「ある人事コミュニティーで出禁になり、コミュニティーマネジメントの難しさを感じた話」(前編:戦略人事編)

はじめまして、限界コンサルタントです。

最近、社外に人脈をつくろうと思い、さまざまなイベントやコミュニティーに顔を出しています。コミュニティーとは、同じような目的や問題意識を持った人が一緒に勉強したり、人脈を広げたりするような場です。

今日は、そういう同じような目的や問題意識を持った人が集まる場で、私自身が出禁になってしまったという話ができればと思います。

私自身の行動がそのコミュニティーにとって頂けなかったということは理解しておりますし、反省しております。ただ、私にもちゃんと伝える場が欲しかったですし、また、出禁になって気づきを得たので、少しでも言葉にできたらと思い初noteをしたためている次第です。
(遠くから、批判するなら論を立てて主張しろと言われたような気がしたので、、、苦笑)

この記事では、大きく2つのことに触れたいと思っています。

1つが、そのコミュニティーで提供されたコンテンツに対する私の見解
(戦略人事編)

もう1つが、コミュニティーのマネジメントって難しいぞって話
(コミュニティーマネジメント編)

読み返して思ったのが、長いです(6,000字弱ありました)。
もし、コミュニティーマネジメント編にのみ興味がある方は、こちらをおすすめします。

1つ目の「コンテンツ」についてです。

私が参加していたコミュニティーは、人事担当者向けに心理学などを学ぶ場でした。私は、組織人事のコンサルティングをしている身です。同年代のコンサルタントが戦略人事をどのようにまとめているかに非常に興味があり、大きな期待を胸に参加しました。

ただ、そこで提供されたコンテンツは「実務経験は無いけどよく勉強している学部生(院生ではない)の発表」レベルだったのです。

理由は以下の3点です。

【理由1】正しくない(一番、問題だと思っています)
・雇用システムと採用手法を一緒くたで理解しており、日本と欧米の雇用システムの違いである「メンバーシップ型」と「ジョブ型」を採用手法の違いとしてとらえていた
(詳しくは、独立行政法人労働政策研究所・研修機構の濱口圭一郎さんの著書をご参考ください)

・日本でジョブ型の採用(中途採用?)を選択しても、採用された人が無限定正社員であることには変わらず、欧米のようにやめさせることが難しいということを理解できていなかった

(参考)人材マネジメントの大家である守島先生もパーソル総合研究所の機関紙の中で、「日本の企業の場合は、労働市場が脆弱であり、また法的な規制などもあり、そこまでドラスチックに入れ替えるのは難しい面があります」と日本の雇用制度の中でのタレントマネジメントをどうすべきかを語っています
https://rc.persol-group.co.jp/research/hito/files/hitovol10.pdf

【理由2】理解が浅い(概念の整理ができておらず、実務・経験の面からも整理されていない)
・インターネットで検索すれば分かることの寄せ集めとなっており、具体的に何を言っているのかが分からなかった

・印象的だったのは、「組織は戦略に従うが、戦略は組織に規定される。しかし、出発点は戦略であり、それは社長の思いだ」という発言。今、振り返ってみても何を言っているかが分からない

【理由3】示唆がない
・さまざまな本から寄せ集めた内容のままで終わってしまっており、そこから導出される自分の意見が見えなかった。全体を通して、「それで、結局、何が言いたかったの?」となってしまった

【理由1】は、なぜ?本当に?に答えておらず
【理由2】は、具体的には?に答えておらず
【理由3】は、要するに?に答えていない

つまり、コンサルタントとして適切なアウトプットになっていないかったということです。

通常であれば、開始10分ぐらいで抜けるのですが、参加人数が10人程度の勉強会(ディスカッション中心)だったため、抜け出すこともできず2時間ただただ苦しい時間を過ごしておりました。

その時の私の態度に「あちゃー、それは間違ってるよ」「いやいや、それは違うでしょ」というのが出ていたようで、勉強会後に運営側から「行動改善を求めます」と個別にご連絡を頂きました。心当たりはありましたので謝罪はしたものの、コンテンツに関してフィードバックをしたところ「今後、一切の参加を拒否します」とご返信を頂きました。

