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Dear Mr.Songwriter Vol.15
佐野元春 with The Heartland
Café Bohemia Part 3
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2006.12.6
今回はアルバム『Café Bohemia』のB面とシングルB面曲、『ELECTRIC GARDEN #2』をまとめていきますね。
7.ヤングブラッズ Young Bloods M.64
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Photo 岩岡吾郎
Design concept 佐野元春
Design 高橋伸明
オリコンチャート最高位7位
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ブルーベリー??
1985年は国際青年年という事で、そのテーマ曲にもなりました。
そしてこの年の6月に行われた国際青年年記念のイベント"All Together Now"では、新しい世代の一員としてトリを務めています。そこで1曲目に演奏されたこの曲はピアノのバラードのアレンジ。曲の良さが際立っていたと思います。
プロデュースは元春。コ•プロデュースとストリングス•アレンジにはキーボードの西本明がクレジットされてます。ギターは横内タケ健広。THE TOKYO BE-BOPのホーンとストリングスとクールなギターのカッティングがとてもいい。
イントロは、やっぱりスタイル評議会に感化されているのは間違いないとは思うけど、カーティス•メイフィールドを経由したソウル•ミュージックの解釈なんだろう。
後に操縦ミスがあったという発言もありました。
この曲をリリースする前後に、ヨーロッパ、特にイギリスのミュージシャンが中心となって動きが起こっている。ボブ•ゲルドフが提唱したエチオピアの食糧難と自然災害への救済チャリティ•イヴェント"バンドエイド"があって、日本版のライヴ•エイドへの出演依頼があった。彼の行動には敬意を感じていたので「シェイム〜君を汚したのは誰〜」のライヴ•クリップを提供した。欧米ではよくポピュラー音楽が社会問題にコミットすることがあるが、日本ではそうしたことに慣れていなかった。
その時僕が思ったのは、芸能音楽、ポピュラー音楽が果たす役割のことだ。自分や周囲のソングライティングはもっと成熟すべきではないだろうかと思った。なぜなら人は愛について語るように政治についても語る。それと同じようにソングライターが書く曲の中に政治的な意見が反映された曲がラヴソングと同じように書かれ、人々の間で聴かれるやうになれば良いと思った。アンダーグラウンドにはあったものの、当時のメインストリームにそうした曲はなかった。その点では日本はまだ過度期なんだなと感じた。
そうなんだよ。この曲はラヴソングでもあるしポリティカルな曲でもある。今思えば、確かにこんな曲は聴いたことはなかったな。"鋼のような知恵と輝き続ける自由"を筆頭にすべてがキラー•フレーズなんだよね。
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Special Dance Mix 1985.3.21
Re-mixed Jack Nuber
オリコンチャート最高位13位
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この曲から発生するロイヤリティをすべて日本赤十字を通じてエチオピア難民救済のために寄付した。それがどうしたということではなく、みんなと同じように日常に暮らして詩を書き曲を書いているソングライターのひとりとして、どういう時代に生きているかということを音楽を通じて個人的に確認したかったんだ。
この曲はVol.0でも書いたけど、自分の元春の初体験でした。NHKでスポット的に流れていて、なんとなくいいなって思っててね。それがこの曲だっていうのは、後で知るんだけどさ。
歌詞だけを読むのは、野暮なんだけど、全くもって素晴らしい歌詞だと思う。当時、自分は14歳で、少し大人ぶりたい年頃。ただただカッコいいって思って聴いていたんだけど、"いつの頃か忘れかけてた 荒ぶる胸の思い" のところは、絶賛、荒ぶる胸の思いの中にいた自分には、リアルには響いてこなかったんだけど、ある日それがわかる瞬間がきたんだよね。歌ってそうやって一緒に成長していくものなんだって思ったよ。
この方の言葉でこの曲は締めますね。
"街はブルースで眠るんだ•••と、衝撃を受けました" スガシカオ
8.虹を追いかけて Chasing Rainbow M.65
冬のイメージが強いこのアルバムの中においても特に冬を感じちゃうな。堅実なベースラインと的確なドラミングが冬の散歩道の入り口。
