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"映えない"けど20年以上のロングラン!「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の魅力とは?

今の世の中、どんな出店やイベントでも、集客を増やしたければ、会場の中に必ずや映えの要素を作っておき、来店者のSNS投稿を促すのがマーケティングの常套手段であるのは皆さんご存知の通りです。

しかし、そんなご時世にあって、全く映えない空間で23年間、延べ23万人以上を集客してロングラン開催を実現している驚きのイベントがあります。それがダイアログ・イン・ザ・ダークです。そんなことがなぜ可能なのでしょう。主催の志村真介さんの著書や、筆者が2022年の12月に初体験してたレポートなどを通じて、その理由を探って行きたいと思います。

ダイアログ・イン・ザ・ダークの歴史は?

ドイツ盲人協会のハイネッケ博士が、目が見えない人たちと見える人たちが互いを認めて対等な立場で接することができる様に部屋の明かりを消すイベントを考案。1988年にドイツでスタートし、現在は世界各地で開催されている。日本での初回の開催は1999年で、その後10年間は年に1回の不定期開催で実施され、現在は外苑前と竹橋で常設開催中である。
主催の志村真介さんは1993年に日経新聞の記事でダイアログ・イン・ザ・ダークを知り、イタリアを訪れてイベントを初体験した後、日本でも実施したいという強い意志を持たれて支援者や仲間を募り、数々の壁を乗り越えて日本初開催から今にいたるまで活動をリードされている方です。どんな壁だったのかを知りたい方は志村さんの著書「暗闇から世界が変わる」に詳述されているので手に取ってみてください。そんな予想外の壁が…と思わされるエピソード満載で一気読みできます。

実際のダイアログ・イン・ザ・ダークはどんな体験だった?

行ってみたい方のために、ネタバレ少なめの概要のみでお伝えします。

  • 参加したい時間を指定して、オンラインで予約を行います。

  • 現地の受付では免許証などで本人確認がありますので持参をお忘れなく。

  • 予約した時間になったら、スマホなど光るデバイスなど持ち物をロッカーに入れて、会場の入り口に集合します。会場と書きましたが、中がどうなっているのかを知るためのマップはどこにもありません。

  • 参加者が集まったら、アテンドさん(全盲のスタッフさん)とご挨拶。参加者はこの時は全員で6人でした。各自、自分に合った長さの白杖を選び、いよいよ入場します。

  • 入り口の扉をくぐると、少し薄暗い部屋に入ります。このくらいの明るさはあるのかぁと思ったのも束の間、6人はアテンドさんに連れられて、純度100%の漆黒の中へ、杖と音と触覚を頼りに一列になって入っていきます。

  • 会場の中には葉っぱが敷き詰めてある場所やスロープになっているところ、階段やベンチ、テーブルなどがあり、それらをチームで「ここに〜があります」「こっちです」「アテンドさんどこ〜!」とか情報交換しながら進んで行きます。

  • ただ歩いて行くだけでなく、各所で企画があって、アテンドさんのリードでチームはみんなで協力しながらその企画を実行します。常に何かをやってるだけでなく、暗闇の中でゆっくりする時間もありました。

  • イベントの最後は、出口の手前で、少し光に慣れてから、会場を後にします。

ざっとこんな流れです。
これが、90分で3800円の体験なの・・・?と思われた方が多いのではないでしょうか。。。わかります、わかりますよ。。。この次に、本イベントで個人的に心揺さぶられたポイントを概念的にお伝えいたしますので行くか判断される参考になればと思います。

ダイアログ・イン・ザ・ダークの体験価値は?

あくまで筆者が体験した感想になりますが、ダイアログ・イン・ザ・ダークの体験価値を一言で表すなら、ニュートラルな自分に戻れるイベントだと思います。すなわち、この空間に踏み入った瞬間、社会の中で自分が持っていると思っている属性をパーフェクトに手放すことができるという稀有なエンタメ・イベントということです。

この暗闇に足を踏み入れた瞬間、一緒に入った方々の年齢、服装、髪型、身長、表情といった情報を得ることができなくなりました。そしてイベントの最中は、とにかく互いをサポートし合うことに集中しているので自然と関係性がフラットな対話のみが行われました。助けられ、助け返すことだけに集中できる時間がそこにはありました。今思い返してもレアな時間だったと感じます。

また、一緒に入った方々との関係の他に、アテンドさんとの関係についても個人的にはイベント前後で大きく変化がありました。入り口の前でアテンドさんからイベントの説明を聞いている間は、僕は正直なところアテンドさんに対して「あ、この方は周囲の情報が少ないぞ。それなら返事とかは大きな声でしよう。何かあったらサポートしよう。」とか考えていたんですが、中に入ってからはもう立場(?)が大逆転です。アテンドさんのスムーズな身のこなしや(実際には見えてないのですが声の移動で感じられます)、僕たちの位置を把握する能力の高さはハンパなくて、僕は勝手に「暗闇の大先輩さま!!!」って思いながら迷った時は懸命にアテンドさんの名前を呼んでリードしてもらいました。星の王子さまの名言を思い出します。

On ne voit bien qu'avec le coeur. L'essentiel est invisible pour les yeux.

心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。

Antoine de Saint-Exupéry

「星の王子さま」サン・テグジュペリ著

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、かんじんなことを見えやすくしてくれる装置なのだと思います。

ダイアログ・イン・ザ・ダークはどんな人にオススメ?

個人的には、中学生や高校生の必須科目になっても良いのではと思ってるくらいなのですが、特に下記に該当する方に体験をお勧めしたいです。

  • 日中や寝る前にスマホを見る頻度が多いと実感してる方
    →スマホなし地図なしで未知の探検を行う体験をぜひ。

  • 職場や学校、部活、などでの人間関係に少し違和感がある方
    →何が気にするべき情報なのかについて再考できる体験をぜひ。

  • ネット記事やSNS、TVニュースの情報に煽られてるなと感じてる方
    →静けさを再発見できる体験をぜひ。

  • これまで、全盲の方と話をした経験が無い方
    →ほとんどの方が当てはまるのでは。暗闇の先輩との対話をぜひ。

  • アートや音楽、デザイン、映像、ファッションなど視覚、聴覚、触覚に関わるお仕事をされている方
    →表現、モノづくりとは?を新しい角度であらためて思考するきっかけが得られる体験をぜひ。

お心は決まりましたでしょうか?
ダイアログ・イン・ザ・ダーク(竹芝)の空席情報の確認、ご予約はこちらのサイトからどうぞ。


おまけ

ダイアログ・イン・ザ・ダークHPより転載

ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンのロゴデザインは、good design company 水野学さんのお仕事だそうです。水野さんがイベントを実際に体験されて、文字が見えている様で見えないこのロゴを発案されたというエピソードが「暗闇から世界が変わる」に記載されていました。


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