⑶出会い


「新入部員の府中弓子です!よろしくお願いしまーす!」

俺の名前は竹松。高校で数学を教える傍ら、サッカー部の監督も兼務している。

高校のサッカー部といえば、だいたい高校生生活の花形で、青春を謳歌する、最たるイメージだと思う。

しかしながら、このサッカー部、とにかく弱い。そのため、学校内でもあまり華やかのポジションにいる生徒が少ない印象。逆に野球部は坊主で真面目。硬派な印象があるが、うちの高校の野球部は強く、クラスの中でも中心人物になるような生徒が多い。

こと、うちのサッカー部は毎年予選リーグの突破が目下の目標であったが、例年負けが続いていた。ホーヤ高校サッカー部では、新入部員が少なかった。理由は明白、弱いからだ。とにかく人気がなかった。野球部は甲子園初出場した都立高校から新しくきた監督のおかげで、部員に困ることはなかったがサッカー部はギリギリ試合ができるくらいしか毎年申し込みが来なかった。実績がない、そのため人気がない。結果、部員が集まらなかった。

マネージャーも同様。一人も希望者がいない時もあった。マネージャーの縁の下の力持ち感は半端ないのに。


そんな中。今年は府中がやってきた。

元気で笑顔が素敵な子だ。思ったことは言わないと気が済まない。でも、真剣に向き合っているから故であることは、すぐにわかった。

府中の父親は介護支援専門員という福祉の仕事をしているらしい。介護保険の制度を活用し、計画を立てるプランナーという印象。

府中の父は、アセスメントと呼ばれることを生業としていた。

アセスメントとは情報収集をして、課題を抽出し、分析するという原因分析のことのようだ。

その手法にはいろいろな手法があるらしく、介護支援専門員はそれぞれが学びながら、自分に合う手法でアセスメントを行い、計画を作っていく。そんな中、府中の父はアセスメントした情報を「アローチャート」と呼ばれる手法を使い原因と結果を見える化する手法を使っているとのことだった。
 

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