"みせかけの輝きは いつかさびていく できることだけを 続けていくだけさ" このフレーズはこの曲の中でも大好きなライン。
20周年盤としてリリースされた『The Essential Café Bohemia』に新しく録音した「2006 middle & mellow groove version」が収録されている。とても素敵な仕上がりになってます。
9.インディビジュアリスト Individualists M.66
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12インチシングル
SIDE A インディビジュアリスト
EXTENDED MIX
Remixed by John'Tokes"Potoker
SIDE B インディビジュアリスト Dub Mix
Remixed by John 'Tokes"Potoker
インディビジュアリスト Live
PHOTO by TAKAYOSHI SHIMIZU
オリコンチャート最高位38位
順番でいうと『カフェ•ボヘミア』プロジェクトとしては、最終リリースになった12インチシングル。
このアルバムを象徴している"個" についての曲。『世代より個人へ』キャッチコピーにもなっている。
この個人を大切にするという思想は、自分の生き方の礎になってます。かといって孤立は寂しい。孤独はいいけど孤立はよくないとも言っていましたね。
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画 宮前正樹「ジバーニの休日 #1」1986
この曲の元になった詩
THIS NO.2 1986に記載されています。
イデオロギーで真実をとらえようとすると、いくつもの望遠鏡が必要になってしまう。ある時は『摂取されるものと摂取するもの』といったものさしが必要になってしまうんだ。
でももう、ものさしはいい。僕たちの生活、人生にとって、普遍とは何?そんな原始的な問いに、立ち戻ってみよう。それがアルバム『カフェ•ボヘミア』を作っていた時の気持ち。そして『インディビジュアリスト』という曲の中の『なにもかわらないものはなにもかえられない』というワンフレーズに込めた思いなんだ。古くさいイデオロギーを捨てて、まず自分自身が変わることが、何かを変えていくことにつながっていくはずだって、僕は考えていた。
強力なスカビートに乗せて歌われるのは "Change The Winds"
"なにもかわらないものはなにもかえられない 風向きをかえろ"
というフレーズ。
今の状況に絶望するのではなく自分のやり方を少し変えてみる。そんなことを教えてくれた曲でもあります。
ちなみに、クールなカッティングのギターを弾いているのは、ピアノのSweet Baby阿部ちゃんです。マルチプレイヤーですよね。いいギターを弾いてる!
そして、ポール•ウェラーはこう歌っている。
"他人に責任をなすりつけず 君もともに闘おうと思うなら 僕たちみんな力を合わせねば 決して世の中を変えられないと思うなら この挑戦を受けて行動に移るんだ 国際主義者として立ちあがれ"
スタイル•カウンシル インターナショナリスツ
10.99ブルース 99Blues M.67
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SIDE B 月と専制君主 EXTENDED MIX
Remixed by John'Tokes"Potoker
12インチシングル
1987.6.3
オリコンチャート最高位25位
東京マンスリーライブの第2回、’86年の5月にオベーションのエレアコ一本での弾き語りで初披露した楽曲。(THE OUT TAKESで観れるけど、今、ビデオデッキがないんだよね。)
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THE OUT TAKES VIDEO
『VISITORS』でやったラップ表現をロックンロールのフォーマットに落とし込んでみたという。
自分が日常暮らしていて、身近な範囲の中で感じている問題について歌ってみたかった。1バースごとに現実社会について日頃感じていることを凝縮して押し込めたんだ。本当にほしかものは99の中にあるんじゃなくて、残った1の中にあるような気がしているのも事実だしね。だから「99ブルース」は、犬や狼が丘の上で月に向かって吠えているような歌だね。
リズムが面白いでしょ? ボ•ディドリー、アイク&ティナ•ターナー、バディ•ホリーの「ノット•フェイド•アウェイ」あたりが手本になっている。詩はブルースの形式で書いた。ブルースというのは構造的に4行の詩から成ってる。〈朝、俺は目がさめた〉をもう一回繰り返す。そして3行目に〈隣を見るとベットに愛しいあの娘がいない。〉で4行目は結論なんですね。〈愛しいあの娘に帰ってきてほしい。〉僕はそれを日本語でおこなったらどうなるんだ?という実験を「99ブルース」でやってみた。
