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取材の記憶(若手記者時代#1)

私は20代の大半を岩手県で過ごしました。今でも忘れらない景色が多々あります。

まだ雪をかぶった岩手山を背景に圧巻の星空のもと、壮大に咲き誇る一本桜を見た小岩井農場の夜

南国の海を凌駕する、無色で透き通った海に囲まれた山田町のオランダ島

あまりにも鮮やかな色彩のコントラストに、言葉を失った八幡平市の紅葉の数々

2メートルを超える積雪のなかを走る、秋田県境にある西和賀町の除雪列車

そして、東日本大震災の被災地で見た景色と、出会った人々との思い出。

ベンチャーキャピタルの世界に飛び込んで、まもなく1年が経とうとするなかで、いまだに「変わった経歴ですね」と言われることが多々あります。そこで自分がNHKの新人記者時代にどんな取材をして、どんな記者だったのか。少しずつnoteでお伝えしていきたいと思います。

最初に東日本大震災のことを書き始めると止まらないので、周辺のお話しからさせてください。


警察担当

警察担当時代、よく覚えていることを2つ紹介します。

AKB48の握手会で起きた事件(2014年5月)

画像:2015年2月10日 NHK盛岡放送局「おばんですいわて」より

休日の夕方、携帯電話が鳴りました。この日、日直の先輩記者からのメールでした。

『滝沢市のAKB握手会場で、人が切りつけられたみたい。詳細はまだ分からない。現場に行ってもらうかもしれない』

そしてほどなくして、今度は携帯が鳴ります。連絡の間の短さから、これはまずいかもしれない、という直感があたります。

『警察から裏とれないけど、Twitter上で、AKBのメンバーが襲われたと。現場たぶんここだから急いで向かってくれ』

タクシーに飛び乗った私は、所轄に連絡しつつ、先輩の電話に対応し、そしてtwitterを見ながら現場に向かいました。

現場に着くと、建物周辺には規制線が張られています。警察だけでなく、先まで握手会場にいた人もいました。話を聞くと、メンバーが襲われたことはほぼ間違いがありません。

現場を一通り取材し、夜のニュースの原稿を書いたあと、県警本部の記者クラブに向かいました。記者クラブに着くと、他社の記者たちもあわただしい様子でした。

事件性の大きさから、警察の報道発表も初報のあと、二報、三報、と続報が次々と出てきます。9年前のことなので若干記憶が曖昧ですが、夜中にかけて第八報まで警察発表の続報が出た記憶があります。そしてケガをしたメンバーについても、そのなかで正式に発表がありました。

その後、翌日のメンバー退院の取材、連日の警察・検察取材、裁判取材、一通り取材を担当しました。

この事件。何が印象的かというと「握手会でメンバーを襲う」という、当時のAKB48の人気を支える握手会の仕組みそのものが問われたことです。

握手会場でメンバーが襲われる事件は起きうるかもしれない。でも起きたら握手会そのものがなくなる。だからそんなことしないはずーーという思いがありました。そこに対し、この事件は正面から起きました。

「なぜこの事件は起きたのか?」「教訓にすることはなにか?」そんな問いをずっと持って、裁判まで見てきました。刑事事件の裁判は、時に本当につらい場面に遭遇します。この裁判も、その一つでした。

襲われたメンバーたちの精神的苦痛は相当でそれは計り知れません。ただ、事件から10年近く経ち、いまも活躍しているメンバーの名前をニュース等で拝見すると「本当にすごいな」と感じます。

そして、コロナ禍で中断していたAKB48の個別握手会が、ことし10月に3年10か月ぶりに再開のニュース。

当時を知る一人として、敬意を持って。

初めての中継企画(2015年1月)

画像:2015年1月16日 NHK盛岡放送局「おばんですいわて」より

1月18日は「118番の日」ということで、海上の事件・事故の通報番号「118」にあわせて1月16日に行った放送。

10分弱の企画でしたが、これが手持ち原稿・カンペなしの初めての(疑似)中継企画でした。

案内してもらったのは、当時釜石海上保安部の部長で、ことし3月から東海3県を管轄する第4管区海上保安本部の本部長(トップ)を務める奥康彦さんです。(異動をみて、奥さんが第4管区の本部長と知り驚きでした。管区の本部長…すごい…)

この日の中継では、普段海の安全はどのように守られているのか。巡視船「きたかみ」の搭乗し、通信指令室や操舵室などを紹介してもらいました。

中継時は、「いま見えているもの」に意識をして話をふったり、移動の導線を踏まえて話を展開したり、とスタジオでの記者解説と少し違うことを意識します。

事前に頭の中でステーリーを描いていますが、それを意識しすぎると躍動感がなくなって、全体的に固くなり、現場感が無くなってしまいます。

これが結構難しい。その点、取材慣れしている奥さんはとても上手でした。

よく現場から中継しているリポーターが1分ほど話しているのを見かけますが、実際に話してみると「1分間話す」って短いようでとても長いです。

これに加えて、画面に見える「大きいもの(特に気になるもの)」から「小さいもの(より詳細なもの)」に振りながら1分間、画面に見える映像を説明する、って本当に大変です。

「いま自分がいる部屋」を1分間、視聴者に分かりやすく説明してください。と同じような感覚かもしれません。

この企画が、「現場で絵を伝える」ということの根幹になったと思います。

視聴者が映像を見た時に、「何を意識するのか」「何を知りたいと感じるのか」これは本当に学びが深いです。

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