ここで謝罪して終わりにしておけば良かったのですが、コンテンツに対してフィードバックをする、挙句にnoteを書き出す。本当に自分が人間として成長してないなと感じています。

ただ、私も人事のコンサルティングをやっている身。ここで、内容が稚拙だった!と言うだけではレベルが低いので、私なりの戦略人事についてまとめたいと思います。

【戦略人事を語るうえで大切なこと】
・戦略人事では「施策の一貫性」も重要だが、それ以上に「戦略貢献の設計」が重要である

彼(プレゼンをしてくださったコンサルタント)は、勉強会の中で「会社がメンバーシップ型の採用を選択した場合、他の人事施策はどのように設定するべきか?」という問いを立てました。彼の世界観では、戦略人事とは「人事施策の一貫性」を指しているようです。

そもそも戦略人事を、「人材を用いて、どのように戦略(もしくは事業)に貢献するか?」と位置付けた場合、人事がどのように戦略を理解しているかが大切になります。

戦略人事の草分け的存在である八木洋介さんは、金井壽宏先生との共著である「戦略人事のビジョン」の中で「戦略性のマネジメント」と「継続性のマネジメント」に触れております。いかに人事施策に一貫性があったとしても戦略に基づく一貫性がなければ、意味がありません。彼が立てた問いである「新卒を中心としたメンバーシップ型の採用」は、まさに「継続性のマネジメント」そのものです。どこにも戦略人事の要素が見えません。

そこで、実際に戦略人事に取り組む場合、最初にすることは、“戦略の解像度”を高めるということです。どのように戦略を実行していくのか?を理解しないままでは、人事として戦略への貢献方法を設計することはできません。

戦略貢献の設計をしたうえで、一貫した人事施策を立案し、実施していきます。この辺りは、書き出すと終わらなくなってしまうので、参考として、三枝匡さんの「V字回復の経営」をおすすめします。戦略人事をまなぶうえでも非常に気づきの多い1冊です。

・戦略人事の2つのアプローチ
また、戦略人事には「外科手術的なアプローチ」「漢方治療的なアプローチ」の2つのアプローチがあると思っています。

これは、彼がプレゼンの中でも取り上げていたアルフレッド・チャンドラーとイゴール・アンゾフの「組織は戦略に従うのか?」「戦略は組織に従うのか?」の命題に対応したアプローチです。

私なりに彼らの主張をまとめると、

組織“構造”は、戦略に従う(=どのような組織にするかは戦略次第)

戦略“オプション”は、組織“能力”に従う(=どのような戦略を選択できるかは、組織の構成員(量・質含む)や組織プロセスに起因する)

です。

組織構造に対するアプローチが「外科手術」であり、
組織能力に対するアプローチが「漢方治療」になります。

「外科手術的なアプローチ」での具体的な取り組みは、
・新組織の各ポストに誰をつけるか
・既存ポストの社員にどう降りてもらうか

「漢方治療的なアプローチ」での具体的な取り組みは、
・組織学習をどう促すか
これまた戦略人事の大家である高橋俊介さんが10年前ぐらいに「20世紀のキャリア論」の中で指摘していますが、以前に比べ現代では「専門性の細分化・深化」が加速度的に進んでおり、同時に、人材と働き方がますます多様化してきています。
そのため、これまでの「男性中心」「年功序列」「超長時間労働」による組織学習は機能しなくなっています。

上述の内容が、私なりの戦略人事のまとめです。

また、そこで必要となる戦略人事の人事スキルは以下の3つだと思っています。

1. 法律を盾にしたハードなイグジットスキル
2. ジャストインタイムでの採用力
3. 異質なものを統合し、組織学習を加速させるファシリテーションスキル

Twitterを眺めていると「労務の価値」を低くとらえている人が多いように感じますが、日本型の戦略人事を進めるうえで「1」のスキルを持っているかいないかはとても大きな違いになると思います。そういう意味で、「労務の価値」にもっと光が当たることを願っています。

と、ここまででも3,000字。だらだらと文字を積み上げてしまって申し訳ない気持ちです。
そこで、後編を分割したので、コミュニティーマネジメントの難しさについては、こちらをお願いしいます。

限界コンサルタント

【参考図書】


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