インタビュアー山崎二郎
ドラム•パターンもカッコいいんだけど、全般で聴こえるギターは元春自身のプレイ。この時よく使っていたのは、ESPのストラトキャスターかな。サンバーストのやつ。そこら辺に耳を傾けるとまた違う聴き方ができるかもです。
〈この街のリーダー シナリオのチェックに忙しい〉という行は二〇二一年の現在、当時とはまた異なる響き方で耳に迫ります。
「リーダーや権力者をからかうのはロックンロールの伝統だ。世の中には大事な人生を誰かの都合で振りまわされるのはごめんだと感じている人も大勢いる。この曲を書いた一九八六年当時も二〇二一年の今もそれは同じだと思う」
佐野元春 「その歌は時代を照らす」2021年5月
残りのひとつが手に入れられない。まったくもってその通り。いつだって君のブルースを歌ってくれてるじゃないか、もうそれでなんとか歩いていけるってもんさ。
11.Café Bohemia (Interlude)
元春のピアノとギター、明さんのシンセ。このブレイクが、次の曲への架け橋のように美しく響く。
12.クリスマス•タイム•イン•ブルー 聖なる夜に口笛吹いて Christmas Time In Blue M.68
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聖なる夜に口笛吹いて 1985.11.21
Art Works 牧野良幸
オリコンチャート最高位7位
このクリスマスソングは前作『VISITORS』のツアーが終わった後の1発目のアクションだった。
僕のファンの人たちと和解するいいチャンスじゃないかと思う。『VISITORS』をリリースしたばかりのころにはどうしてこんなに変わってしまったのかと心配された。"佐野さんはNY病にかかってしまった"とかね。
この曲の軸といったものが日本にあるのではなくて、この軸がユニバーサルにあるクリスマス•ソングを まぁ、たまたま日本語だけれども、軸がユニバーサルにあるクリスマス•ソングを自分なりに書いてみたかったというのがこの曲でした。だから当然、当時はまあライヴエイドですとかそうしたポップ音楽側からの社会に対するコミットメントというのがすごく盛り上がっていた時期ですから、非常に世界が見えやすい時期でもあったんですね。同時に例えばCNNとかそうしたアメリカ制作のニュースではありましたけれども、国際ニュースがどんどん日本で流れ始めた時期でもあった。当然、僕らはこんな愉しいクリスマスを東京という街できらびやかな装飾の中過ごしているけども、でも遥か西のある国では人々が殺し合ってる現実もあるんだというような認識の中で、何かクリスマス•ソングが1曲できないかなという、そんな気持ちがありました。
レゲエのクリスマスソング。これについては最初はエイトビートのアレンジだったという。VISITORS TOURで「ハートビート」を数回レゲエのアレンジで演奏し、それがうまくいき、自分たちなりのレゲエ的な何かをまた表現できないかという気持ちになったという。
それから1ヶ月リハーサルを積んだハートランドのメンバーと東京でレコーディングをし、スティーヴ•スタンレーにミックスをしてもらうためにニューヨークへ飛ぶことになる。
レコーディングで一番苦労するポイントというのは、だいたい過程の99%は自分の責任でケアーできるという考え方で、自信はあるんです。でも残りの1%は自分でケアーできない。その残りの1%はどういうものかというと、その楽曲自体にスピリットが投入できるかどうかということなんだ。99%までは、僕らの演奏、声の表現、力、曲のアクティブさとかで表現できる。で、残りの1%、これはね、マジックなんです。
スティーヴ•スタンレー
元春がスタンレーのことを知ったのは、ニューヨーク在住の時に聴いたレコードからだという。B-52'sの『パーティ•ミックス』レゲエ•バンドのスティール•パルス、そしてスライ&ロビーの作品が気に入っていた。
そしてこのミックスはジミ•ヘンドリックスが作った"エレクトリック•レディ•スタジオ"で行われた。
自分の中ではクリスマスはこの曲だけでいいなってくらい大好き。恋人たちだけのものではないグローバルなクリスマスソング。これってほんとに"ザ•佐野元春"なんだと思う。
でもこれが万人に受けるのかというと少し違うのかなとも思う。結局、この国で流れるクリスマスソングはお決まりの曲だしね。
アンジェリーナ Slow Version
シングル「ストレンジ•デイズ」のB面に収録。
『VISITORS TOUR』ではこのアレンジて披露されていた。
スロー•ファンクという感じだね。これはこれで好き。
大友康平と千倉真理がパーソナリティをしていた文化放送の『スクールズ•アウト』というラジオ番組で1988年6月15日放送回に元春がゲスト出演した時に、このスロー•ヴァージョンの「アンジェリーナ」がかかった時、千倉真理さんが絶賛だったのを覚えてます。
