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原監督

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12月14日 配信
《後継者問題》阿部慎之助が“1番手”ではない…巨人・原監督が明かした「次の監督」6人の候補
2021年12月14日 11:04Nanae Suzuki
 巨人・原辰徳監督への直撃インタビューの第2回は、来季に向け元木大介ヘッドコーチ兼オフェンスチーフ、阿部慎之助作戦コーチ兼ディフェンスチーフ、桑田真澄投手チーフコーチとコーチ陣の役割分担を明確にした理由、そして新たに川相昌弘ファーム総監督や駒田徳広三軍監督ら巨人OBをスタッフに迎えてオールジャイアンツ体制を築いた狙いなどを聞いた。そして3年後に巨人軍監督となる自らの後継問題への考えを直撃する。――来季に向けてシーズン終了と同時にまず着手したのが、コーチングスタッフの入れ替えと役割分担でした。特に一軍コーチの役割分担を明確化しました。




「これも1つ反省点ですね。この2年間を見てきて、僕は今年のスタッフはみんながあらゆる部門を見られる絶対的なコーチだということで、バッティングコーチだとか守備コーチだとか、走塁コーチだとか、そういうものを作らなかった。でもそれは間違いだったなと思います。

 総合コーチとなると歯車が合わなくなってきたとき……例えば打てない、あるいは守備が乱れたときに、そこに責任を持って正面からくる人がなかなかいなかった。これは僕がいけなかったなと思った。総合コーチという非常にアバウトな名称を作って『いろんなところ見られるんだよ』『だから遠慮しないでしっかり指導してくれよ』と考えていたわけです。でも、これは間違いだったと思っています」

コーチの責任を明確化した理由

――来シーズンは元木大介ヘッドコーチをオフェンスチーフ、阿部慎之助作戦コーチをディフェンスチーフとして、桑田真澄投手チーフコーチと共に、それぞれの責任を明確化しました。

「まあ極端な話、僕がいまそれぞれのコーチが何を指導しているのかを聞けるということです。バッティングにおいても、ピッチングにおいても、守備や走塁においても、きちんと役割が判っていれば、問題が起きたときには、それが非常にクリアになるし、対処も早くなる。そこは今年の反省の中でのことですね」

――スタッフ入れ替えの中で目を引いたことの1つには、ユニフォームは着ないですが、OBの川相昌弘さんのファーム総監督への就任もありました。

「ファーム総監督を作ったのも、やはり役割を明確にするためです。組織を迷わせる一番の原因は、誰がどういう責任を持っているのかが明確ではない、そういう組織図の曖昧さにあります。例えば巨人にはファームディレクターという体のいい言葉があった。ただ、いままでは二軍監督、三軍監督がいて、ファームディレクターはその下のポジションになる印象がありました。それは組織を作る上でダメなこと。迷わせる。だから今回はファームディレクターを置かなかった。

 それで川相をファーム総監督にしよう、と。そうすると総監督がいてその下に二岡(智宏)二軍監督がいて、駒田(徳広)三軍監督がいる形になる。組織内での役割を明確にするためにファーム総監督を置いて、きちっとした組織図を作り直したということですね。これは非常に重要なことだったと思います」

――川相ファーム総監督だけではなく、今回はやはりOBの駒田徳広さんも三軍監督に就任しました。昔からの巨人ファンには懐かしい、往年のチームを支えた人材が次々と戻ってきて、今度は土台を作る役割についている。まさにオールジャイアンツでのチーム再建ということになりますね。

「巨人には口では説明しきれない独特なものがある」

「現役時代にジャイアンツでやっていた人たちが、みんな集まってきたということですね。ジャイアンツというのは、口で説明しても説明しきれない独特なものがあるんです。ひとことで言えば伝統です。巨人で生まれ育った人たちというのは、それを自ずと身につけて分かっているわけです。

 そこは川上(哲治)さん、藤田(元司)さんの教育であり、あるいは王(貞治)さん、長嶋(茂雄)さんという、そういう先輩たちの教育なのか……。それは分からないけど、多分、そういう先輩から受け継いできたものは、言葉で『こうじゃなくちゃダメなんだよ』とか『それは困るよ』と言うものではないし、その必要もない。巨人軍の選手としてプレーする中で自然と身についてくるもので、私ももちろんそうだし、みんな根底にジャイアンツがある。そこが尊いと思います。

 その上で彼らは他のチームに出たり、色々な経験をして苦労もしてきた。そういうOBがまたジャイアンツに戻るというのは、僕は理想型だと思います。それで再び若い選手を指導し、ジャイアンツの伝統を正しくつなげていく。それはとても重要なことですね」

――原監督自身もそういう伝統を引き継ぎ、新たに進化せていく役割を担う1人だと思いますが、このオフには新たに3年の契約を結び直しました。次の3年間で巨人をどんなチームに導いていきたいのか? 新たに取り組みたい課題、テーマのようなものはありますか?

