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金管五重奏の難しさについて

前回記事で、五重奏と比較した際の十重奏の良いところを書きました。

今回はこの記事と対比する形で、金管五重奏の難しさと、それゆえの魅力について書いていきたいと思います。

金管五重奏の難しいところ

1.音色の種類が限られている

五重奏では基本的に「セクション単位」での音色を作ることができません。
2本のトランペットと1本ずつのホルン・トロンボーン・チューバ、これらの組み合わせのみで曲を成り立たせます。

そこには引き算の美学があり、純度の高い音色によるアンサンブルを味わうことができます。
十重奏が多彩な味付けで聴き手を楽しませるのに対し、こちらは素材の味で勝負する、といったところでしょうか。
五重奏の名曲の数々は、素材を見事に活かしきっています。

しかし、どのような楽曲を演奏するにしろ、素材の味が良くなくてはなりません。
ここでの素材の味とは、すなわち演奏者の技量ということになります。
単純に音を並べる能力はもちろんのこと、音楽的に吹くことが十重奏以上に重要であると言えます。

2.ダイナミクスの幅が限られている

十重奏であれば数にものを言わせた迫力のあるフォルテを出すことも可能ですが、五重奏ではやはり個々の奏者が頑張る必要があります。
最大限音量に変化を持たせる努力をするとともに、音そのもののエネルギーも重要になってきます。

私自身、何度か五重奏に乗った経験がありますが、常にある程度ソリスティックな吹き方をする必要があるため、体力・精神力の消費が十重奏よりだいぶ大きいと感じました。
一方で、吹き切った時の達成感も大きかったです。

3.負担が集中する

アンサンブルを構成する楽器の本数が少なくなれば、それだけ休みは少なくなり、吹くのが大変になります。
体力がもつように上手く書かれている譜面が多いですが、それでもキツいものはキツいです。

五重奏に臨む上でのマインド

そういう訳で、金管五重奏というのはメジャーな編成でありながら、実際には割と上級者向けのフォーマットであると考えられます。

単なる譜面の難しさの話ではなく、「音楽作りをすることの難しさ」「聴き手を満足させることの難しさ」が大きいのです。
十重奏であれば編成が助けてくれるであろう音色やダイナミクスの変化を、奏者自身の努力によって実現することが必要になってきます。

裏を返せば、五重奏は奏者にとってはとてもやりがいのある編成、ということになります。
ポテンシャルの限界を求められるような曲も多く、そのような曲にチャレンジすることで、充実感と達成感が得られます。

しかしたとえ譜面が簡単だったとしても、むしろ譜面が簡単なときこそ、真摯に音楽作りをする必要があると思います。
シンプルな譜面を前にしたときにどのように仕上げていくか、頭と心をフルに使って取り組むことが、アンサンブルの醍醐味ではないかと考えます。

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