自#978「東北大の川島研究室が推奨する前頭前野のトレーニングは、音読と100から、7を次々に引いていく、単純計算です。単純計算は、苦手ですが、古本屋で、本を買う時は、暗算で合計価格をきちんと出した後に(無論、消費税も計算して)購入するようにしています」

         「たかやん自由ノート978」

 朗読会の8月の例会に出席した。私は、毎回、源氏物語(桐壺)を読んでいる。朗読しただけでは、伝わりそうもないので、少しずつ区切って、解説を加えながら読んでる。つまり、古典の授業と同じスタイル。
 古典以外に、声を出して読みたい日本語の文章はない。ただ、『ゲド戦記』とか『ナルニア国物語』『指輪物語』などのファンタジーを、児童のために読んであげることは、意義のあることだと理解している。が、子供は苦手だし、読む機会はないと確信している。
 他人の朗読するのを聞くことは、何の抵抗もない。朗読する文章は、コピーしたものが事前に配られるが、もの心ついた頃から、ずっとラジオを聞いていたから、文字で確認しなくても、普通に理解できる。
 参加者は、私より年輩の女性が多い。そういう方々は、同世代の男性より、はるかに気配りができて、周囲のことを考えながら、朗読する作品も選んで来ている。そういう年輩の思いやりのある方がいて、私のような、気配りしない、好き勝手なことをする、アウトサイダーもいて、まあ、みんな違っていて、みんないいと、simpleに考えている。
 が、しかし、人生のどの局面においても、私は、一般的に言って、ノーマルで普通であったことは、一度もなかった。常にメジャーな本流からは外れた、アブノーマルなアウトサイダーだった。小さい頃から、今に至るまで、一貫して同じ。いいことだったのか、or notだったのかは別にして、アイデンティティのブレがなく、生きて来たとは言える。
 気配りできる、私よりひとまわり上のIさんは、内館牧子さんがお書きになった、「ちょっとストレス」というエッセーを朗読された。
 内館さんは、かつて東北大の川島隆太先生に
「前頭葉にいいことを何かやってますか?」と聞かれたらしい。認知機能の低下を防ぐため、また、罹患の認知症を少しでも改善するためには、前頭前野の訓練が効果的だというのが、川島先生の発表された理論。
 川島先生は、毎日、5分間「音読」を続けるだけで、血流が増え、前頭前野の訓練になると、内牧さんに伝える。川島先生は、老人介護施設で、実験のための訓練を実施してもらう。福岡県の介護施設で、77歳から98歳までの44人に、音読と一桁の単純計算を、毎日、15分やってもらったところ、寝たきりの2、3割が、二ヶ月ほどで、排泄の自立が、起きた様子。
 寝たきりで、排泄の処理も、他人任せで、自分自身は、何もしない方が、はるかに楽。が、面倒なことを敢えてやる、楽なことをしない、苦労をするといった試練にchallengeするためには、前頭前野が活発に働いていることも必要。
 川島先生は、音読する文章は、夏目漱石や芥川龍之介らの近代文学が、リズム的に最もいいと仰っている。が、これは、違うなと、私は疑問を持っている。この二人の文章のリズムが、いいとはとても思えない。それに二人とも、世界観が暗い。宮沢賢治の童話とか、泉鏡花の妖怪ものとか、志賀直哉の短編とか、リズム感があって、読み易い本は、探せば、いろいろある。夏目漱石と、芥川龍之介をフューチャリングする必要は、まったくない。川島先生は、新聞や雑誌でもいいと補足されているが、これは新聞、雑誌に連載をお書きになっている内館牧子さんへのリップサービスだと思う。
 楽器の演奏は、指先を使うので、認知症発症の予防になると言われている。が、アメリカのそう少なくもない数のミュージシュンが、老後、アルツハイマーやパーキンソン病とかで、苦しんでいたりする。まあ、あっちのミュージシャンは、ほとんど全員、若い頃、ドラッグに手を出している。そのツケが、回ったということも、充分、考えられる。
 ドラッグに手を出すのは、ドラッグが異次元、異世界を見せてくれるから。オリジナリティ溢れるcreativeな作曲をするために、ドラッグが必要だと考えているミュージシャンは、多いと思う。日本は、ドラッグには非常に厳しい国。私は、生理的に薬は嫌いだから、当然、ドラッグには徹底的に反対。自分の心身を破滅させてまで、異次元、異世界を見る必要はまったくない。
 画家や書道家は長生きをする。画家も書道家も、ドラッグを使って、異次元、異世界を見る必要などは、さらさらない。ドラッグでトリップしている状態で、絵や書の制作ができるとも思えない。
 シュールレアリズムは、無意識の世界を表現したものだと、一般的には言われている。シュールレアリズムの大御所のサルバドールダリが、ロンドンに亡命中の、無意識の世界の大御所のフロイトに会いに行ったことがある。1939年だから、フロイトの死の直前。フロイトはダリに
「古典的絵画に、私は潜在意識を求めるが、シュールレアリズム絵画には、意識を求める」と、ダリに語ったらしい。シュールレアリズムは、無意識を描こうとしているのかもしれないが、無意識を描こうと意識した瞬間、それはもう、無意識なものとは言えなくなる。意識とか無意識とか、そんなことをまったく考えないで、純粋な気持ちで、描いている絵の中に、無意識は潜んでいるという意味だと思う。フロイトの理論に従えば、無意識の絵を意識的に表現することは、不可能だってことになる。
 内館さんは、前頭前野にいいことをしていると川島先生は、仰ったらしい。指先を動かすことは、大切だが、無目的に指先を動かしても効果はない。ボケ防止のために、クルミを掌で転がしても意味はないらしい。内館さんは、今だにすべての原稿を手書きでお書きになっている。6Bの鉛筆と消しゴムを使って、原稿用紙に大河ドラマや連続ドラマの原稿を何千枚に書き綴る。内館さんは、脚本家デビューして、35年が経過しているが、今だにパソコンはお使いになってない。原稿は手書きで、すべてファックスで送っている。
 私は学校で、週一回、先生方に届いた郵便物の仕分け作業をやっている。この仕事は、別段、嫌じゃない。これをやると、先生方が、日常的に何をされているのか、はっきり理解できる。学校の全体像が把握できるってことは、悪いことではない。
 学校に届くファックスは、激減した。ファックスが一枚も届かない日も結構ある。大会の案内、エントリーなどは、もうすべてネット上でやり取り。ファックスは、ほぼ社会的に使命を終えている。が、手書きで、ファックス送信をしている人は、前頭前野のためには、良いことをしていると言える。
 私も、原稿はすべて原稿用紙に下書きする。前頭前野の活性化を図るためにも、これは、続けなければいけないと自覚している。

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