自#686「パソコンが導入されて、仕事が簡略化され、便利になった筈なのに、逆に仕事量は、どんどん増えています。『この矛盾は、何故?』と、やっぱり思ってしまいます」

   「たかやん自由ノート686」(自己免疫力32)

美容ジャーナリストの齋藤薫さんが、新聞に「日本人は世界一、座りすぎ?」という警告のメッセージをお書きになっています。世界で一番座っている時間が長いのは、日本人で、その平均時間は、7時間だそうです。ガテン系の肉体労働をしている人は、座ってません。立って仕事をしています。エッセンシャルワーカーと言われている人たちも、日々、身体を動かして作業をしています。普通の会社勤めのサラリーマンは、デスクワークが多く、基本、座っぱなしです。「デスクワークの座り方は、エコノミークラス症候群と同じリスクを負う」と、齋藤さんは指摘しています。
 人生で、ごくごくわずかですが、12、3時間のエコノミークラスの狭い座席での座りっぱなしのフライトを経験しました。あの窮屈な姿勢で、アイキャップを被って、眠るわけですが、この眠りは人生最低の眠りだなと、その時、痛感しました。私は、学生の頃に、鈍行列車で、日本各地を漫遊しました。が、座席に座りぱなしで眠るといったことは、まずありません。どっかの駅で、途中下車して、駅の構内(今と違って24時間openでした)の床にビニールシートを敷いて寝たり、列車の床に横たわったり、多少、窮屈ですが、四人がけのボックスを全部使って、身体を折り曲げて寝たりしていました。
 高校生は、普通に机に突っ伏して寝ます。その窮屈な姿勢で眠るのは、かなりしんどいし、心身に負荷をかけすぎだろうとは、懸念してしまいます。
 高校の先生方の仕事も、昔に較べると、はるかに量が多くなりました。パソコンを使い始めてから、より一層、物理的に仕事量が増えました。パソコンを導入すると、パソコンのソフトが、事務的な仕事を簡略化してくれて、その自由になった時間を使って、生徒と面談したり、教材研究に打ち込めたりするという前フリとかもあって、パソコンは導入された筈ですが、パソコンの導入、普及とともに、事務的な仕事量は、間違いなく、等差数列的に増えて行きました。この矛盾を、快刀乱麻を断つように、すぱっと、誰かに説明して欲しいって気も少しはします。
 職員室に、一人一台ずつ、貸与されたパソコンあります。教材研究のために、希望すれば、移動できるノート型パソコンを、もう一台、貸与されます。これは、Wi Fiでネットに繋がっていますから、教室でも、会議室でも、準備室の自分の机の上でも、どこに持ち出しても使えます。私は、授業でプリントや試験問題を作成する時のみ、職員室のパソコンを使用しています。学校のパソコンの利用時間は、一日、せいぜい1時間くらいですが、多くの先生方は、二台のパソコンを使って、職員室や準備室にいる間は、作業をしています。パソコンを使って仕事をするというスタイルが、おそらく定着したんだろうと想像できます。一般のサラリーマンの場合も、基本、きっと同じです。テレビで、オフィスの光景などが映し出されると、ほぼ全員が、パソコンに向かってたりします。
 パソコンの弊害について、ここで議論をするつもりは、全然、ないんですが、私が見る、すべてのパソコン利用のsceneで、仕事をされている方は、座っています。スタンディングの机とかも、流行っているという話を聞いたりもしますが、私は、リアルに自分の目で、スタンディングで、パソコンを使っている場面を見たことは、一度もありません。スタンディングの机は、雑誌に掲載されている写真で見て知っているだけです。
 私自身は、はるか昔から、スタンディングの机を使っています。高校時代は、使ってませんでしたが、本は、基本、高校生の頃から、立って読んでいました。社会人になって、すぐに整理ダンスと、足の高さを調節する踏み台を購入して、自宅では整理ダンスを机替わりに使用し始めました。最初に買ったワープロは、シャープの書院でしたが(勤め始めて3年目くらいに発売されました)当時、30万円くらいだって書院をボーナスを貯めて購入して、スタンディングの机の上に置いて、キーボードを叩いていました。私が社会人になったのは、43年前です。つまり私自身は、もう40年以上、スタンディングの机を使っています。
 座りっぱなしが、健康のために望ましくないのは、明白です。血液を滞りなく循環させるためには、下半身を動かす必要があります。太股から下の筋肉を動かすことによって、血液は過不足なく、スムーズに、身体の隅々にまで行き渡ります。齋藤さんは
「狭い座席に長時間、ずっと同じ姿勢のままでいると、血行が滞り、血管に血の塊が作られて、痛みや腫れが生じる(深部静脈血栓症)。また、それが肺の血管につまると、呼吸が苦しいなどの症状を引き起こし(肺塞栓症)、症状が重いと、死亡の可能性すらある。しかも日々の積み重ねで、心臓や脳、血管の疾患、肥満、糖尿病などのリスクも高くなる」とお書きになっています。
 座りっぱなしの状態が、免疫力を下げるのは、間違いないです。立って歩くことによって、免疫力は向上します。私は、人類が二足歩行を始めたのは、ある意味、免疫力を高めるためだったのかもとすら、勝手に解釈しています。
 禅寺の修業の基本は坐禅です。当然、座っています。が、座りっぱなしではありません。ずっと座りっぱなしではなく、ちょいちょい立って、歩いています。これを、経行(きんひん)と言います。長時間の座りっぱなしは、心身に悪影響を与えるということを、昔の人は、経験で知っていたんです。一時間、座って5分くらい休憩。5分の休憩のあと、また一時間座って、二時間座ったら、堂の廻りをぐるぐる歩きます。
 その他、作務などの仕事は、立って作業をします。小鳥さんに餌をあげたり、庭の掃除をしたり、薪を拵えたり、床の拭き掃除をしたりなど、身体を動かす作業は、沢山あります。無論、これらもすべて修業です。禅寺の修行で座っている時間は、平均的なサラリーマンよりもはるかに短いと推定できます。
 学校の先生は、一日の半分は、教室で授業をしますから、座っている時間は、そう長くはない筈ですが、15、6年前に、座るための教卓が導入されました。以前の教卓は、先生は、黒板の前に立って授業をするものだという前提で、高さが調節されていてたんですが、今は、教卓に座って、パソコンとプロジェクターを使って、授業を実施するというケースが多くなりました。学校の先生も、サラリーマン並に、座りっぱなしのケースが多くなったということです。
 私よりはるかにお若い先生でしたが、知り合いの先生が、学校での勤務中に、エコノミー症候群に陥り、救急車で、病院に搬送され、お亡くなりになりました。50代の前半くらいの年齢でした。座りっぱなしの環境を、どうにかして、改善する時期に、来ているとは私は思っていますが、残念ながら、学校にまでは、スタンディング机などのムーブメントは、まだ届いてません。

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