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録画公開 #遠くへ行きたければ みんなで行け」出版記念 伽藍とバザールからCode for Japanへ 関治之/山形浩生/高須正和

今後もたくさんイベントを計画しています。

コミュニティの意識はどこから始まったか

翻訳者の、監訳の山形さん、解説の関さんの3人で、書籍の出版イベントを行った。僕と関さんは2007-8年頃から、インターネットの勉強会文化やハッカソン文化の中で何度も出会っていて、共通の知人も多かった。こうした勉強会文化は、フリーソフトウェア・オープンソースの文化に影響を受けている。オープンソースそのものへの耽溺、たとえばOSSへのコミットやメンテナーになった人もいるし、こうした勉強会活動などで活動をコミュニティにつなげていった人もいる。
僕はそのあとメイカー系の活動、ニコニコ学会、2014年からは海外へ出ていったが、当時の友達は何人もそのままCode for Japanに参加している。

いずれの活動も、山形さんが翻訳した「伽藍とバザール」には強く影響を受けている。畑違いの人から見ても、僕らの活動がオープンソース文化の影響を受けていることは、ニコ技深圳コミュニティの伊藤亜聖さんが、2017年のブログに書いている。
なので、改めてこの3人が集まってコミュニティの話をするのをすごく楽しみにしていた。

高須:書籍内容のざっくりした紹介、なぜ「ハードウェアハッカー」に続いて本書を翻訳したのか

僕の発表は、自分の書いた序文をフォローしたものだ。


僕は中国の深圳でオープンハードウェア周りの事業開発を仕事にしている。エンジニアや研究者に向けて新しいオープンハードウェアを,コミュニティを作りながら販売する仕事だ。IoT に興味がある人は,スイッチサイエンスという僕の会社や,Raspberry Pi,M5Stack といった代表的な取り扱い製品を聞いたことがあるだろう。コミュニティを利用してビジネスをしているだけでなく,深圳でニコ技深圳コミュニティを藤岡淳一氏と共同主催することで,仕事以外の部分でもテクノロジーについての知見をボランタリーに交換している。
この本を知ったきっかけは,自分もメンバーの1 人である中国最大のオープンソース組織,「⁠中国オープンソースアライアンス(開源社⁠)⁠」の年度会議でゲスト基調講演を務めたジョノ・ベーコンの講演を聞いたことだ。本書の英語版を読んで内容を知れば知るほど,僕の本業のビジネスも,ビジネス以外のこともうまくいくようになった。
そして,中国でさえ大きなイベントの基調講演に呼ばれるような人の本が,日本語版がないことを知った。中国企業はその後,オープンなコミュニティづくりに手間も金も大きくかけるようになっている。日本語版が出ることで,日本でもこうした内容が広まるとうれしい。その思いは,僕の前の翻訳書「ハードウェアハッカー新しいモノを作る破壊と創造の冒険」のときと同じで,本書の翻訳をした最大の理由だ。

関治之:Code for Japanの事例を中心に「シビックテックとコミュニティ」

関さんのトークも、本の解説をなぞりつつ、よりCode for Japanのやりかたをクリアに説明したものだ。

コラボレーター・コミュニティとしてのCode for Japan

本書ではコミュニティのエンゲージメントモデルとしてコンシューマー,チャンピオン,コラボレーターの3つが示されていますが,Code for Japanはコラボレーター・コミュニティに分類されるでしょう。特定のサービスを提供しているわけではありませんし,シビックテックに関するコンテンツ自体を参加者自らが作り上げていくタイプのコミュニティだからです。

「ここでは,熱狂的な参加者は,単に個別に独自の機能を追加するだけではなく,共有されたプロジェクトのためのチームとして能動的に協働作業する。これは文字通り,世界そのものを変えるようなチャンスにつながることもある(第2章⁠)⁠。」

と本書で書かれている通り,熱心な参加者達は,だれかから指示されたわけでもないのに,日本中で主体的にさまざまな価値を生み出しています。たとえば,以下のような側面を上げるとわかりやすいのではないでしょうか。

各地のCode forコミュニティ,ブリゲイド

各地に存在するCode forコミュニティは,それぞれが独立したコミュニティです。シビックテックを推進するという同じゴールに向かい,それぞれが自由に活動をおこなうネットワークとして機能しています。
Code for Japanでは,各地のコミュニティが活動しやすいように,パートナーシップを組んでいるCode for コミュニティ(ブリゲイド)に対して,サーバ環境や交流イベントの運営や参加のための交通費など補助を行ったり,Code for Japan Summitなど,発表や学び合いの機会としてイベントを主催したり,各地の活動をレポートとして報告したりしていますが,各地域のコミュニティとはフラットな関係で,指示系統はありません。

パネル:「コミュニティどうよ」 山形/関/高須

パネルでは、「とはいえ、言うのは簡単だがやるのは難しいコミュニティとどう付き合っていくか」について、また多くの人を巻き込むからこそ発生する面倒臭さとどう対応していくかについて、かなり突っ込んだ話ができて面白かった。
なにより、かなりアタマのいい人でも自分の中のフレームから逃れることは難しく、相手のフレームにあわせて物事を考える必要があるのだけど、そのためには意思決定の明確化や外部化みたいなものが必要で、結果としてなにかの方法で他人の力を借りる必要が出てくる…みたいな話ができたのが面白い。
その中で、「自分ではオープンのつもりでいてもしばしばオープンになりきれない」ことを活写したヨハン・ノルベリの新著「OPEN」(これも山形さん翻訳)の話も興味深かった。

いま、OPENと遠くへ行きたければ は、どちらもamazonで関連性No1の位置にいる。こうした考えが、日本の閉塞感を打破してよりよい世界に向けるのは間違いない。「やりたい人がやれてない、お仕事で仕方なくやってる人に多くの権限がある」のが、世の中を難しくしている。
今回のイベントに続いて、多くのイベントを続けていくので、考えを深めていけるとありがたい。



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