自#679「クスリと書いて、リスクと読む、まあベタですが、事実ですから、説得力はあります」

       「たかやん自由ノート679」(自己免疫力25)

 このところ、オリンピックのフュギュア女子は、金メダル候補筆頭のカミラワリエワ選手のドーピング疑惑問題で、ずっと大騒動していました。私は、スポーツの大会にも、ドーピングにも、さして興味を持っていませんが、一体、誰が何のために、こんな大騒ぎをしているんだろうと、素朴な疑問を持ちました。ドーピング問題を明らかにし、黒い霧に包まれたロシアのフィギアスケートのスポーツ界を、よりクリーンにするという「正義」のための大騒ぎだとは、とても思えません。「角を矯めて牛を殺す」という俚諺がありますが、今回の大騒ぎは、まさにこの俚諺を実践している、ドタバタ劇だと感じてしまいました。
 金メダル候補のドーピング疑惑というスキャンダルばかりをフューチャリングして、肝心の女子フィギュアスケートの面白さを、台無しにしてしまいました。こんなわさわさした状態で、どうせ金を獲る選手は、薬とか使ってるんでしょうと、疑惑の目でテレビ中継を眺めても、さして面白いとも思えません。スポーツは、ルールがきちんとあって、そのルールを選手が守り、ルールに則って公正な競争をしているという信頼感があってこそ、スポーツは、スポーツとして成立します。そこの根本が崩れたら、見る楽しみは、激減し、見る意味さえ、ほぼなくなってしまいます。
 私がこの大会の主催者であれば、オリンピックの期間中は、ドーピング問題は、一切、表に出しません。オリンピックは、オリンピックとして、世界中の視聴者に楽しんでもらいます。で、オリンピック終了後、まあ何ヶ月かして(その期間に調査、検証などをして)そのドーピング疑惑がクロだと判明すれば、表沙汰にして、メダルを獲っていれば、それをチャラにします。そうすれば、オリンピックは楽しんで貰えたし、ドーピング問題も、取り敢えず、それらしく処理できたってことになります。まあですが、実際は、一切、表に出さず、隠し通すかもしれません。角を矯めて牛を殺さないためには、やたらと、正義だけを振りかざしていてもダメなんです。正義よりも、全体のバランスを配慮する方が、おそらく宇宙の摂理にかなっています。
 絶対の優勝候補と言われていたワリエワ選手は、4位で終わってしまいました。これだけスキャンダルで大騒ぎされたら、どうしたって、15歳の女の子(いや15歳じゃなくて幾つであっても)の自己免疫力は、だだ下がりになります。ミスをして転倒する、まあ心理学的に言っても、あり得ることです。結局、一般観客の我々にしても、15歳のいたいけない少女のメンタルを潰すために、自分自身も大騒ぎしてしまっているマスコミに加担してしまったという罪の意識のカケラが、心の中に残ってしまいます。オリンピックのクリーンなイメージは、大きく損なわれました。ワリエワ問題で、大騒ぎをして、テレビ局は、多少、視聴率を稼げて、利益を得たってことになるんでしょうか。正直、テレビのイエロージャーナリズムには、もうこれ以上、ついて行けないなと、ますますテレビ離れは、激しくなって、結局、ここでも、角を矯めて牛を殺す現象が、起こってしまうような気がします。
 ワリエワ選手をスキャンダルで、狙い撃ちして落とし、日本の坂本選手が、無事、メダル(銅メダルですが)を獲得して、それで、坂本選手も、日本スケート連盟も、日本人観客もhappyになれるのでしょうか。普通の健全な日本人の感覚では、後味が悪くて、このメダルは、とても喜べないと思います。日本人が、メダルを獲るために、マスコミが大騒動をしたとしたら、やはり、角を矯めて牛を殺す現象が連鎖してしまいます。
 よってたかって、世界中が15歳を批判し、いじめる、それはさすがにないなと、私も教育業界の末端の人間として思いますが、未成年とか、子供たちとか、そういう立場の弱い人間が、常に犠牲になるのが、世の中というものだという冷酷な真実も、さすがに年寄りですから、充分、弁えています。
