自#233「引きこもりに絶対に反対ってわけでもないけど、運動しないと不健康なので、外に歩きに行くぐらいは、日々のルーティーンに組み込んでもいいかな、と」

 「たかやん自由ノート233」

田中誠一さんがお書きになった「1分間ストレッチング」と云う本を読みました。冒頭で、「ハイポカイネティックディジーズ」と云う、アメリカで1961年に発刊された著書名を紹介しています。ハイポはラテン語で「何もしない」、カイネティックは「運動」、ディジーズは「病気」です。訳すと「運動不足病」。運動不足病を、三つのタイプに分けています。一つ目は背痛、腰痛のような整形外科的な運動不足病。二番目は、肥満、動脈硬化、心疾患と云った内科的な運動不足病。三番目は、精神障害、うつなどの精神衛生学上の運動不足病。都市化と情報化の進んだ先進諸国には、運動不足病と云う一種の現代病が、蔓延していて、莫大な数の病人を生み出しているので、取り敢えず、短時間のストレッチングを実施して、病を防いで欲しいと、著者は力説しています。ストレッチングのメニューをマスターするのが大変だったら、歩くだけでもいいそうです。

 私は、土日月の三日間、自宅で過ごしていて、火水木金の四日間は、登校しています。週四日勤務の非常勤講師です。学校に通っている四日間の方が、自宅にいる三日間よりも、健康的です。この原因は、はっきりしています。自宅で過ごす三日間は、ほとんど歩いてなくて、運動量が少ないんです。朝起きて、腹筋を120回やり、2キロ(わずか2キロです。20キロとかではありません)のダンベルを右手と左手で、100回ずつ上げて、その後、週刊誌で紹介しているような簡単なストレッチングをやって、最後、スクワットを10回やります(わずか10回です。ジャイアント馬場は、アメリカに武者修行に行ってた頃は、毎日、3000回スクワットをやっていたそうです)。自宅での運動はこれだけです。夕方、玉川上水沿いを、40分ほど走ります。自宅前の広場に戻って来て、広場にある鉄棒を使って、懸垂を20回やります。この懸垂も、顔の部分だけを上げ下げする、何ちゃって懸垂です。私の長女は、ビデオを観ながら、毎日、カービー体操を40分くらいやっています。You Tubeには、運動系の動画コンテンツなど、いくらでもあると承知しています。が、動画を見ながら、運動をしたいとは思わないんです。私にとって、動画とは、つまり映画です。映画は、静止してwatchingすべきものです。

 学校に通う日は、歩いています。自宅から最寄り駅の武蔵境まで15分くらい歩きます。勤めている学校は、埼京線の板橋駅からやはり徒歩15分くらいの距離です。学校で、私が常駐しているのは4階の社会科準備室です。コピー機も印刷機も2階の職員室の隣にあります。私は、3年生を教えていますが、3年の教室も2階です。分掌は、保健部に所属しています。保健部のミーティングは、1階の保健室で行われます。つまり、学校にいる間は、階段をしょっちゅう上がり下がりして、廊下の移動もしているんです。前にいた、J高校では、ちょいちょいエレベーターを使っていましたが、65歳で、J高をリタイアした時、エレベーターは封印しました。さすがに、42階とかに行かなければいけない時は、エレベーターを使いますが、そんな高層ビルに出かける機会は、もうほぼほぼ皆無ですし、4月1日以降、一度も、エレベーターに乗ったことはありません。ですから、あのタワーオブテラーのような、すーっと落ちる感覚は、enjoyできなくなってしまいました。が、プチタワーオブテラーのenjoyよりも、健康の方が、はるかに大切です。去年の夏、昔、お世話になったO先生が、J高にいる私に会いに来て下さって、その時、「自分は、60代の頃は、階段は1段飛ばしで上がっていた」と、教えられたので、その日以来、私も階段は、1段飛ばしです(下りは膝を痛めるので、1段ずつ丁寧に下っています)。

 階段の上がり下がりも含めて、歩くことが、健康を維持するための基本だと、週休三日の生活が始まって、あらためて痛感しました。私の母親も、病院に入院し、歩けなくなって、ベッドに寝たきりになってからは、つるべ落としのように、どんどん体力が低下して行きました。

 田中さんは、人間が歩きを獲得するまでのプロセスを説明しています。生まれたばかりの赤ちゃんは、まだほとんど動けません。わぁーわぁー泣くだけです。その内、赤ちゃんは、頸反射、つまり首の筋肉が捩(ねじ)れるようになります。この頸反射によって、脳の発達が促されます。脳がある程度の水準まで作られると、体移動、つまり寝返りを試みるようになります。まず最初は、首を捩って、次に背中を捩り、さらにお尻を捩りながら、寝返りを成功させます。寝返りができるようになると、次は座ることにchallengeします。重たい頭をかっくんかっくんさせながら、お尻の筋肉を使って、ペタンと座ります。このあたりまでに、胴体も形成されています。ここまでが、無足獣期と言われる第一段階。次は、第二段階の四足獣期。つまり、ハイハイの時期に移行します。むちゃくちゃに手足を動かす状態からスタートし、きれいな交互歩行のハイハイができるようになると、ハイハイは完成です。次に第二段階の四足獣期から、最終段階の二足獣期に移行します。二足獣期は、まずモノにつかまって、立ち上がるとこからスタートします。その後、卓袱台(もうちゃぶだいとかは、ないかもです)の端につかまって、ヨチヨチ歩くようになります。いわゆる伝い歩きです。これをしばらくやった後、二足歩行が始まります。個人差はありますが、だいたい、満一歳の誕生日前後です。最初は、手を叩きながらヨチヨチ歩きます。これは、身体のバランスを取るためです。手の動きで、バランスを調節しています。13ヶ月目くらいに、手が下がって、二足歩行が完成します。人間の体の筋肉と脳は、お互いに刺激し合いながら形成されて行きます。首の筋肉を動かすことで、脳が発達し、脳が発達すると、背中の筋肉が動くようになり、背中の筋肉が動くことで、再び、脳は成長します。運動と脳が、交互に刺激をし合いながら、お互いに発達して行くんです。

 ちなみに、人の歩行は裸足で歩くのが大原則です。エルメスの靴下(あるかどうか知りませんが)などはNGです。石のある河原や、傾斜のある草原、砂浜などを、裸足であるく経験をすることによって、足裏筋が発達し、同時に脳も発達します。靴やサンダルを履かず、裸足で園庭内を遊ばせている幼稚園があったりしますが、これは、人類が二足歩行を始めた原点に立ち返って、子供たちを成長させようとしているんです。

 旧ソ連が開発した、ザリヤーツカと云うトレーニング方法があります。ザリヤーツカと云うのは、簡単に言うと早朝の散歩です。基本、歩いて散歩をしながら、ちょいちょいストレッチングなどをします。菅首相も、官房長官時代は、朝の散歩をしていました。朝、起きた時、腹筋を100回やっていますから、ストレッチングなども散歩の間に挟んで、自分なりにアレンジした、ザリヤーツカを実施していたと、推測できます。まあ、ですが、特別、時間を設定しなくても、通勤中に、ザリヤーツカを行うことは可能です。電車の中では、つり革につかまって、爪先立ちをしたり、電車を待っている間に、地味目のストレッチングをすることは、普通にできます。一日に一回くらいは、外に出て歩かないと、健康を維持するだけの運動量が、不足すると考えられます。ですから、完全引きこもりは、やっぱり不健康なので、せめて散歩くらいはした方が、望ましいと言えます。

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