破産について

フェルナンデスが破産申請をしたという記事を書いたので、破産申請というものについて少し書いてみます。経営者であれば最低限の知識を持っておくべきと思いますので。

破産申請というのが、清算型の手続きだということは前回述べました。破産申請をした会社というのは消滅してしまうわけです。再建できないという状態なわけです。経営者からするとこれ以上ない最悪な状態と言えるでしょう。

破産申請は裁判所に行います。当事者本人がしてもいいし、債権者がやってもいいです。本人がやる場合が多い印象ですが、たまに、債権者が腹いせにやる場合もありますね。「あの会社、払いもせずにのうのうとしてやがる。潰してしまえ!」ということでしょう。

破産申請する主体というのは、法人であれば会社、個人事業なら個人ですが、法人の場合、代表者や役員も同時に破産申請することも多いです。

これは代表者が法人の連帯保証人になっている場合があること、会社法上、取締役の責任を追及される場合があること(会社法429条)、個人としてもめいっぱい借り入れて首が回らなくなっている状態になっていることなど、いろんな要素があります。

一応、会社法429条を出しておきます。

第429条

役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。(以下略)

会社に対して債権を持っていて、払ってくれないとなれば、当然社長個人に払わせようと思いますよね。そのときに、会社法429条を根拠に請求することは一応可能です。

一応、と言ったのは、実際なかなか難しいんですね。アメリカなんかはこのあたり非常に厳しい印象があります。経済犯罪というとらえ方をしています。

ともかく、会社が破産するときは社長もろとも破産申請することもあるんだなという程度でいいです。

破産申請をしますと、破産手続の開始が決定され(昔は破産宣告と言ってました)、官報に名前が載ります。同時に破産管財人が選任されます。ここで社長の首が飛ぶわけです。これ以降、社長としては動くことができません。会社の権限は破産管財人に移ります。手出しできないわけです。

破産管財人は、お金になりそうなものを全部お金に換えていきます。それが全部終わったら、債権者に対して、その金額に応じて配当していきます。配当の支払も全部終われば、終結ということになります。

もっとも、最初からお金になりそうなものがないな、とわかった場合は、ムダなことは止めようとということで、同時廃止決定で終了となることもあります。

実際、配当はほとんどなされないです。一般的に1%程度と言われてまして、期待しないほうがいいです。まれに10%近くの配当がある場合もありますが、そんなことはほとんどないと思います。

仮にちょっとお金が残ったとしても、破産管財人さんはそこから報酬をもらったりするわけで、まあ、ほぼ残らない。

破産手続き中に、管財人が「この会社には債務があって、払っていないな」とわかった場合は、債権の届け出をしてください、と裁判所からお手紙が来ることがあります。この場合は、一応配当があるかもしれないので届出しましょう。ただし、期待は禁物です。

破産手続き(清算手続き)が終わりますと、通常、莫大な債務が残ります。払えない金額です。これ、自動的にチャラにしてくれるわけではなくて、法的にはチャラにする申立は別、ということになってます。ただ、普通はチャラにしてもらおうと思って申請するわけですから、そこは考えてくれてます。

4 債務者が破産手続開始の申立てをした場合には、当該申立てと同時に免責許可の申立てをしたものとみなす。ただし、当該債務者が破産手続開始の申立ての際に反対の意思を表示しているときは、この限りでない。

破産法248条第4項

免責許可の申立をしたものとみなしてくれるわけです。ただし書以下を使う人はまずいないでしょう。

そんなわけで、最終的には免責許可が出まして、晴れて借金は全額チャラになるわけです。これを「復権」といいます。無罪放免ですね。

破産しても日常生活の上では何の制限もないので、破産した社長さんが破産した後、(元気に)飲み歩いているという話もよく聞きます。借金から解放されますからね。

いとも簡単に借金をチャラにできるのが破産手続きなんですね(少なくとも私にはそう見えます)。なので、悪用する人も当然いますよね。破産手続き中に、新たな事業を始めているヤツもいるんですよ。もう慣れているというか。

免責許可が簡単すぎることから、債権者としては、釈然としないことも多いわけです。そのためなのかどうか分かりませんが、昔は免責の条件として、赤十字にいくら寄付するとか、奉仕活動をさせるなどというものがあったと記憶していますが、最近はどうなのかわかりません。東京方式、大阪方式とか言われて、この辺りに関しては東西で違いがあったと思います。随分昔の話です。あー、年がばれる(笑)

今回、破産手続きを書いた理由は、万が一、事業がどうにもならなくなった場合、自殺などを考えるのではなく、破産を考えるべきだということを強く言いたいからです(もちろん、状況によっては民事再生でもいい)。破産は、どうにもならなくなった人を救済する手続きなのです。やり直しを後押しする手続きです。死んでも借金はなくなりません。基本、相続人が背負います(限定承認など、背負わない手続きもありますが)。そこもお忘れないように。


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