「結果としては日本一、リーグ優勝を目指すというのはもちろんです。でも、いまお話ししたような伝統を受け継ぎ、伝えていく役割もそうだし、選手の育成もある。最初に話しましたがホップ、ステップのステップから始めようとするとジャンプも当然、成功はしません。そういう意味では来年はまずホップ、ステップして、そこからジャンプという形でチームをマネジメントしていくことが重要だと思っています。

 3度目の監督に就任した2019年から1年目、2年目は戦力がそんなには揃っていない中で、少なくとも連覇したわけじゃないですか。日本シリーズではああいう惨敗を経験しましたけど、連覇したことで選手を含めてどこかに満足しているところがあったのかなと思うこともあります。勝つために近道はない。もう一度、肝に銘じなければならないのはホップ、ステップがあって初めてジャンプは成功するということです。3段跳びってそういうものじゃないですか」

自分の後継者を育成することを掲げた

――また1からチーム作りをやり直す?

「私がこれから3年、監督をやるならば、ここまでの3年間を一度壊して、また最初からホップ、ステップ、ジャンプするチームを作る。それで次の年もまたホップから始まってジャンプにつなげていく。仮にリーグ優勝して日本一になったとしても、また翌年はホップから始まって最後にジャンプできるチームを作ることが大事だと思います。そのためにはコーチ陣に役割をしっかり持たせた上で、組織をしっかり作るべきだと思う。その土台となるコーチ陣、スタッフを作ったつもりです」

――2019年に監督に復帰したときに、原監督は自分の使命としてまずチームを勝たせること、そして自分の後継者を育成することを掲げました。新たな3年契約を結んだ現在、監督の後継問題に進展はありますか?

「後継者は必ず出てくると思うし、出てこなくちゃいけないと思います。それが慎之助なのか、あるいは元木なのか、あるいは桑田なのか……それとも二岡なのか、駒田なのか、川相なのか……。それは色々あると思いますよ。決め込むというのは色々と難しい問題だと思います。1つだけ確実に言えることは、誰とも約束は何もないということです。だから次に巨人軍を指揮する監督は、選ばれるのではなく出てこないとダメなんです。

 僕だって長嶋さんの下で3年コーチをやったわけですけど、コーチとしてスタッフに入ったときには『次の監督だから』なんて言われたことはなかった。誰もそんなことは言わない。まあ、王さんの場合は助監督として入ったから、そういうことはあったのかなと思います。助監督で入るケースはあるでしょう。でも、それこそ僕の場合はペナントレースがあと2試合か3試合になったときに、長嶋監督に呼ばれて『次の監督はキミだ』という話になるわけじゃないですか」

阿部慎之助が後継者の1番手ではないのか?

――でも、長嶋監督の最後の1年間は、シーズン中から采配を任され準備期間もあったと思います。そう考えると、今シーズン終盤には阿部二軍監督を一軍作戦コーチとして呼び、来シーズンは作戦兼ディフェンスチーフという役割を与えた。当然、周囲は後継者の1番手と見るのが自然ではないですか?

「今シーズンの最後に慎之助を一軍に呼んだのは、二軍の日程が全て終わったからというのもありましたよね。ただもちろん彼も巨人の監督をやらなければならない1人であることは間違いない。ただ、一軍に呼んだからというのはね。僕が最後に采配を任されたときも、それは監督から言われた役割であって、だから監督が確約されたなんて、僕は思わなかったですよ。全く思わなかった」

「1を伝えたら、それを2、3とできる人」

――誰が後継の1番手ということはないと解釈していいということですか?

「後継者というのは、知らず知らずの内に必ず出てくるものだと思います。誰かが次の監督の名前を挙げるとか、それはないでしょう。なるべくしてなるだけです。何よりやっぱりファンであり、選手たちであり、あるいはコーチ、周りの人たちが、自然とその人間を次の監督だと思うことが必要な条件でしょう。自然にそういう環境が出来上がってくるものだと思いますよ。

 だから私は早くそういう人が出てくることを願うばかりです。その中で色々な経験を話したり、教育と言ったらおこがましいですけど、伝えるものがあります。1を伝えたら、それを2、3とできる人が監督として上がっていく人じゃないですか。1を伝えたら2、3にできないとなかなか上の指導者というのは難しい。これは本当に難しいと思います」

――監督自身の中には候補の名前が何人かあるけど、そこは色眼鏡では見ない?

「その通りです。フラットな目で見ているし、必ずそうなる人材は出てくる。また出てこないとダメです。そうして出てきたら、私はその人間を観察し、ちょっとアドバイスを送り、多少、教育をしようという気持ちはあります」

――出てきている感触はありますか?

「ないわけないですね。なきゃダメだと思います。ただ約束をしているわけではないし、自分の力で上がってこなければならない。で、僕の信頼ではなくて、選手であったり、ファンであったり、もっと周りの人の支持を受けて、そうして初めて巨人軍の監督というのは生まれる。それが本来の姿であると思います」



(「プロ野球亭日乗」 鷲田康 = 文)

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