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第二次ティルト記(オンラインポーカー)

はじめに

このnoteは自身の体験したティルトについて振り返り、今後のポーカーライフに活かすためのごく私的なエッセイだ。
十分に注意して検討を進めたつもりだが研究成果とは言い憚れる程度のものとだけは留意してほしい。

形式

まず『ティルト』がどれほど酷い状態なのか、実体験を例に挙げながら確認する。次いで、一連の体験の中でのメンタルの推移と発生した『ティルト』を振り返り、その原因と要因を網羅的に挙げる。それらの検討結果を踏まえ、『ティルト』のリスクの見直しと今後の対『ティルト』についての個人的な見解を述べたい。

一連の紹介を通じ、プレイヤー各員が(ともすれば)軽視しがちなポーカーのメンタルコントロールの側面に意識を向けるきっかけになってくれれば幸いだ。


①導入と『ティルト』の実例

まずはこのグラフを見てほしい。

ティルトコントロール①

2021年4月14日~17日の4日間でプレイしたポーカースターズ10zoomでの約12000handのグラフだ。
具体的なhandについては述べないが、赤線(no show down)に青線(show down)、黄線(allin EV)も右肩下がりになっている。黄線と緑線(実収支)の乖離についても記憶に留めておきたい。

この数日間のセッションを通じて、私は完全に『ティルト』した。
最終日には常ならざる非常にマニアックなブラフやオーバープレイを積極的に行おうとしたし、幅広いレンジで相手の3betにコールを選択した。
貧乏ゆすりに加えて全身をイライラと揺すり続け、potを落とす度にマウスをデスクに叩きつけ大きな音を立てた。疲労と眠気でカリカリしながらもプレイを止めようとしなかった。
ちょっとした恐慌状態だったといえる。

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最終的に少々アンラッキーなオールインpotを落としたタイミングでメンタルが決壊し、発作的にBB(ビックブラインド)を待たずしてプレイ画面を閉じ、そのままの勢いでデスクトップのポーカースターズのアイコンを削除した。
パソコン本体やPiosolverに手を付けなかった辺り、ぎりぎりの理性は感じられるが、錯乱状態といってもいいほどで、とても正常とは言えないだろう。

――これが今回起こった『ティルト』の全貌である。

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告白すると、私は以前にも似たような状態に陥った事がある。
去年の8月、3000handで20BI(50zoom)ほど消し飛んだ時には似たような行動に加えて吐き気や鬱々とした気分が続き、ポーカーへのモチベーションの低下が顕著に表れた。マウスも叩きつけて壊した。
そしてそのまま、約4カ月間ポーカーから離れた。

2021年1月から復帰したは良いものの、今回またもや『ティルト』を起こしてしまった。
当然だが、『ティルト』は好ましい状態とは言えない。むしろ避けたくてたまらないものだ。イライラすれば精神的に参るし疲れる。悪いプレイを繰り返せばモチベーションも下がる。マウスを壊せば、買い替えコストもかかる。基本的には良いことはない。

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それでもポーカーは面白い。

そんなに精神的にクるゲームなんて止めて正解じゃないか?
まあ、言わんとする事は解る。だがそれでも面白いものは面白いのだ。


新しい概念やコンセプトを取り入れて選択肢を増やせる自由度は他のゲームの追随を許さないし、対人ゲーとして相手をエクスプロイトした時のワクワクドキドキ感は比較対象を探すことも難しい。ブラフキャッチなどその主たる例だ。プレイヤープールの多様さで言えば、ローグライクゲームよろしく変幻自在で飽きがこない。

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仕方ない。ポーカーを今後も快適に楽しむためにも、ゲームに勝つためにも『ティルト』の解消と予防に励む他ない。

そんなこんなで『ティルト』のリスクを時系列に沿うように解析するため、私は自身のツイッターを振り返ることにした。


②当時のツイートとその分析

私のツイッターの切り抜きだ。赤線部分に注目してほしい。
4月14日~16日

ティルト ツイート①加工


4月17日

ティルト ツイート②加工

赤で強調部分を抜粋してみよう。

14日 懲りずにブラフして減らしてる
15日 ハードラック×Cゲーム=(げろ顔文字)
16日 赤線は無いがtwiceでアウツ4枚を2度引かれているスクショ
17日 もうホント敗北者
   アンラッキー
   衝動的にポーカースターズ削除した


