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⑽会議

竹松「ということでキャプテン、それぞれのポジションのリーダーに集まってもらったので紹介する。キャプテンとリーダーは2年に任せている。今年の1年もやる気があるのが多そうで久しぶりにいいチームができそうな予感がする。キャプテンの上田、FW(フォワード)のリーダー鈴木、MF(ミッドフィルダー)のリーダー齋藤、DF(ディフェンス)のリーダー浅見、 GK(ゴールキーパー)のリーダー佐藤だ。この目標設定についてキャプテンの上田、何か意見や感想はあるか?」

上田「正直、東京都大会優勝はハードルが高いなーって思いました。でも、確かにそのくらいの目標があることで、日々の練習やコミュニケーションに変化が出てくるし、何よりモチベーションが上がってきました。今までは明確な目標がなく、何となくこなしてたなって感じですね。まずは東京都大会の予選を勝ち抜いて決勝トーナメントに行かないと話にならないっすけどね。」

竹松「そうだな。予選突破→決勝トーナメントで4回勝たないと優勝はできない。そのためには予選は余裕で突破できないと厳しいな。他のみんなはどうだ?」

鈴木「そうっすね。目標は高くもちましょ!攻めの課題はこのチャートに描いてある通りシュート数、決定力を上げること。
そのためにどんな練習をしていくか考えてみます。先生とマネージャーで考えた短期目標に加えてシュート練習に多く時間を割くことにします。90分間走り切れるチームになる、マイボールの時にサポートに入るために走ることができる。毎日の練習に耐えれる体力を作るために、週3回の練習を5回に増やす。練習後に100Mダッシュを15本行う。についてはチーム全体で必要な部分だと思います。」

浅見「DFはDF力を上げることが大事だから対人練習を多く増やします。1対1や2対2でシュートまでいかせなければいいので。練習時間の後半はポジションごとに分かれて練習の方がいいかもね!マネージャー、具体的な練習メニューについては僕らが考えてやっていっていいの?」

府中「はい!どんな練習メニューでどんな成果が見込めるかを教えもらって、日々記録や評価をいきます。斎藤先輩、MFはどうします?」

斎藤「そうだなー。MFは攻めと守り両方が必要なので練習後半のポジション別のところでは選手を毎日半分ずつ分けて参加しようと思う。中盤はどっちも大事だけど、とにかく走れないと話にならないから運動量を上げていこうと思う。GKも一緒じゃね?」

佐藤「そうそう。だからキーパーも半々に分かれて参加するよ。紅白戦はどうする?週末は練習試合したいし、実戦形式でやっていくことも必要だよね。」

竹松「週末の練習試合は任せろ。先生の母校や、知り合いにチームに打診していく。今が4月、まずは8月の夏の大会だ、ここは腕試し、来年の春の大会に照準を合わせていこうと思うがどうだ?夏の大会では予選突破まではいきたいところだな。紅白戦の段取りは上田頼む。」

上田「了解です!あと得点が取れない原因と思うことがあります。内のチームはセットプレーがないので相手チームが怖くないと思うんです。あと攻守の切り替えが遅いことが得点、失点の両方に関係があると思う。もう一個、気づいたんですけどグラウンドを週5で借りれないんじゃないかな?野球部も練習あるし。」

竹松「そのことなんだがな・・・実は一つ良い提案がある。週3回は学校で練習、週1回はひばりが丘中学校で中学生にサッカーを教える、週1回は社会人チーム「PITBULL」でサッカーを教えてもらうんだ。目的は二つ。「上のレベルで教わる」ということと、「教える」ということだ。」

一同「中学生に教える?社会人チームに教わる?」

竹松「そうだ。前から考えてはいたんだが、中々覚悟ができなくてな。人に教えるのは自分で体現できても、相手に伝えるのはまた別の次元と考えている。理解した上で相手にどう伝えるか、そこを学ぶためにはひばりが丘中学の部員に教えるのは最高の機会と考えた。加えて、PITBULLでは主にどんな練習をどのくらいの負荷でやっているか、戦術、セットプレー、連携面をみて、感じて、体感してほしいと思ったんだ。」

府中「名案だと思います。それぞれのところで何を学ぶか、何を提供するか、何を共に学ぶか。役割の明確は非常に合理的な考え方だと思います。でも、先生って人脈が広いんですね!中学校に社会人チーム。サッカー経験者ですか?」

