーブン・ツェルカス、および、グレゴリー・ポールなどによる恐竜絵画が展示された。各作品のほとんどは、インディアナポリス子供博物館や福井県立恐竜博物館のコレクションである。なお、いずれの絵画も撮影不可であった。

一方、小田隆の絵画が展示されたが、いずれも撮影可能であった。小田の絵画は最新の科学的知見に基づいているだけでなく、恐竜が生きていた時代の躍動感も感じさせる(図04.01~04)。

図04.01.134.小田隆(1969– )。
追跡 1。
2000–01年、アクリル・紙、90×145 cm、群馬県立自然史博物館。
図04.02.135.小田隆。
饗宴。
2000–01年、アクリル・紙、90×145 cm、群馬県立自然史博物館。
図04.03.138.小田隆。
篠山層群産動植物の生態環境復元画。
2014年、アクリル・カンヴァス、115×160 cm、丹波市立丹波竜化石工房。 
図04.04.上から、
142.小田隆。
ティラノサウルス上科骨格。
2013年、ペン・紙、35×50 cm、丹波市立丹波竜化石工房。
141.小田隆。
ティラノサウルス上科生体。
2013年、アクリル・紙、35×50 cm、丹波市立丹波竜化石工房。

徳川広和による模型には現実感がある(図04.05~06)。

図04.05.144.徳川広和(1973– )。
篠山層群ティラノサウルス上科。
2015年、石粉粘土、25×55×13 cm、丹波市立丹波竜化石工房。
図04.06.145.徳川広和。
シノサウロプテリクス。
2022年、石粉粘土、50×30×10 cm、徳島県立博物館。

そして、徳川と荒木一成によるイグアノドンの復元像の変遷は、恐竜に関する科学的知見の蓄積が進展していることを示すものである(図04.07)。

(a)    おさらい。
(b)146.荒木一成/フェバリット。
水晶宮に展示されたイグアノドンの模刻(ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズによる)。
2003年、樹脂、10.5×26×8.5 cm、作家蔵。
19世紀前半の知見に基づく。
(c)147.荒木一成(1961– )。
イグアノドン、クラシックスタイル。
2002年、石粉粘土、25×10×18 cm、作家蔵。
20世紀半ばの知見に基づく。
(d)148.徳川広和。
イグアノドン。
2010年、石粉粘土、19.5×34×7 cm、作家蔵。
21世紀の知見に基づく。
図04.07.イグアノドンの復元像の変遷。

図04.07のイグアノドンの復元像が示す通り、研究が進展するにつれて、科学的知見は更新されるものである。このことを念頭に入れておけば、ニセ科学に騙されにくくなるだろう。


参考文献

[1] 株式会社 産業経済新聞社,株式会社 フジテレビジョン,公益財団法人 日本美術協会 上野の森美術館.“「特別展 恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造」 ホームページ”.https://kyoryu-zukan.jp/,(参照2023年05月03日).

[2] 株式会社 産業経済新聞社,株式会社 フジテレビジョン,公益財団法人 日本美術協会 上野の森美術館.“展示構成”.「特別展 恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造」 ホームページ.https://kyoryu-zukan.jp/exhibition/,(参照2023年05月06日).

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