Looking For A Fight M.69
「シーズン•イン•ザ•サン」のB面に収録。
片岡鶴太郎への提供曲として1985年11月21日にリリースされている。
セルフカバーという形で"東京マンスリーライブ"などで終盤にセットされていた。
元春の楽曲の中でも珍しいといっていいストレートなロックンロール。間奏のダディ柴田のサックスがとてもいい。
「ワイルド•ハーツ」に繋がるようなテーマを持っていて、ここではない何処かへ行こうという決意みたいなものを感じるとても勇気づけてくれるナンバー。
アルバムに未収録な楽曲を聴くのも楽しみのひとつでした。
Shadows Of The Street M.70
Dedicated to my friend RON SLATERというクレジットがあるように、ニューヨーク在住時の友達に向けて作った楽曲。これは、やはりひとつの作品としてきちんと残しておきたかったのだろう。
その事を抜きにして聴いてみても、元春が得意とする良質なフォーク•ロック•サウンドか聴ける。
ELECTRIC GARDEN #2
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1986.5.31
豪華仕様だった前作に比べるとザ•無印のような仕上がり。
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For Foreigner として英語詩も記載されている。
アート•ディレクター 駿東宏の仕事はこの『ELECTRIC GARDEN#2』が一番最初の仕事だったという。
あれはエピック•レコードから出したんですけど、最初はエムズ•ファクトリーから出す予定だったんですよ。今考えれば変わった仕様だったと思いますね。イギリスでいえば、ジョイ•ディヴィジョンなんかがいた『ファクトリー』っていうレーベルが出していた仕様に近いんですけど。エムズ•ファクトリーという佐野さんの事務所で発行するんで、好きにやっていいと言われたんです。紙箱にトレー作って、そこにカセット入れてポストカード入れてってかなり簡易な仕様にしたんですね。それでやっていたら急にエピックから出すってことになったから仕様を変えてくれって言われたんです。佐野さんはそこら辺は突っ張って、インディーズで出そうとしていた印刷所で仕様はそのままで部数を変えて出しましたね。
完全な製品 Perfect Production M.71
"みんな欲しがるPERFECT PRODUCTION
近代工場から送られてくる毎日毎日の消費物
誰もが自動的に求めてしまう"
"一度僕は捨ててみよう
すべてのPERFECT PRODUCTION
ほんとうに彼女が必要になる時まで"
ここでのテーマは、おそらくデビュー当時から言及している高度消費社会においての『直接性』を取り戻すということなんじゃないかな。
形のくずれた卵、ありのままのトマト
ふぞろいの食品達
防虫駆除を徹底され、きれいな形に整えられ、スーパーマーケットに並ぶ野菜。
近代工場から送られてくる消費物を自動的に求めてしまうことの危機感。
そこに警鐘を鳴らしているんだと思う。
ある9月の朝 M.72
クレイジーなトウキョウ。
ニューヨークは?パリは?ロンドンは?ベルリンは?
•••までに M.73
コンクリート•フィッシュにはまだ出会えないまま。君は?
『カフェ•ボヘミア』は、ただのアルバム•タイトルではなかった。雑誌の編集、仲間のプロデュース•ワーク、ラジオDJ、マンスリー•ライヴ、スポークン•ワーズ、パッケージ•アート、それら全部ひっくるめた表現コンセプトだったと思う。20代後半の僕が試みた音楽的、文化的な1つの実験の場であったもしれない。
「本当に望むものは何?」。20年前と同じ問いを自分に投げてみる。この先、風向きが変わっても、僕は僕のままでいられるだろうか?烏合の衆はコントロールされ易い。この時代にあって僕はそれをすごく危惧している。『カフェ•ボヘミア』で目指したことは、「馴れ合いの連帯」よりも「拙い個人」を選ぶ、という態度。それをリベラルな態度と言い換えてもいいかもしれない。その事を真面目に追求すればする程、個人とは何か?という問いに直面せざるを得ない。個人の充実こそが全体の充実に繋がっていく。86年『カフェ•ボヘミア』の時に唄っていたのはつまりそういう事だったと思う。
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アルバム『カフェ•ボヘミア』今回は3回に渡ってしまいましたが、みなさんはどう感じましたか?
ここでのメッセージはあの時と同じ色褪せないまま残っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた次回!
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