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身も蓋もないインドの話 #図解インド経済大全 にみるS級インド、B級インド 高口康太 山形浩生 椛沢かおり 田中陽介 高須正和 オンラインイベント録画

中国を抜いて世界一の人口を誇るインド。経済的にも世界5位のGDPまで伸びてきた。様々なイノベーションで人類全体の生産性が上がり、中国が人口とイノベーションの掛け合わせでみるみる成長していくなかで、「次はインドだろう」という期待が上がっている。インドの真面目な解説書はずっと売れないと言われている、この「図解インド経済大全」が発刊されたのは期待の現れだ。

身も蓋もないインドの話をしよう

インドはエキゾチックな部分も国としての重要度も大きいので人々の関心は大きい。インドという国名は日本人全員が知っていて、カレーなど何かしらのイメージをもっている。「自分や知人が旅行した」という人も多いだろう。
一方で、アメリカや香港、タイなどに比べると実際に仕事をしている人は少ない。メディアで聞いた程度の情報が実際と正反対なこと、つまり情報を知る前よりバカになってることはよくある。
僕らもプロレス的な情報に興味はあるけど、知りたいのは「身も蓋もない話」のほうだ。身も蓋もないインドの話をしよう。
そう思って、インド在住で知財の仕事をしているtんと、図解インド経済大全の編集をした高口さん、さらには開発援助の仕事をずっとしていた山形浩生さんに声をかけてイベントをすることにした。

高口康太:TikTokショック前後の中国企業インド出海記

椛沢かおり:身もフタもないようであるようでやっぱりちょっとないインドの話

田中陽介:最近のインドについての雑感 そして山形浩生さん含めてパネルディスカッション

前回イベントも録画あります。

第1回のイベントを1月に行い、大変に面白かった。

いっぽうで「論点を整理したほうが、トークのクオリティが上がる」「本を読んでない人に向けて、本の内容紹介をもっとやったほうが、全員が面白くなるはずだ」という反省点もあり、次回のイベントは、第1回に出ていない人が見ても面白くなるはずだ。僕の主催するイベントは、何よりもスピーカーが楽しむことを主眼にしているが、多くの点でスピーカーと聴衆の面白さは比例する。僕の場合、あんまりちゃんとお金とってサービス業やるの向いてなさそうだし。

S級インドとB級インド

今度のイベントのキーワードとして考えているのは、高口さんの本から取ってS級インドとB級インドだ。こうしたインドへの期待と現実は、どっちも事実である。本ではその両方が見て取れる。
S級
シリコンバレーにあふれるインド出身者が続々スタートアップを創業
世界に先駆けるデジタル政府、国民ID アダール
高額紙幣を廃止してまで電子マネーを普及させるDX先進国
貧富の差は激しいが人口14億の上位は分厚い中間層

B級
首都でも頻繁に停電 UPS必須
人口の70%が農村,100年前とあまり変わらない暮らし
産業はほぼ労働集約型 スマホも自力で作れない
民間で景気いいのはグローバル下請け産業
お金を使うイノベーションは政府周り(デジタル政府、教育など)、民間はまだまだ

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図解インド経済大全はすごくいい本です。

インドから、中国で起きたみたいなリープフロッグはいくつも起こるだろう。タクシーがダメすぎるのでシェアライドが爆発的に流行る、金融システムがダメすぎるのでFintechが一気に普及するなど、インドはダメなものばっかりだ。

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本でも、たとえば製造業だけで多くのページがある中で、自転車を見ると「そのへんの鉄工所のおっさんが作ってる、重くてダメな自転車」がまだたくさん売れていることがわかる。しかもそこまで安くないので、製造だけじゃなくて流通販売メンテ全部ダメなことがわかる。こういうところにモジュール化と大量生産でなんとかならないか。スマホは売れてるわけだし..
みたいなことが、何でもトークのテーマになる。

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逆に、金融分野はまだまだだ。そもそもまともな成長産業ばっかりだから、非効率な産業をぶっ壊すディストラプターは出てきても、火星旅行とか汎用人工知能を言い出すスタートアップはまだ出てこないだろう。ICT産業の項目も、つまりバカでかい下請け産業、でかいインドパソナですねという現実をガッチリとつきつけてくれる。これは図解インド経済大全のもう一つの価値だ。

文化とテクノロジーでイノベーションが起こる

経済の本だけど、文化について書いてあるページが多いのも本の魅力だ。アーユルヴェーダとは何で、産業的にどのぐらいなのか。インド国内宗教団体の勢力図。インド映画と言ってもあれは南部だけで北部では違う...などなど。

家電製品で、カレーばかり食べるからスパイスミルとブレンダーがすごく売れる、みたいな話は僕みたいなガジェット好きにも刺さる。

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