自#358「2020年は、コロナ禍で大変なことになって、これってつまり、資本主義の行き詰まりだろうと、私は普通に考えていましたが、株は乱高下して、投資で儲ける人は、嫌というほど稼ぎ、ワクチンを開発した製薬会社は、打ち出の小槌を手に入れたような状態になって、資本主義は、さらに発達したと見るべきなのかもしれません」

          「たかやん自由ノート358」

 佐藤優さんがお書きになった「世界史の極意」という新書を読みました。この本の中で、エリックホブズボームの時代区分(?)を紹介しています。ホブズボームは、1789年のフランス革命から、1914年までを「長い19世紀」、1914年から1991年のソ連崩壊までを「短い20世紀」、1991年から、その後の現代です。長い19世紀は啓蒙主義の時代です。理性を正しく用いれば、過去から現在、現在から未来へと、人類が無限に進歩して行くことが、素直に信じられた時代でした。が、人類を待ち受けていたのは、二つの大量殺戮戦争でした。第一次世界大戦が、サラエボ事件をきっかけに始まって、ヨーロッパでは啓蒙主義のバラ色の時代は、終焉を迎えました。が、アメリカでは啓蒙主義が続いていて、戦後(これは第二次世界大戦)アメリカの影響を受け続けた日本も、オイルショックあたりまで、経済は右肩上がりで、バラ色の啓蒙主義的な時代だったと思われます。アポロ11号が月面に着陸し、ベトナム戦争が終わって、ジョンレノンが「War is over」(Happy Cristmas)の曲を作ったあたりが、バラ色のピークだったと、私は考えています。

 1989年にベルリンの壁が撤去され、1991年は、ソ連が解体し、CIS(独立国家共同体)が、創設されました。第二次世界大戦直後から始まっていた、米ソ二大強国の冷戦が、終結したわけです。現在、三十歳以下の方は、冷戦終了後に生まれた人たちです。私が「1962年のキューバ危機の時、第三次世界大戦が始まって、人類は消滅するかもしれないと云う恐怖感を抱いた」と、16、7歳の生徒に話したとしても、信じてもらえないかもしれません。当時の私の周囲の大人たちは、キューバ危機の存在すら知りませんでした。1962年の日本の社会の下層民は、日々、生きることだけで、手いっぱいでした。キューバ危機どころではありません。私は、下層民の子供でしたが、毎日、ラジオを聞き、本も読んでいました。私が小2だったので、子供の直観で、危機を把握できたんだろうと思っています。

 ベルリンの壁が撤去され、ソ連が崩壊した時、私は世界史の教師でしたが、バンドの部活の顧問として、全力投球している頃でした。ニルヴァーナやメタリカを聞きまくっていた時代です。ベルリンの壁撤去も、ソ連の崩壊も歴史的な大きな事件ですが、これで世界が平和になるとは、考えてませんでした。USAですとニルヴーナ、メタリカ、UKですとレディオヘッズあたりの曲を聞いても、バラ色の未来などは、1ミリも感じませんでした。一難去って、また一難が、やって来るんだろうと冷静に考えていました。

 ソ連が登場し、共産主義の国が生まれると、社会が共産主義化しないように、資本主義は、譲歩せざるを得なくなります。利潤の追求だけでなく、人々の健康、保健、福祉に配慮をする必要があります。資本主義は、修正を余儀なくさせられたと言えます。高度成長時代に労働者の賃金は、毎年上昇し、結果的に豊かな社会が出現しました。オイルショックの危機も乗り切りました。

 ソ連が崩壊し、共産主義の脅威が消滅すると、新自由主義が始まりました。佐藤さんは「新自由主義とは、政府による社会保障や再分配を極力排し、企業や個人の自由競争を推進することで、最大限の成長と効率のいい富の分配が達成されると唱える経済的な立場を指す」と説明しています。社会主義寄りになっていた修正資本主義が、より競争の激しいpureな資本主義に揺り戻されてしまったと言えます。

 資本主義は労働力を商品化します。が、この労働力は、再生産される必要があります。労働者がネカェ難民のような生活を強いられたら、労働力の再生産は起こりません。労働者が、普通に生活していける食料費、住居費、被服費をまかなえる賃金を支払ってもらう必要があります。労働者単体ではなく、家庭を持って、子供を産み、家族を養っていけるだけの金額です。が、新自由主義によって、非正規の労働者が多くなり、家族が、健康で安全、福祉に恵まれて暮らせる最低限の賃金が、保障されなくなりました。一人でカツカツ、何とか食って行くのがせいぜいで、結婚して、家庭を持って、子供を育て、健康的に暮らしていけるという状況ではありません。これが、非正規の方々が、現在、置かれている現状です。労働力を、再生産しなければ、資本主義は衰退する筈ですが、ITの大発展によって、労働力をさほど必要としない社会になりつつあります。

 米ソの対立はなくなりましたが、今、日本は、米中対立に悩まされています。中国と仲良く付き合わなければ、日本の経済は回りません。が、アメリカの言うことを聞く「約束」で、戦後が始まっています。今、日本は、究極のカメレオン状態に置かれています。

 中国は、今だに日本より経済的に劣った国だと考えている高校生が、普通にいます。帝国書院の世界史の資料集に、2015年の主要国のGDPが、領土マップで示されています。GDPの大きい国は、領土も大きく表示されています。その資料によると、日本のGDPは、中国の半分以下です。GDPレベルで言うと、日本は中国の半分以下の経済力しかないんです。これは、2015年の資料です。2021年のなうは、さらに日本のレベルは、下がっている筈です。アメリカは中国の倍くらい、日本の四倍以上です。アメリカは、そうは言っても、勝ち続けているんです。中国は、大躍進をしています。一人っ子政策のツケは、間違いなく将来回って来ますが、それまでに、中国のGDPは、世界のNo1になろだろうと想像できます。中国は、インチキな冷凍餃子とかを売っている遅れた国だという、誤った古い情報を、アップデートしてもらう必要があります。フェイクとまでは言いませんが、偏った情報が氾濫しているのは、テレビや新聞、雑誌と言ったメディアが、そういう偏った情報ばかり流しているからです。ネットニュースも同じです。客観的に正しい情報ではなく、視聴者にウケそうな情報を流します。テレビでしたら、視聴率を稼げる情報、新聞雑誌は、売り上げに直結する情報です。ネットニュースも、多くの人に見てもらわないと、広告費は稼げません。

 若者は、とにかく一度は、外国に行って、さまざまな視点から、ものごとを正しく見ることができるリテラシー能力を、身につけて欲しいと、私は思っています。

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