自#980「ウチの子供たち三人は、中学卒業まで、スマホは持ってませんでした。スマホの使用は、高校生から(できれば大学からの方が望ましい)と声を大にして言いたいんですが、さすがに今の時代、それは、無理だと理解しています」

         「たかやん自由ノート980」

 東北大学の川島隆太先生が、監修された「スマホはどこまで脳を壊すか」という新書を読んだ。コロナ禍以降の新しいデーターも使って、デジタル社会に警告を発している書だと言えるが、まあ、知ってる人は、みんな承知している内容だと理解できる。
 産業革命が興った時、大量生産、大量消費の社会はNGだと、警告を発した良識人は、英国に仏国にもいた筈だが、大きな流れを変えることは、誰にもできなかった。二度に渡る世界大戦によって、この流れは、より一層、加速し拡大したと多分言える。
 2021年に発足した、デジタル庁のHRには「国民生活の利便性を向上させ、官民の業務を効率化し、データーを最大限活用しながら、安全、安心を前提とした『人に優しいデジタル化』社会を創るための施策を、強力に実施して行く」といった風な『お題目』が、書かれていると推定できる。
 デジタル社会に移行することによって、とんでもなく大儲けをする人たちがいて、実際、莫大な資金が流れている。この流れを止めることは、産業革命の流れを堰き止めることができなかった以上に、できる筈がない。70年近くも無駄飯を食い続けて来たので、いくら何でも、これくらいのことは、常識として解る。
 そもそも、私はスマホは使わない。教師現役時代は、バンドの大会にエントリーするために、名目的に持っていたが(家に置いてあったので、子供たちがゲームをするために使っていた)今は、持ってない。その前のガラケーも持たなかった。無論、ポケベルとも無縁。職場では、電話とFAXは使っていたが、現役を引退してからは、その二つとも縁が切れた。今、個人的な通信手段は、手紙のみ。源氏物語の昔に戻ったような感じで、はなはだ心地良い。
 つまり、自分ごととして、スマホの被害は受けないので、スマホの過度の使用で、脳はこんなに悪影響を受けると、脳の影の写真入りで、解説してあっても、一向に痛痒は感じない。が、写真を見て、アルコール中毒とさして変わらない影だなと理解できた。
 WHOは、アルコールやニコチンなどの特定の物質に依存することの物質依存と、ギャンブルなどの特定の行為への依存を、精神疾患として認めている。何年か前に、ゲーム障害も、精神疾患と認定した。が、スマホとか、インターネットの依存については、論じてない。あまにも、巨大な利権であるために、WHOといえども、軽々しくは、口に出せないと推定できる。
 もう10年ほど前だが、調布市にあるJ高校に勤めていた頃、教務主任のY先生が、東北大の川島先生が、実験データーを元に検証されたスマホの過度の使用が引き起こす悪影響について、プリントを作成し、それを配布して、生徒を啓蒙、啓発されていた。川島研究所の理論(以下、川島理論と略称する)のサビをひとことで言うと、三時間以上、スマホを使っていると、いくら勉強しても、その勉強の成果が消滅するというもの。今回の新書でも、新たなデーターを加えて、そのことを、再度、立証されている。
 スマホを毎日、三時間以上使うと、学習成果は消滅し、同時に脳の発達もstopする。去年だったか、一昨年だったか。スマホの害悪について書いた、アンデシュハンセンの本が、世界中でベストセラーになった。川島理論は、世界のトップレベルの学会で発表したとしても、インパクトを与えるものだったが、それと較べると、アンデュシュハンセンさんの理論は、大学の卒論程度のものだと、正直、思った。川島理論が、あまりにも真理に迫っているので、日本の関係者も、世界のその方面の方々も、なかったものとして、黙殺していると推定できる。川島理論を、押し広めれば、GAFAがすべてぽしゃってしまう。そんなことをしたら、世界の経済は、大混乱に陥る。地動説が、どんなに正しくても、容易なことでは認められなかった。川島理論が、日の目を見ることは、今後もないだろうと想像できる。
 川島理論は、タブレット学習では脳が働かないし、オンライン会話では、脳と脳とが同期しないと批判している。が、これは、おそらく世界のITエンジニアのトップクラスの方も、薄々、気がついている事実。オンライン会話は、自分自身がやったことがないので、意見は言えない。タブレットを使った学習は、勤めている以上、やれと命じられたら、それはやる。
 生徒に紙の辞書と、電子辞書と、どちらがすぐれているかと質問されたら、それは紙の辞書の方だと、きっぱりと返事をする。川島研究所は、紙の辞書と、電子辞書の比較実験データーを、掲載していた。紙の辞書で、苦労して引いた英単語の方が、電子辞書で、
さくさくっと検索して調べたものよりも、あとあとまで残る。
 これは、別段、難しい理論ではない。紙の辞書を引くことは、時間もかかるし、苦労もする。電子辞書は、はるかにspeedy。便利なものより、不便なものの方が、記憶には残る。より苦労した方が、人間の前頭前野をより活性化する。若い頃の苦労は、買ってでもしろという俚諺がある。たとえお金を払ってでも、苦労をしておいた方が、結局は、あとあと自分のためになるという意味だと容易に理解できる。
 スマホを毎日、三時間以上使ったら、脳の発達が止まる。スマホではないが、インターネットについて調べた、総務省の令和3年のデーターが掲載されていた。インターネットは、概ねスマホで利用すると考えられるので、インターネットの利用時間=スマホ利用時間と判断しても、問題ないと推定できる。
 インターネットの利用時間は、2013年は、77.9分だったのに、2021年は、176.8分。つまり、ギリ三時間には届いてない。あと、3.2分長く使えば、3時間の大台に乗るが、176.8分は、三時間以内なので安全(?)だと、単純に言い切ることは、無論、できない。この176.8は、13歳~69歳の平均値。20代に限ると、スマホの利用時間は、275分。つまり、4時間を楽々、オーバーしている。川島理論でいうと、20代の人たちは、脳の発達が止まっていると言える。ちなみに60代は、107分。60代が、毎日、100分以上、インターネットを見ていると知って、プチカルチャーショックを受けた。で、60代は、毎日、254分も、テレビを見ている。若者に教訓を垂れたりすることは、もちろん、できない。年寄りらしい、賢い暮らし方は、今の年寄りは、概ねしてないと断言できる。
 スマホは、中3だと88.4パーセントが所持している。中2は84.6、中1は77.3。小学5年生は65.6パーセント。半数以上の児童が持っている。小5あたりから、毎日、3時間以上使うと、小5以降、脳は、まったく発達しないことになる。これは、どう考えても、大問題。が、大問題過ぎて、おそらく、もう完全にスルーされてしまっている。 

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