ざっくりとではあるが凡そ当時の心境と流れを思い起こす事は出来る。
時系列にすれば以下の通りだ。

①ブラフのアクションが上手く行かず傷心
②分散を含む下振れに加えて、集中力や精度も落ちている。自覚はアリ
③稀なバットビートに当り、大きなストレスを被る。(16日部分参照、0.5%ほどの確率で起こる)
*グラフのEVと実数の乖離からして細かなバットビートも続いている
ストレスがアクションに悪影響を及ぼしている自覚が生まれる。
⑤破局、プレイの放棄、ゲームアプリを衝動的に削除

では分析。
最も望ましい状態をAゲームのクオリティでゲームを楽しみ、winレートも底上げすることだと仮定しよう。

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ツイート群からは段階的かつ継続的にストレスを受けている状態であると見て取ることが出来る。積み重なったストレス要素は最終的にはマウスを破壊すりような恐慌状態、つまり『ティルト』に結びついたと言える。

ストレスを溜め込むことでパフォーマンスが低下することは一般に認知されている物事であり、今回の『ティルト』はそうしたストレスの終着点の一つであり、最も望ましい状態と全くの対比とされる位置づけであると言えるだろう。

私の『ティルト』に陥るまでの一連のツイートから抽出した心境と流れは、ストレスという因子に変換すると以下のようになる。

14日 懲りずにブラフして減らしてる
→ブラフが失敗したストレス、練習の成果が表れないストレス、成績悪化のストレス
15日 ハードラック×Cゲーム=(げろ顔文字)
→不運へのストレス、自身が良くないコンディションに陥っているストレス、体調悪化(えづき)のストレス、悪いスパイラルに陥っているというストレス
16日 赤線は無いがtwiceでアウツ4枚を2度引かれているスクショ
→稀な不運へのストレス、期待を裏切られたストレス、成績悪化のストレス
17日 もうホント敗北者
   アンラッキー
   衝動的にポーカースターズ削除した

→自信・自己肯定感の低下によるストレス、不運へのストレス、(文脈からして)悪いプレイへのストレス、練習の成果が表れないストレス)
⇒壊滅的な『ティルト』へ(ポーカースターズ削除)

こんなところだろうか?
関連するものや重複するものは多々あるが、それでも短いツイート群から複数のストレス要因を抽出することが出来た。
様々な方向からのストレスの累積がパフォーマンスの低下を招き、最終的な『ティルト』に結びついたという時系列が見て取れる。

『ティルト』の要因をストレスに集約するならば、ストレスは『ティルト』要因と呼んでいいだろう。
先に挙げたストレスは飽くまで露天掘り的に発見することの出来た言語化によるものであり、より根深く概念的で複雑な『ティルト』要因があることも想像に難くない。そして『ティルト』は往々にしてそれらが重複することで合併症のように悪化するものである。

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さて、
よくよく見てみると、挙げることが出来た『ティルト』要因については凡そポーカーに限らず普遍的に存在する類のものといえるだろう。――些細な不運、成績不振、いら立ち――普通に生きているだけでも十分に直面するストレスであり、これらを全く受け付けない事こそ不可能なことだ。


結論として、『ティルト』要因に直面する事自体は避けられない。回避するにはあまりに普遍的すぎるストレス群、その傾向は多くの『ティルト』要因に当てはまる。
誰もが『ティルト』要因を抱え、日々を過ごしている事は想像に難くない。それが『ティルト』に結びつくか否かには個人差がある。量の多寡、若しくは受け手側のセンシティブ――過敏さ――、或いは捉え方の問題なのだろう。

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一度、ここまでの考察を纏めよう。

壊滅的な『ティルト』が発生するまでには、事前に様々なストレスが掛かっている。また、『ティルト』要因自体を抹消することは困難であり、『ティルト』に至るほど『ティルト』要因を抱え込むかはプレイヤー、『ティルト』要因の受けて側の資質による部分が大きいと考えられる。

『ティルト』要因に押しつぶされてしまうかどうかはプレイヤー各員の手腕や消化能力に委ねられる。

(なお、ゲームの勝ち負けも間接的ながら『ティルト』と関連していると想定できる。その側面からしても『ティルト』要因はとの付き合い方はゲームプレイヤーの練度が如実に現れる側面といえるかもしれない。)

『ティルト』を回避するためには『ティルト』要因となるストレスを溜め過ぎないことが必要となる。
ストレスへのアプローチは幾らでもある専門書に譲るとして、『ティルト』要因を探り、その進捗と影響を言語化していく作業は『ティルト』という事案を観測可能なものに落とし込み、プレイヤーから積極的に『ティルト』対策に取り組む手助けになるだろう。