 最後のセンター試験の直前に英語の四技能テストを、いきなり中止しました。国語、数学の記述問題見送りの決定なども、受験生という弱い立場の苦しい思いをしている高校生のことを、まったく考えてない暴挙でした。四技能も記述問題も、問題はありありでしたが、あそこまで、進行していたものを、いきなりチャラにするとかって、完膚無きまでの裏切り行為です。大人たちは、大人たちの都合でしか、モノゴトを考えません。これは、揺るぎない事実です。ごくたまに、子供時代、本当に辛い思いをした人が、大人になって、子供のことを誠心誠意、考えてくれたりしますが、そういう人は、限りなくrareです。 私は、割合、中高生の立場に立って、モノゴトを考えることができる教師だと、自分では思っていますが、それでも、教師個人の力では、どうにもならないことが、世の中にはどっさりあります(正直、どうにもならないことだらけです)。大学受験にしても、これは必要悪だとずっと、無理くり自分を納得させて来ました。一応、高3の1年間ぐらいは、頑張らせます。が、高校時代の3年間も受験勉強をする必要は全然ないし、ましてや小3の2月から勉強するなんて、crazy過ぎます。
 必要悪というのは、必要な部分もあれば、悪の部分もあるということです。受験勉強をする期間は、高3の一年間だけでいいです。それ以上、長くなると、必要よりも、悪の方が優勢になってしまいます。学力、学歴がなくても、悪に染まらず、人間として正しい生き方ができれば、人生は自ずと開けて行くし、幸せにもなれます。必要以上の悪に染まると、人生のどこかで、必ず行き詰まります。
 ワリエワ選手の検体から、トリメタジジンとLカルニチン、ハイポキセンの三種の薬物が検出されたそうです。とらの穴で、徹底的にフィギュアスケートの英才教育を、日々、受けている15歳の少女が、薬物について、詳しい知識を持っているなどとは、到底、考えられません。この三種の内、トリメタジジンは、禁止されている違法ドーピング薬物で、あとの二つは、認められている薬物だそうです。「えっ、どこがどう違うの? 薬物ってことで、一緒じゃん」と、普通に思ってしまいます。
 トリメタジジンは、狭心症などの治療に使われていて、ワリエワ選手のお祖父さんが狭心症の薬を飲んだコップを使って、何か飲料をワリエワ選手が飲んでしまったので、トリメタジジンを摂取してしまったのかもという弁明をしているそうです。どう考えても、これはウソです。で、ワリエワ選手個人が、このウソを考えついたとは、とても思えません。大人たちに操られているだけです。ロシアは、かつてドーピング問題があって、現在も、国家として、オリンピックには出場できません。選手は、個人の資格で出場しているそうです。えっ、何がどう違うのと、ここでも思ってしまいます。結局、出場できていれば、同じです。ドーピングをやったもの勝ちだし、国家ぐるみで、やっているんだろうと、やっぱり疑ってしまいます。どこの国だって、似たようなことを、ギリギリ規定に反さない限度内で、やっているんだろうと、限りなく猜疑的になってしまいます。
 私は、基本、競争を好みません。自ら積極的に、誰かと競争をしようとしたことは、自分の人生の全体を振り返ってみても、過去に一度もなかったし、これからもないと断言できます。その人らしさで、勝負すれば、それが、結局、お互いを切磋琢磨することにつながるだろうとsimpleに考えています。
 ところで三種の薬。三種の薬を飲んで、その後、どういう副作用が発生するのかなんて、それはどの研究機関も検査などしてない筈です。クスリと書いてリスクと読むと、精神科医の和田秀樹先生は、自分の著書の広告に書いていましたが、まあ、間違いなく、これは事実です。一種だけでも、リスクなのに、三種だと、リスクは、三倍のさらに三倍とかになってしまいそうです。クスリをリスクと考える、健全な良識は、やはり誰にとっても、必須です。 

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