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シャビーボーイズ新曲について

最初に本多さんから、ロックンロールの30周年に合わせてTHE CAMPとの再結成ツーマンをやらないかという話をもらった時、僕は、「ダメ元でメンバーに話してみます」と答えた。
もうあのバンドは終わったのだからと、どこか他人事のように僕は捉えていた。
期待するのが怖かったのかもしれない。
ところがメンバーと話してみると思いのほか話は進んでいき、THE CAMPとのツーマンならと、今回のライブの開催が決まった。それが10月の始めのこと。

その時から僕はずっとそわそわしていた。
楽しみなのか不安なのかも分からず、ただそわそわしていた。

そして最初のミーティングが行われる。
できそうな曲ややりたい曲を精査していく中で、新曲を作るか否かという話題になった。
誰もそんなこと確約したくはないし、できたらやろう、ぐらいのところに落ち着く。
「作るならピーターか俺だよね。」と言った気がする。

それからひとりで何度か曲作りと向き合ってみたけど、僕は一行の歌詞もメロディも書けなかった。

そんな中、当時お世話になった人と電話をする機会があり、ふと、「新曲をやろうと思ってるんですけどできてなくて…」と僕がこぼした。すると、「え、新曲やろうとしてるの?」とその人は言った。
「これからのレコーディングやライブ活動が決まってるわけでもないのに、やったところでお客さんはその先の応援もできないし、いい曲でもダメな曲でも困る。」というようなことを言われて、僕は、「確かにそうだな」と思った。

それをピーターに伝えると、彼は答えた。

「んー、まあわかるけど、作るより作らない方が簡単だよね。」

……かっこいいこと言う。

やるだけやってみて、できた時にやるかやらないか判断すればいいんじゃない?と。

僕はまた、「確かにそうだな」と思わされ、曲作りに挑むことになる。

しかし、やっぱりどうしても、一行も書けない。

そうこうしているうちに年が明け、1月の最後のスタジオが終わる。
曲はまだできていない。
本番まではあと2ヶ月もない。
次の練習でもできてなかったらもう無理だよね、と思ったし、メンバーにもそう言った。
ピーターは東京に住んでるから、曲ができたとしても、月に1、2回しか入れないスタジオではアレンジを固めるのも難しいのでは、と判断した。(月に1、2回も名古屋に帰ってきてくれるのも凄いが。)

しかし2月の最初のスタジオの日。
今までの曲の再確認や調整がひと通り終わった残り時間30分ぐらいのところで、「曲作ってきたんだけど。」とピーターが言った。

「もっと早く言ってよ!(時間ないのに!)」と僕は言った。もう無理だろうとどこかで諦めてたからこそ、僕は新曲の話題を出さなかったんだと思う。

そこでピーターは新しい曲を2曲も!歌った。僕のギターを弾いて。

解散してからも彼の曲を聴いていたけど、2曲ともドキュメンツ(彼がシャビー解散後に組んだバンド)でもソロでもない、シャビーボーイズの曲だと思えたのが不思議だった。

2曲のうち、やるならYou&Iの方かなということになり、その場で録音して持ち帰る。
すぐに僕がアレンジをしてメンバーに送る。
コードも少し変えてハモリも全部決めた。

そこでふつふつとまた気持ちが湧いてくる。
「……もう一曲もめっちゃいくないこれ?…めっちゃやりたくない?」

スタジオで録ったピーターの歌を聞いてるうちに抑えきれなくなり、そっち(ゴースト)も速攻でアレンジしてメンバーに送りつける。こっちもコードや歌のメロディもいじった。
こっちは上ハモにした。(りっちゃんの歌がとても良い)
ありがたいことにメンバーの反応は良く、2曲できるんじゃないかという判断をもらった。
本田くんとりっちゃんも曲を気に入ってくれてるのがLINEでも伝わる。

ここら辺からもうそわそわしなくなる。
もう楽しくなっちゃって、早くライブがやりたくなってくる。

新しい曲ができるとスタジオにもハリが出るし、みんなの熱も伝わる。そしてそれは既存の曲にも波及するのだ。
ようやく、再結成してライブをやることの意義が明確になった。

でも僕にはまだ宿題があった。
ピーターが新曲を披露した日の帰りに「You&Iの方の歌詞、高津が書いてくれん?」と僕に言ったのだ。
その時も「なんで?」とは聞いたけど、いまだに真意は測りかねている。だいたいそんなことは今まで一度もなかった。
でも僕は承諾した。なんかできる気がした。

この時はもうそれほど作詞に悩まなかった。
今のシャビーボーイズ、新しいシャビーボーイズが、もう確かに鳴っていたから。

ピーターは2サビまでの歌詞をすでに書いていたけど、「全部書き直して欲しい」ぐらいの感じだった。
でも僕はその歌詞を気に入っていたので、それを草稿に、半分ぐらい書き直して、さらに大サビのメロディと歌詞を付け足した。

この曲は初めて共作と言えるものになったと思う。
(強いて言えば海へ行こうの掛け合いの部分は一緒に作ったけど)

かつての僕は良くも悪くもピーターを絶対視していた。
コードや歌詞やメロディに、多少意見は言っても手を加えることはなかったし、ピーターの方が正しいと思っていた。
でもピーターは意外と?王様タイプではない。
こだわりは強いけど、明確にやりたいことがあってみんなを引っ張っていきたいタイプではない。と今ならわかる。
だから当時も、本当はもっと僕らが助けられたらよかったのに。

でもそんなこと言ってもしょうがない。
その時は実力もなかったし、シャビーを解散してからの10年間があったからこそ、ようやく僕はピーターと対等な目線に立てたのだ。

本番当日に入るのを除くと最後のスタジオになる日、初めて2曲ともにフルコーラスで合わせることになった。
しかしバンドのグルーヴは全く問題なく仕上がっていた。
りっちゃんも本田くんも口々に新曲が良いと言っていた。

そして本番のこの映像に至る。
ぜひ観て欲しい。

当時の自分達に何が足りていなかったかもわかった。
それをこの歳になってようやく塗り替えられた。
それが嬉しかった。
だから自分達のために曲を作ったし、自分達のために演奏した。
自分が自分がで恐縮だけど、どうしても必要だった。

でも、もし、あなたも良いと思ってくれるのなら、こんなに嬉しいことはないです。
ぜひ聴いてみてください。

最後に「You & I」の歌詞を添えて。

You & I / シャビーボーイズ

久しぶりに会うはずなのに
そんな感じがしない
君がため息こぼした日の
音もどこかで聞こえてた

You & I もう一度笑って
言えない秘密を分かち合おう

時は流れ
思い出は色褪せ
呼び方を忘れて
どの街角にも
僕らはいないよ
それでも明日は来る
この世界の真ん中へ

You & I 言葉を尽くしても
言えない心を渡し合おう

時は流れ
戻らない日々にも
新しい言葉と
メロディを乗せて
救い出せたなら
同じ空を見上げよう
この世界の真ん中で
頼りないこの歌で

あなたの夢を見た
朝に泣いた
頬も乾いた
さよならの後に咲いた
花によく似たYou & I

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