⑼目標設定

府中「ここまでは情報収集と課題分析をし、計画に落とし込むための思考過程を可視化するためにアローチャートを作成しました。実際の計画について考えていきましょう。」

竹松「実際に日々の練習に落とし込んでいくんだな?」

府中「はい。まずはサッカー部としてこれからどのようにしていきたいかですね。先ほど全国大会優勝というのが夢とおっしゃっていました。そこに向けて目標を立てていきますか?気になることは今の時点では全国大会優勝は、夢のまた夢であることです。まずは東京都の予選を勝ち抜け、東京都の決勝トーナメントで優勝し、全国大会の切符を獲得。そしてそこからは全国の強豪と戦って勝ち続けなくてはいけないんですよね?」

竹松「そうだ。そしてうちのサッカー部は近年、東京都都大会の予選で敗退している・・・。」

府中「先生は目標は一度決めたら、絶対に変えてはいけないものだと思いますか?」

竹松「一度決めたことを変えることには抵抗がいるのは事実だ。でも正直、今のチームの実力で全国大会優勝はどう頑張っても無理だ。まずは東京都都大会で優勝を目標にしよう思う。」

府中「では目標としては、試合に勝てる強いチームを作り、東京大会で優勝したいという目標にしましょう。次はそのためには予選を勝ち抜くということです。そのためには強いチームを作ること、試合に勝てるチーム作りをする事です。具体的な目標と設定をしていきましょう。アローチャートを見ながら考えていきましょう。全体の目標としては東京都大会に出場し、優勝する。そのためには良い選手が来るための実績をつくる。そのためには試合に勝つ。試合に勝つために得点を取る。失点をしないようにする。を挙げます。まずは得点を取りたいという願いを阻害している要因を解決するためにはどうしたらいいかを考えていきましょう。シュートの本数を増やすにはどうしたらいいか?決定力を上げるにはどうしたらいいか?という長期的な目標に対して、短い期間での目標と具体的な手段を考えるとしたらどうなりますかね?ポイントとしてはも点が入らないという客観的事実に入る矢印を遡って考えていき目標設定できそうな項目を探してみてください。」

竹松「そうだな。まず、シュート数については攻めることができればシュートまで持っていける可能性が高いから、90分間走り切れるチームになれば、マイボールの時にサポートに入るために走ることができる。そのためには毎日の練習に耐えられる体力を作る。という目標にしてみてはどうかな?具体的な手段としては、週3回の練習を5回に増やす、加えて練習後に100Mダッシュを15本行う。」

府中「いいですね!決定力を上げるにはどうすればいいですか?」

竹松「決定力はとにかくシュートの精度が必要だ。精度を上げるには技術を上げればいい。技術を上げるには練習あるのみ。これも練習量を増やすことが一つの短期目標かな。」

府中「なるほど。どちらも原因を探っていくと練習量の低下からきているという分析になっていますね。具体的な練習内容は後でキャプテンや他の選手と相談が必要になりますが、次に失点をしないようにするためにどうしていくか?について考えていきましょう。」

竹松「この図を見ると本当にわかりやすいな。失点をしないようにするにはマイボールの時にミスをしなければ相手は責めれない。また相手ボールの時も守備がしっかりしていれば攻められないから失点につながる可能性が低くなる。」

府中「ここは悪循環になっているんでしたよね。ミスをしてしまうのはモチベーションが低いから練習が足りなくて技術不足から連携がうまくいかない。連携ミスから失点につながる。ここの部分を対処するための目標はどんなものが上がりそうですか?ここは長期目標と短期目標という形で明確にしましょうか。長期目標としては、□につながっている失点が増えるに対する対処なので[失点せずに試合を終えられる]としましょう。そのための短期目標はどんなことが挙げられそうですか?」

竹松「守備力を上げることと、連携ミスを防ぐための技術を上げることが今できることかな。モチベーションは上げようと思って上げることができなそうだ。」

府中「先生、いいところに目をつけましたよ!モチベーションに対して、今の時点では対処は難しいですよね。おっしゃりる通りでモチベーションを上げるためには選手の気持ちを変えなければいけないのですが、それって気持ちの問題なので簡単なようで、難しいんです。だから短期目標を決める時には①主体的にできること②少し背伸びした目標③評価できるということを意識すると良いと父が言ってました。そこを目標にして取り組んでいくとモチベーションも徐々に上がっていくということになるかもしれません。悪循環で取り組めるところから対処していったことで好循環になるということですね。」

竹松「なるほどー。残す□は実績×についている□だがここはどうしたらいいんだ?」

府中「ここに関して、実績が過去にないことは事実として変えることができないんですよね。なので対処ができない。でも優勝するためには実績を作っていき優秀な人材が必要であるとことに対して、実績をこれ以上悪くしない必要があると考えましょう。これはこれで一つの目標として必要だと思います。」

