楽天グループのモバイルの勝ち筋(その①)


  1. 楽天のモバイル参入の理由とは? (今回はここ)

  2. 楽天がモバイル事業で成功した例とは?

  3. 楽天のモバイル事業の現状と課題

  4. 楽天のモバイル参入の評価と今後の展望

楽天といえば、強固なエコシステムを持っている日本屈指のインターネット企業である。事業としてECサイトの楽天市場を筆頭に、楽天トラベル、楽天銀行、楽天カード、楽天証券までありとあらゆるものを持っている。あまり知られていないが海外事業として、Rakuten イーベイツというキャッシュバックサイトを運営しており、他にも楽天Viberなどそのサービスの幅は広い(海外事業の解説はまたの機会に)

楽天のモバイル参入の理由とは?

日本のイーコマース市場で確固たる地位を築いた楽天だが、モバイル事業への参入で大幅な赤字を出してしまっている。ただし、モバイル以外の事業は顕著に伸びており(日本のEC化率は10%弱なので、伸び幅はまだまだある、おそらく30%までは普通に伸びるだろう)、これだけみると、本業のイーコマースに注力すればいいのではと思う方も多いのではないかと思う。そのような声も非常多いのも事実だ。この記事ではちょっと違うアングルから解説してみようと思う。私自身はモバイル事業会社に属していたこともあり、海外でMVNO事業を運営していたこともある。その視点で見てみよう。

では楽天のモバイル参入の理由を考えてみよう。ここでは以下の理由が考えられる。

1.次の売上1兆円のエンジンを探した結果

新規参入が可能なマーケット規模が大きな市場は一般的に限られているということだ。一般的に大企業はイノベーションを成長エンジンと考え、製造業は製品の性能や質の向上でシェアを広げていく。これは多くのケースでインクリメンタル(比例的)な成長となり、エクスポネンシャル(累乗的)な成長を目指すならアプローチを変える必要がある。楽天はすでに1兆円を超える売上があった中で、次の一兆円を考えた時に10年、イーコマース事業を育てる道もあっただろうが、違う道を考えた結果がモバイル事業参入なんだと思われる。1兆円稼げる事業は非常に限られている。例えば、5兆円市場で20%シェアでようやく1兆円となる。しかもこれを売上で達成するとなるとより大きな規模が必要だ。アップルもEV事業も検討していたが、(今は諦めた)それは他に規模がとれる市場がなかったため、検討したのは同じ理由で自然な流れだと思われる。

余談になるが、大企業のイノベーションは難しい。1000億円の市場に参入して10%シェアを獲得しても、100億円にしかならない。1兆円企業なら売上寄与はたった1%だ。そうなると、大体「意味あるの?」という内部の声に潰されることが多い。

2.モバイル事業が変革期に入っていた

モバイルは10年+周期で変革期、設備更新の時期を迎える。それが3Gから4Gへ、4Gから5Gへの技術革新となるタイミングだ。ソフトバンクも3Gから4Gに入るタイミングでVodaPhoneを買収してモバイル事業に参入した。それでiPhoneという武器があって急拡大したのは、記憶がある方のいらっしゃるだろう。今回楽天でその武器に当たるのが仮想化技術である。
本来モバイル通信に使われる通信機器は特定のハードウェアメーカーの専用機器になっていることが多い、それはノキア、エリクソン、ハーウェイ、NECなどだ。こちの機器は文字通り専用マシンなので、機器自体が高価な上に保守も委託しないといけないため、コストがかかる。そのため通信会社は莫大な設備投資を毎年計上している。
今回楽天が目をつけて、運用を開始しているのがOpenRANをいう仮想化技術だ。基盤レベルからRAN(Radio Access Network)(電波を発射する無線機器)まで仮想化することで、機器自体を汎用機器で動かすことができる。これで従来ベンダーのブラックボックスだったものが解放され、コストを劇的に下げることができるようになったのだ。しかも仮想化によりさらにシステムの柔軟性が増すことも大きなメリットになる(パフォーマンスでるのか、などのデメリットは確かに存在はするが)

3.モバイル事業展開に推進に必要なリソースを見つけた

必要はリソースはタレック・アミンのことである。上記の仮想化ネットワークの実現には不可欠かつ、推進できる人物でした。
タレック・アミン氏は、リライアンスジオでのキャリアを通じて通信業界で大きな影響を与えました。彼はリライアンスジオのシニア・バイス・プレジデントとして技術開発と自動化を担当し、同社の4G LTEネットワークの構築に重要な役割を果たしていました。このネットワークはインドでのデジタル革命を推進し、リライアンスジオを市場のリーダーに押し上げる大きな要因となりました。

この業界での知見を持っている、いわゆる業界での署名な人物を楽天モバイルを引き入れたことで、モバイル事業参入のピースが揃ったと言えたのでしょう。

楽天のモバイル事業は、多くの課題を抱えつつも、その強固なエコシステムを活かして新たな成長を遂げる可能性を秘めています。次回は、楽天モバイルが具体的にどのような戦略を展開しているのか、楽天がモバイル事業で成功した例とは?をさらに詳しく掘り下げていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?