竹松「俺も昔からサッカーをずっとやっていてな。中学の時は補欠で悔しい思いをした。練習を仮病でサボるようになった。みんなとはどんどんレベルの差をつけられて、逃げるように勉強に励んだ。でも何でだろうな。サッカーが上手い奴は大抵勉強もできた。成績が悪い奴は勉強をしないだけで、すればすぐに抜かされたよ。とにかく悔しかったなー。それでも、ずっとサッカーは続けた。なんだかんだ好きだっだんだな。自分の素を出せる気がした。だから就職しても、社会人のチームで続けた。大人になっても熱中できることがあるのは幸せだ。今でもたまにその社会人のチームで蹴っている。中学校は同級生が教師をしていてサッカー部の顧問をしていて普段から連絡を取っていた。」

府中「そうだったんですね。先生は自分の過去の出来事を今の生徒たちに重ねてみているのかなーって、話を聞いて思いました。」

上田「先生にそんな風に思ってた何で知りませんでしたよ。そもそもこんな風にみんなで話し合うことなんてあまりなかったですもんね。あっても、報告連絡くらいでしたよ。」

佐藤「そうだな。チームの目標があるとそれに向けて、それぞれの考えや思いを共有することができるような気がする。なんか、ゴールキーパー目線、シュート数増やす上でロングシュートを打ってくると気が抜けなくなるから責めきれなくてもシュート打つ場面も必要。DFにも同様のことがいえて、責めさせないことはめっちゃ大事なんだけど、ロングシュートも警戒してほしい。」

府中「良いですね。たくさん意見が出てきたので、少しアローチャートを修正しましょう。アローチャートは大人数の時にも非常に有効で、今みたいにアローチャートを見ながら議論ができるんです。その上で具体的な部分は、それぞれのポジションのリーダーに任せる。全体の舵取り、方向性は監督とキャプテンで話し合う。その時も有効ですよね。視点の違いもあると思うんです。虫の目と鳥の目なんていう言い方をする人もいますよね。そんなこんなで描けました。こんな感じでしょうか?(挿図2)さっきより原因分析が細かくなりました。」 

挿図2 黄色の◯は新たに上がった客観的事実

さて、今回は監督とマネージャーで作ったアローチャートをもとにキャプテン、それぞれのポジションのリーダーで改めて原因と結果、そして願い(目標)とそれを阻害している要因に整理し、計画を立てました。
その上で自分達の役割と具体的な練習内容、他にも試合に勝てない要因としてと考えられる○(客観的事実)をそれぞれの立場で、出し合っています。もうお気づきだと思いますが、これは僕たちの仕事でいう、サービス担当者会議にあたります。
アローチャートは本人、家族、多職種を交えて計画を確認する場面でも活用できるということです。
ここが[可視化]のすごいところです。それぞれの頭の中で思い描いて共有するよりも、目で見て、因果関係を確認する方が理解が深まります。
頭の中で考えていることが可視化されていない状況のことを[ブラックボックス]と呼びます。
居宅サービス計画書はアセスメントをもとに作成されます。アセスメントの使命は

①全体像をとらえる
②悪循環を探す
③メカニズムを解明する

の三つです。
アセスメントの思考過程を可視化し共有することは、ケアマネジメントプロセスに本人が参画し、計画を立てた内容をサービス担当者会議で確認するという非常に合理的な形になっています。

そしてそれぞれのポジションごとに原因となっている◯に対し改善可能性があるか、改善可能性がある場合にどのような練習をすることでその部分が改善していくかを考え、練習メニューを考えています。
実際の仕事ではサービス担当者会議において、介護支援専門員が作成した計画に対し、目標の部分で、専門的な見地から意見はないか、サービス内容や頻度等においても介護支援専門員が作って終わりではなく、このように議論した上で合意形成の上で決まっていくべきですよね。
それをさらにその人らしさが出ている個別計画に落とし込んでいく
。居宅サービス計画書(マスタープラン)と個別計画書(アクションプラン)の棲み分けですね。
アローチャートを使うことで、原因分析が可視化され、その部分の対処にそれぞれの役割と具体的な支援が明確になります。

他にもアローチャートを活用することの大きなメリットとして、コミュニケーションが生まれやすくなります。
一つの媒体を通して議論をすることで共通認識がしやすくなり、この○からでている→はこの◯にはつながらないんじゃないか?
他の◯も原因として考えられるんじゃないか?など議論が活発になり、より深まります。頭の中が見えていないよりも見えていることで自分の思考の整理ができ、相手に伝えやすくなる。相手にも伝わりやすくなることで、相手の考えがわかり、自分の考えと違いがあるのか等の考えに横展開していくかもしれません。
アローチャートをコミュニケーションツールという言い方をする人もいますが、このようなことがそう呼ばれる所以かもしれません。

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