フランス料理とは?~高須賀の美食入門 21~
フランス料理の特徴
イタリア料理の本質が素材至上主義にあり、各州ごとの料理をそのままの形で認めるというアイデンティティの尊重にあるとすると、フランス料理の特徴は地方ごとの郷土料理という強烈なバックグラウンドに支えられ、中央集権としての絶対王者パリから生み出される料理が全てを統率している、と言えます。
フランス料理の歴史でたどりますが、パリの料理史は他の国にない異様なまでの柔軟性がみられます。駆け足でフランス料理に取り入れられた文化を記すと
①まず初めにイタリアからの調理技術の輸入
②その後ロシア式サービスを取り入れ
③日本から凛とした雰囲気を輸入
④スペインから分子ガストロノミーという文化を吸収
少なくとも4つ以上の国の文化を上手く吸収しそれが何の不自然さもなくきれいに整合性が取れて、誰もが納得する上手い食べ物を作っている。それがパリの食文化なのです。この辺、アメリカっぽくて少し面白い。国としての方向性は全く異なる両者ですが、良いモノが生まれる土壌って実はにているのかもしれません。
日本におけるフランス料理
同じ欧州の食文化でも、イタリア料理は日本に輸入されると「日本風イタリアン」へと変貌をとげました。ではフランス料理はどうでしょうか?
答えを先に書いてしまうと、世界有数の美食都市、東京でもフランス、ことパリの料理となると未だにコピー料理しか出てきていません。これは背景思想からも仕方がない事だといえます。イタリア料理の「素材の旨みを最も引き出す」というわかりやすい哲学に対して、パリ料理の哲学は「技術は広く公開し、様々な検証を加えたうえで良い文化を取り入れ、至高の美食を作り出す」というものであります。そのあまりの柔軟さ故に常に進化し続ける為、学習する側が最先端をコピーするので一杯一杯なのです(逆に言えばここまで完璧に再現している東京のフレンチシェフは凄いともいえますが)
ときどき料理専門家が「そろそろ日本発のフランス料理が出てきてもいい頃だ」なんて言ってますが、フランス料理の進化のスピードがやや落ちてきた現在。東京という全てのジャンルが集う美食都市がそれを引き起こすのは夢ではないかもしれません。
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