相手に合わせて心は転じていく
自分が接している相手(人物、状況など)に合わせて、自分の心も変わっていくものです。このことをピタリと表す熟語として、「心は万境(ばんきょう)に随って転ず」(心は人物や状況などに合わせて変わる)というものがあります。万境はそのときの縁(ものごとが生ずる原因やめぐり合わせ)によって現れたものであり、次の瞬間には別の状態になるという性質を持っています。ところが人間は、自分が接した万境があたかも存在したかのように考えて、それに随って自分の感情が出てきているのだと考えてしまいがちです。例えば、相手の怒った顔を見て「相手は激怒しており、決して許してくれないだろう」などと思い、うろたえて悲しむといった具合です。しかし、万境が次々と変わっていくことを、しっかりと認識していれば「確かに相手が激怒するのは分かるので、反省して謝ろう」と考えることができます。ちなみに、「心は万境に随って転ず。転処実に能(よ)く幽なり」と続きます。人の心は外界の現象に随って移ろい変わっていきますが、無常である外界の現象に執着しなければ、心は自由無碍(むげ、障りが無い)の幽玄な境地にある、という意味です。平常時には外界の相手たる現象に心穏やかに対応できるものですが、不測の状態になったときにおいても、「心は万境に随って転ず、転処実に能く幽なり」を体現できるようになりたいものです。
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