自#706「(親は)金は出しても、口は出さない、これが、大学受験のゴールデンルールです」

       「たかやん自由ノート706」(自己免疫力52)

 体育館で、大学に合格した3年生が、高2生に合格体験談を語るイベントがあって、私も体育館ギャラリーの片隅に立って、それをlisten toしました。進路部が、どのような内容について話してもらうのか、あらかじめ項目を並べてあるシートを作成していて、そのシートに沿って、喋っていました。平日、休日、長期休暇の時間の過ごし方、予備校・塾の利用の仕方、実際に使った参考書や問題集の名称、部活や行事との両立のさせ方、赤本の使い方など、まあ、よくあるような話の内容でした。進路部主催の行事ですし、オフィシャルな模範解答的なイベントだと言えます。
 たとえば、「3年の夏休み直前、それまで2年間付き合って来た男に振られて、めっちゃ落ち込みましたが、立川のスイパラ(スィートパラダイス)に行って、ケーキ20個を食べまくって、さらにより一層、ぐちゃぐちゃの状態になり、そのどん底の状態から這い上がって、無事、ミッション系のお嬢様女子大に合格しました。東大or医学部のいい男をつかまえて、絶対にあのクソ男を見返してやります。というか、あっちは全落ちして浪人なので、すでに私の圧勝です」といった裏アカ的な話は、もちろん、聞けませんでした。裏進路部が、裏アカ的な合格体験談をまとめて、それを現役生にプレゼンすれば、オフィシャルよりも、はるかに効用・効果を放つ、合格体験談になると推定できます。
 この日の体験談で、一番、身につまされたのは、いよいよ出願となった時、親にそんなに数多くは受けさせられないと、はっきり宣告されたという話です。一般家庭の多くの主婦は、新聞の折り込みに入っているチラシを見て、1円でも安い品物を買おうと、工夫、努力をしています。私の妻だって、折り込みチラシに表記してある安売りの値段を、inputして、自宅周辺の5、6店のスーパーを巡って、安い商品を買っています。チラシを見て、日々、1円単位の節約を心がけているのに、子供に「あと二校、追加で受けるから、6万円プラス。一校一学部の受験料が3万円だから」と言われても、正直、「はぁ?」ってなってしまいます。大学の受験料が、模試に較べて、あまりにも高すぎるってことも、まあ問題っちゃ、問題です。
 情報が溢(あふ)れている時代だけに、ベーシックな基礎的な情報が、抜け落ちてしまうということも、充分に考えられます。大学を受験するのも、入学金も、授業料も、とんでもなく費用がかかります。私も、担任を何回か経験しましたが、子供が4人いて、4人全員を大学に行かせたという話は、聞いたことがありません。一般の普通の家庭で、子供4人を、大学に行かせることは、経済的にまず不可能です。3人、行かせるのも、正直、大変です。親が自分の老後のことも考えて、綿密にシュミレーションすれば、大学に行かせられるのは、せいぜい二人くらいです。
 塾や予備校に行かないで、学校の図書館や自習室などで、自学自習していた生徒が、早稲田などに普通に合格したりします。別段、塾や予備校に行かなくても、スタディサプリのような、勉強のツールはいくらでもあります。You Tubeにも、すぐれた講座は沢山存在します。塾や予備校に行かない生徒の多くは(多くではなく、多分、全員です)「ウチはお金がないから、塾や予備校には行かせられない」と、親に事前に宣告されています。事前に宣告されてしまうと、子供は、就職するか、公務員を目指すか、あるいは自学自習で大学受験をするか、選択することになります。事前にきちんと宣告する、ある意味、賢い親ですから、高校卒業後は、フリーターになって、家でぶらぶらしていてもいいなどとは、絶対に言わない筈です。「大学に行くなら、最低限、学費は何とか工面する。大学に行かないなら、家を出て、自活して欲しい」と伝える筈です。
 親だって、自分の老後のことを考えなければいけません。人生百年時代が、本当だとすれば、年金+二千万円くらいでは、老後の費用は、充分だとは言えません。そもそも、年金制度自体が、今後、どうなって行くのか、まったく見通せない、リスクだらけのシステムです(昭和人間の私の世代ですら、退職金、年金ともに、上の世代に較べると、大幅に減額されてしまっています。ましてや、私よりお若い世代の方々、をやって感じです)。 図書館や自習室で自学自習している生徒の方が、塾や予備校に通っている生徒よりも、合格率は高く、より偏差値の高い大学に合格するケースが多いのは、つまり自学自習組は、腹を括って、覚悟できているからです。いくら、予備校や塾に通っていても、勉強というのは、本質、やはり自学自習なんです。
 受験方面の話などは、進路部に在籍していた期間が長かったので、いろいろ聞きました。もっとも役に立ったのは、某予備校の横浜校の女性の学校長の話です。親を啓発、啓蒙して、受験生を限りなくリスクの少ない状態にして、受験勉強に専念させてあげるのが、第一志望校合格のための王道だと言った風なことを、仰っていました。至言だと感銘を受け、私も担任時代は、親を啓発、啓蒙することに力を注ぎました。
 親は、だいたいにおいて、受験生にとって、大きな抵抗勢力になってしまっています。親の心ない発言で、受験生のモチベーションが、一気にだだ下がりになってしまうこともあります。その先生は「金は出しても口は出すな」、これを親に完膚無きまでに解ってもらう必要があると、力説していました。まったくもって、その通りです。親の意見、忠告、アドバイスなどは、ほとんどの場合、百害あって一利なしです。親は、金だけを出して、口を出さないのが、やはりbestです。親は、受験の今の状況も、受験生の気持ち、心理なども、あまりにも知らなさ過ぎです。
 受験本番の出願の時に、「お金がないから、そんなには受けさせられない」と、言ってしまうのは、さすがにNGです。これは、1年前に通告しておくべきでした。1年前に通告しておけば、子供は家庭の経済状態を理解し、腹を括ることができていました。高2くらいになると、男女ともに、親がちゃんと話せば、家庭の経済状態などは、きちんと理解します。高2の初旬あたりで伝えておけば、子供が、自主的に国公立を目指す準備をするということも、充分に考えられます。
「ウチはお金がないから」と言った漠然とした、抽象的な言い方ではなく、実際に収入と支出の金額などを示して、家計のリアルを知らせてあげれば、高校生は普通に理解し、給付される奨学金などを受給しようと、成績を上げたりといった努力もします。
 子供が覚悟をするためには、まず親の方が、先に腹を括って、覚悟をする必要があります。いつまでも、親が子供の面倒を見れるわけではありません。子供に、自分のことは、結局、自分でしなければいけないと、はっきりと理解させる、絶好のchanceが、大学受験の時だという風に考えることも可能です。親と教師とが、コラボをして、子供を逞(たくま)しく成長させること、これが、大学受験の一番、大きな本当の目的です。

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