自#253「中3の時、クラスに別に普通って感じの女の子がいたんですが、自分は可愛くて、美人だと、自信満々でした。今、考えると、彼女のあの根拠のない自信って、やっぱり偉大だったかもと、思ったりします」

「たかやん自由ノート253」

週刊新潮に掲載されていた、「安全入浴法」と云う記事を読みました。日本では、年間に二万人も、お風呂で急死しています。これは、交通事故の死者よりも、はるかに多い人数です。入浴できるのは、寝たきりではなく、自立した状態の方です。ついさっきまで、元気だった人が、これだけの数、突然、亡くなってしまうのは、大きな社会問題じゃないかと思います。

 私は、熱い湯船には、絶対に入りません。手が湯に触れて熱いと、リスクを感じます。若い頃は、結構、サウナに行ってましたが、30歳で上京してからは、サウナには行ったことがありません。「サウナで整う」って感じは、分からなくもないです。が、サウナ室の温度は高すぎて、やはりリスクを感じます。激熱のサウナ室から、水風呂に直行する、この究極のギャップが、ある種の快感をもたらすと云うことも、理解できます。が、快感は多くの場合、リスクと隣合わせだったりします。

 ここまで書いて、思い出しましたが、子供の頃、お風呂でどっかの爺さんが、亡くなったみたいな話を聞いたことがあります。が、お風呂で死ねたら、大往生だみたいな、大人たちの感想の尾ひれも付いていました。昔は、人が亡くなると云うことは、結構、普通のことでした。案外と、あっけなく人は死にました。私が子供の頃は、人生50年と言われていた時代に近かった筈です。還暦を過ぎたら、次々とお迎えが来ると云うイメージでした。人が、どんどん死んで行けば、死にも慣れます。昔は今のように、死を隠して遠ざけていた文化世界ではなく、危篤状態の病人を家族が取り囲んでいると云った気配も、家の外から窺い知ることができるような、死が日常化されていた世界でした。死に慣れていたら、特攻隊で敵艦に突っ込んで行って死ぬことも、普通にできます。今のように、死が遠ざけられて、死が怖いと云うworldとは、大分、違います。人間はいつ死ぬのか分からない、常ならぬ存在であると云う常識は、意識はしないまでも、無意識の文化基盤の中で、しっかりとshareされていたと思います。

 私が、小5、6の頃過ごした、伯母に家には、お風呂がありました(母親とアパート暮らしをしていた頃は、一人で銭湯に行ってました)。そのお風呂は、家の外にある五右衛門風呂でした。当然ですが、薪で風呂釜を焚きます。薪は近所のよろず屋で買って来ます。最初に焚きつける時は、細い薪じゃないと火がつきませんから、鉈(なた)で薪割りをします。小5、6の私は、普通に鉈で薪割りをしていました。燃えつき易いように、裏山で松の枯れ葉を集めて来たりもしました。家の外にある五右衛門風呂は、冬場は使用しません。冬になると、近所の伯父の家に行って、入浴していました。そこは、戸外の五右衛門風呂ではなく、家の中にある、普通のお風呂でした。冬場は、外が寒すぎるんです。地球は温暖化していると言われていますが、それは、自分自身の経験からも、実感できます。夏の暑さは、今の方が激暑ですが、冬の寒さの方はかなりsophisticatedされました。昔の冬は、南国土佐と言えども、激寒でした。冬場に外にある五右衛門風呂を使っていると、激寒の大気と、激熱の五右衛門風呂とで、ヒートショックを起こしてしまって、事故が発生すると云うことだったんだと思います。

 ちなみに、五右衛門風呂は鉄でできています。お風呂には丸い板が浮いています。その板を、バランス良く踏んで、釜の底に沈めながら、湯船に入ります。板を踏み外したら、釜の熱い鉄板で、足裏が火傷してしまいます。身体が、鉄の釜に触れないように、細心の注意が必要です。鉄の熱伝導率が高いので、湯船の温度がとんでもなく高かったりします。熱い湯船から出て来て、激寒の大気に触れると、ヒートショックを起こし、心筋梗塞や脳卒中で倒れる、まあ、これはあるあるな事故だったんだろうと思います。

 が、令和なうの人たちは、戸外の五右衛門風呂に入っているわけではありません。家の中では、普通に暖房を使っていますし、セントラルヒーティングだったりもします。家の廊下と風呂場との温度差は、それほどはない筈です。ですから、脱衣場で倒れてたりする人はいないそうです。死者の大半は、湯船の中で発見されています。これはお湯が熱すぎて、脳卒中や心筋梗塞を引き起こしているわけではなく、体温が急上昇して、熱中症状態になって、意識障害が起こって、最後、湯の中に沈んで、死に至ってしまうそうです。つまり、お風呂で死亡するのは、ヒートショックによる脳卒中、心筋梗塞が原因ではなく、熱中症が原因だと、記事は結論付けていました。

 だったら、湯船に入らなきゃいいと云う風な単純なことでも、ないそうです。人間は、入浴によって温熱効果を得ると、血流の流れが良くなり、睡眠の質が高まり、免疫力の向上も期待できるそうです。「毎日入浴」は、やはり心身ともに良い影響を与えます。つまり、入浴するのも危険、入浴しないのも危険。前門の虎、後門の狼ってsituationに、人は置かれているわけです。モノごとは、何ごとも、そう簡単じゃないなと、改めて人の世の真理を、再確認してしまいました。望ましい入浴法は、41度以下のお湯で、10分以内だそうです。その10分間も、最初の5分、上がり湯の5分と、分割浴の方が、リスクは低そうです。

 ちなみに、私は、毎日、髪を洗い、シャワーも使いますが(熱があっても、髪は洗います)別段、熱い湯じゃなくても、湯船そのものには、もう入りません。家族で温泉旅行に行っても、浴槽に入ったことは、ほとんどないです。自宅は、no 暖房、no 冷房のエコなシステムですから、冬は寒いです。廊下も脱衣場も、風呂場も寒いので、ヒートショックは起こりません。が、湯船に入らないので、血液の流れが良くなって、免疫力がupすることは、期待できないかもしれません。子供の頃、先輩たちから、耳にタコができるほど聞かされた「気合いと根性があれば、何でもできる」と云う教えは、割と金科玉条だったりします。何でもできるとは、さすがに思いませんが、気合いと根性があれば、免疫力は、そこそこupできると信じています。こういうものは、根拠がなくても、信じているもの勝ちです。

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