竹松「短期目標として今以上に実績を下げないという目標を掲げるってことだな。。結構なプレッシャーだな。」

府中「さて、アローチャートを見ながら目標設定をしてきました。目標を立てる時に気づいたことはありませんか?」

竹松「気づいたこと?そうだなー。目標を考えるときに客観的事実を見ながら、それに対する解決策を考えていくことか?」

府中「そうですね。それもそうなんですけど、矢印の向きとかはどうでした?」

竹松「矢印の向き?目標を考えるとき、まずは□があって、それを達成するためにはくっついている◯への対処を考えていて・・・・そうか!目標を考える時に矢印の向きとは逆の方向に遡って対処できないか考えた!」

府中「そうです!矢印の説明の時に、矢印には時間の流れがあると話しました。結果には原因がある。そこの時間の流れを→で表していたわけです。分析をするときに時間を遡って推論をしていたわけですが、目標を作る時にも同じように時間を遡って、チームが主体的に行える素材はあるか?検討していきます。これで目標設定の草案ができました。これをもとにキャプテンと各ポジションのリーダーと相談していけば良いと思います。」

府中「これをやってくれって感じで持っていくのはダメなのか?」

府中「答えはNOです。ここで作ったアローチャートはあくまで仮説でこれをもとにみんなで話し合い、その上でチームの目標として掲げていかなければ、目標が一人歩きしてしまいますよ。父はそのことを合意形成(コンセンサス)と言っていました。」

 


さて、アローチャートを作成し、その思考過程と主観的な事実をもとに計画原案を作成する段階に入りました。

□の主観的事実は本人の願いとなるので居宅計画書の解決すべき課題の部分になります。本人の願いですね。それを解決できれば願いが叶うということです。

そして、その願いを阻害している原因を長期目標とします。

この□ギザギザ○の部分をN構造と呼びます。NはニーズのNです。居宅サービス計画書の[生活全般の解決すべき課題]の部分ですね。

解決すべき課題ということは、それを解決すれば困りごとがなくなる=願いが叶うということです。

願いと困りごとはセットで考えるということです。願いを阻害している困りごとを解決することが長期目標となります。長期目標はLG(ロングゴール)と呼びます。

続いて短期目標ですが、設定するにあたり気を付けるポイントは3つ。

①主体的にできること

②少し背伸びした目標

③評価できるということの3つです。

この中で主体的であることがとても大切です。しかし、逆に主体的な目標を設定することがとても難しいのです。
なぜならば本人も主体的になれるものが何なのかはっきりわかっていないことが多いからです。
主体的に取り組むためにはどうしたらいいか?ここは今は追求しませんが、皆さんも考えてみて下さい。
主体的に取り組むとは、生活の仕方が見えなくても設定することはできるでしょうか?[主観]が考えるための鍵かもしれません。

さて、話を戻します。
短期目標の材料はN構造として扱った◯(長期目標の材料)から上流となります。
上流とは矢印の方向の反対に登っているという意味で捉えてください。
上流に向かっていく中でいくつかの◯が出てきます。これらは全て短期目標の材料です。
材料ということは、必ずしも全てを短期目標に落とし込むわけではないということです。
では、何を短期目標とすれば良いでしょうか?
そうです。先ほど出てきた、3つのポイントをもとに目標に設定できそうなものを選ぶ、もしくは関連づけて作っても構いません。
本人、支援者が主体期に取り組めそうなものがあればそれを短期目標としてプランの位置付けをします。
短期目標はSG(ショートゴール)と呼びます。生活の解決すべき課題、長期目標、短期目標を設定した後、サービス内容、サービス種別、頻度、期間と考えていきます。
ここまでできたら、サービス担当者会議を開きます。本人、家族、支援者でこの計画で良いか?同意形成をするわけです。なので、ここまでのプロセスでできた計画はあくまで仮説であるということは重要な視点です。介護支援専門員は情報収集、分析をし、仮説を立てて居宅サービス計画書を作成する。ようやくできた!というそこで満足してしまい、あとはその内容をサービス担当者会議で報告するという風にはしていないでしょうか?
一旦立ち止まって考えてみてください。
この計画は誰のためのものでしょう?
サービス担当者会議とは誰の何のためのものでしょうか?
利用者本人のものですよね?アセスメントをし、居宅サービス計画を作り、サービス担当者会議を行い、サービス内容を確認し本人、支援者が計画をもとに主体的に目標達成に向け行動する。このプロセス全てにおいて本人が主体的に参加することは大切だと思います。

ホーヤ高校サッカー部でも目標設定し、それを選手に伝えるためにキャプテン、ポジションのリーダーを交え会議をすることになったようです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?