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明日が当たり前に来るとはおもウマ(うな)よ!(ウマレポ②)【拗らせ男子の革命日記】20201223

12月4日僕がお世話になっていた彼は突然この世を去った。
馬の死因として多い疝痛(せんつう)による腸捻転だ。
僕が乗馬クラブに行く前日に急死の連絡がありわかった。

言われた時、時間が止まったように感じた。信じられなかった。

翌日彼の存在を確かめたいとレッスン前に彼の馬房を訪れた。
馬房に彼は居なかった。
僕は乗馬をはじめてもう半年で30鞍に届くところだが、その三分の一は彼の背中にお世話になっていた。
レッスンが終わってから馬房に行き、おやつをあげながら話を聞いてもらってた。
彼の癖や性格はライダーによってはっきり合う合わないがあって、別の方が跨っているのをたまたま見た時は全く言う事を聞かない、無視するのを一貫としていた。
彼はプライドが高いし、好き嫌いが激しい。
そんな尖った性格が好きだった。
昨日メモ魔塾生としてメモして気持ちを整理したつもりで今日彼のいた馬房に顔を出すと、寂しさもあり、心の天気が雨模様に変わった。
手を合わせてから今日跨る馬に触れるのが複雑だった。ボーっとしていた。
それを見透かしてか馬の腹帯や鎧の調整をしていると、馬の顔が僕に近づき瞬間、顔面に鈍痛が走った。
馬が僕の顔面に頭突きをしてきたのだ。殴られた感覚だ。
馬にとって人間は赤ちゃんと同じくらいの力の差がある。殴られた時吹っ飛んだ。
痛かったが、何となく聞こえた。

『ボケっとしてんじゃ、ねーよ!』

その子からなのか、彼からなのかわからない。
でも目が覚めた。
瞬時に『痛いやないか!』とその子の首元を思いっきりビンタしてやった。
馬に対して一瞬恐怖を抱いたが、舐められたくないからやり返した。

その子は耳を後ろにしぼめて、何食わぬ顔をしてきた。

配慮はするけど、遠慮はするな。

今日は顔面殴られたからか、皮肉にもいつもより思いっきり練習できた。
先日教わった手前合わせも出来たし、先生から見極めのテストを受けても良いかもしれないと言われた。(ただ後になって、まだ鞍数が足りないし、細かい修正が必要だと言われて延期になった。)
レッスンが終わり今日跨った子におやつをあげに馬房に行き、帰りに彼の馬房で再度手を合わせた。
彼は良血な競走馬として活躍を期待されながらも結果を出せず引退、転職して乗用馬になった。(父はシンボリクリスエス、母はフサイチパンドラ。G1、9勝競馬史上最多勝利のアーモンドアイのお兄ちゃん、半兄だ。)
人間の都合で生み出され、競馬が出来ないなら屠殺や行方不明になるこの世界。彼は運が良かったかもしれない。幸せだったかもしれない。

僕は彼に寂しさを感じつつ、伝えた。
これまで良く頑張ったね。短い間だったけど、ありがとう。
キミの分まで乗馬を馬術と呼べるように頑張るよ。
と。

先は長いかもしれないが、早く早く、障害飛越競技の選手(障害馬術)として、また乗馬を広げる人間の一人として頑張りたい。成長したい。


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