見出し画像

アナリストの役割はたくさんある

これは「スポーツアナリティクス Advent Calendar 2021」の17日目の記事です。

はじめに

今シーズンのJ1リーグは、昨年から続くコロナや、東京オリンピックの影響で、不規則な日程や連戦、降格チーム数が4チームなどイレギュラーなシーズンでした。その中でアナリストは、試合を分析し、ミーティング用の映像を編集・加工し、プレゼンを行い、時にはコーチとして選手の指導を行うなどかなり多忙だったのではないかと想像しています。(本当にお疲れ様でした。。)

アナリストの仕事って本当に多岐にわたりますよね。

こちらの記事をご覧いただくと、日本サッカー現場におけるアナリストは、「テクニカルスタッフ」「分析担当」などと呼ばれており、主な仕事は「映像分析・編集」になります。しかし映像分析のみにとどまらず、選手へのトレーニング指導や試合中にスタンドで分析を行い、ハーフタイムにフィードバックすることを担っている方も多くいらっしゃいます。

画像1


多岐にわたる役割をより専門的に高いレベルで行うために、ヨーロッパの大きなクラブでは、複数人のアナリストがチームを組んで分析を行っています。この動きはJクラブでも少しずつ出てきていますね。


また、ちょうど1年前の記事でも触れましたが、アカデミー組織に分析担当を配置し、育成年代の分析を重要視するチームも。


今回はアナリストの仕事や役割が多岐にわたる中で、これからどんな人材が求められているのかについて、考えるヒントを提供できればと思います。

アナリストの役割

サッカー分析をされる方はいっぱいいらっしゃいますが、その目的は人それぞれ。一般的には下図の左上の「次の試合で勝つために分析を行う人」のイメージが大きいのではないでしょうか?

画像2

スポーツアナリスト講座Vol.7のレポートに書かれていますが、「分析において重要なのは“正しい分析をすること”ではなく、“選手が自信をもってピッチに立つこと”」。

私は選手とよく会話するのですが、選手がサッカーを理解することはそれほど難しいことではないです。試合後に一緒に映像を振り返ると、「このエリアではこうすれば良かった」「この時間帯は、セーフティに」「この局面ではもっと2m横にスライドする必要がある」など戦術的、技術的な内容を言葉にすることができます。

それ以上に難しいのは、試合中に瞬時に状況を理解し、最適な判断を選択し、実行できるかどうか。選手の意思決定や問題解決に役立つ情報を適切な形で提供できるかどうかがアナリストの役割であり、力の見せどころです。

そのために必要だと思うのは、自分の取り組みや、チームのプレーモデルを整理して言語化しておくこと。先ほど複数人で分析をするチームが増えてきていることを述べましたが、人数が増え、役割が分化していくほど、コミュニケーションコストが増えたり、齟齬が発生します。それは、瞬時に判断し選択するサッカーにおいては致命的になる事があります。チームとしての考え方の理解・共有やスタッフ間でのコミュニケーションを円滑にとれるように言葉を整理することもより求められてくる役割なのかなと思います。

チームを強くするためのアナリスト

先ほどのマトリクス図の右上、「中長期的に強いチームを創る」上で、今後アナリストの力が求められると思っています。

スポーツアナリスト講座Vol.7のレポート内で水戸ホーリーホックの取り組みが書かれています。既に選手による課題設定、選手編成・評価においてデータを活用していて、今後アナリストは一貫性を保つために可視化されたもの、定量化されたものでチームを導くために求められるようになっていくだろうとのこと。

編成においてはどこが補強ポイントなのか、どのくらい自チームにフィットする選手なのか、どのくらい活躍しそうか、評価においては、目標に対して達成度はどうか、何が改善ポイントなのか、ネクストアクションは何かなどなど。そういった重要な意思決定に対して寄与することもアナリストの役割になるでしょう。

個人的には「チームを中長期的に強くするために選手の自己認識力・自走力を高める」こともアナリストに求められる役割になってくると考えています。今年でいうとエリートリーグが創設されました。その目的は、

「Jエリートリーグは、21歳以下の選手を中心とし、21歳以下(ポストユース)の選手の試合出場とアカデミー所属選手の飛び級の機会を創出するとともに、トップチームとアカデミー、そして地域との連携を深める機会を提供することを目的としています。」

とのこと。実際に、アカデミーの選手が出場したり、大学生が練習生として参加し内定していたり。

こういった選手の試合出場機会が増える取り組みは選手の成長を考えると大きな意味を持つと思っています。なぜなら試合の中でトライ&エラーを繰り返しプレーを行い、試合後には課題を分析してネクストアクションを決定していくことを習慣化することが成長速度を高めることにつながるからです。このPDCAサイクルを適切に回すためのサポートもアナリストには求められてくるのではと考えています。この取り組みに関してはまた深く書きたいと思います。

とにかく現場に出てみよう

だらだら書いてきましたが、

最後に、、

アナリストになりたい方は、とにかく現場に出てみることをお勧めします。現場に関わり、その中でサッカー分析をして、選手やスタッフに伝える経験をすること。実践の中で、何ができて、何が課題なのか、次のアクションは何かを積み重ねることでアナリストスキルは磨かれていきます。

幸い今の時代たくさんツールもあります。うまく活用して、自分のできる事を増やしていきましょう!(自分も頑張ります。。)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?