実際、今回この様な駄文……もとい考察を書き連ねてみたところ、鬱々としていた精神面も相当に持ち直してきた。note作成を通じて自身の『ティルト』への理解の深まりが感じられた。
『ティルト』要因を一つ一つ挙げていく事で自ずと現状で出来る事と出来ないこと、納得出来ることと出来ないことの仕分けが可能となる。

こうした行動を通じ、正体不明のフラストレーションを解明することで、『ティルト』要因であったものをチャレンジングな目標として再設定し、モチベーション向上に役立てることも可能だろう。

ーー少なくとも以前、去年の様に4カ月もゲームから離れるという事にはならなそうだ。その意味ではあのころよりも『ティルト』要因はとの付き合い方は上達したといえるかもしれない。
(言語化されていない『ティルト』要因や消化不良、課題を明文化し、逐一メモを残すという理屈に於いてはセッション中のSNSも役立ったといえる)

まとめよう。

『ティルト』要因を言語化し、それらを理解して如何に付き合い消化するか。
『ティルト』対策としてのプレイヤースキル全般を如何に高めるか。

ひとまず、今日現在の『ティルト』と『ティルト』対策についての認識はこんなところである。

・参考にした文献『ザ メンタルゲーム』について

『ザ メンタルゲーム』、正式名称『ザ メンタルゲーム――ポーカーで必要なアクション、思考、感情を認識するためのスキル』は2017年にカジノブックシリーズ⑯として和訳され、出版された出版物である。



私はこの書籍を発売当初から入手しており、読んでいたのだが、今回の『ティルト』を受けてよくよく読み返してみた。この本はポーカーにおけるティルトコントロール、自信、モチベーション、分散への対処について論じられており、今の自分のためというほどピッタリな趣旨のものだ。
結論から言うと、今回の『ティルト』を理解するためにこの書籍は大いに役立った。価格は新品で1800円+税だが『ティルト』で失った、これから失いかねないもろもろと比較すれば非常にリーズナブルでお勧めできる。kindle版なら499円でなおお得だ。私がポーカー本のお勧めを聞かれたならばまず真っ先にこの書籍を推すだろう。

この本によれば感情過剰になると脳が正常に機能しなくなるらしい。――マウスを叩きつけた事を思い出してさりありなんといったところだ。

そして、ティルト――この本では『感情的臨界点』と表現していた――に達したプレイヤーは捻挫や骨折を受けた際と同様に、サクッとリフレッシュで解決とはいかないらしい。

一度自己コントロールの喪失に至ったプレイヤーを立て直すカンフル剤は存在しないようだ。時間を掛けて自発的に解決に向けて取り組む必要がある。尤も、それは『感情的臨界点』を迎えたプレイヤーがその後良いゲームを出来ないことを意味しているわけではない。Aゲームと呼ばれるような良い集中力、よいテンション・モチベーションを駆使したゲームは理屈上いつでも可能だ。(長い短いはあるだろうけど)

この本ではこんなことも言っていた。

”Cゲームを改善することはもっとも利益的だ”

大いに納得できる。注意散漫で大小のミスを犯し、potも失う。ストレスも増える。無謀なアクションが増える。またpotを失う。そんなゲームは減らせば減らすだけお得だ。ーーそして恐らくだが、Aゲームの方が楽しいし満足できる。勝てる確率も高まれば、『ティルト』要素の予防にもなるだろう。

今後はその辺り、ゲームに取り組むモチベーションや集中具合にも気を配っていきたい。

それから、『ザ メンタルゲーム』には続編となる『ザ メンタルゲーム2』という書籍が存在する。こちらはティルトとは真逆の状態、いわゆる『ゾーン』について解説している。こちらも中々に読み応えのある内容なので是非。(ダイマ)

最後に

いかがだっただろうか。あくまで個人的な振り返りと考察に過ぎないため、抜け落ちたコンセプトや視点も数多かったとは思うが、個人的にはそれなりに満足な取り組みとなった。今回のティルトの引き金となった10nlの負けだが、冷静に考えると15BIの上げ下げなどポーカーではよくある事に過ぎない。成績に不貞腐れてへそ曲げて投げ出すのも結構だが、さっさと精度を高めてリトライするほうが建設的である。(ブラフのやつソルバー掛けないとね)

皆さんもメンタルゲームでマインドゲームなポーカー、分散やストレスにまけず楽しんでプレイしましょー


END

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