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リーグワンやラグビーに関して取材を頂いた記事まとめ~プロスポーツビジネスの本質とは

静岡ブルーレヴズとしての1stシーズンが終わり早くも3ヶ月が過ぎようとしています。Bリーグならあと2ヶ月で新シーズンが開幕というところですが、12月のリーグワン開幕まではあと4ヶ月以上💦
チームのことが忘れ去られてしまうのではないか心配ですが、オフシーズンが長いことをポジティブに捉えて、しっかり開幕に向けて準備していきたいと思います。

さてこの間、リーグやラグビーに関して多くのメディアの皆様より取材をいただきました。ラグビー界で真っ先に独立分社化してチーム名から企業名を無くしたクラブに他競技からやってきた異色の社長、というもの珍しさもあっての取材かと思います。「ラグビー経験がない者が何を言うか」「ラグビー界に来て1年くらいで何が分かるか」という声が聞こえてきそうですが、大変僭越ながら感じたこと思ったことを述べさせていただきました。

ラグビーマガジン7月号

これらの記事のコメントで共通してお伝えしたかったことは、プロスポーツビジネスの本質とも言える2つのことかなと思っています。ひとつは「何より試合が重要であること」、もうひとつは「予定調和を生じさせないこと」、です。

プロスポーツビジネスにおける価値の源泉は「試合」です。いやそれは選手やチームだろうと思う方もいるかもしれませんが、選手やチームは原理的に単体では価値が生じない=マネタイズできません。スポーツが争い事である以上、対戦すなわち試合をしなければスポーツとしてのコンテンツの価値は生じませんし、チケットやスポンサーや放映権といった権利商材は全て試合に紐づくものです。もちろん選手の肖像やチームのロゴマークだけでもビジネスは生まれますが、それらはタレントやブランドのビジネスと同義であり、スポーツならではのビジネスの特性とは言えないでしょう。

マネタイズという観点以外でも、選手やコーチの成長、メディア露出、交流人口の創出による地域活性化など、全ては「試合」というものに紐づいています。リーグワンの試合数を増やすべき、という考えは「何より試合が重要であること」というプロスポーツビジネスの本質に基づいた提言です。

もうひとつプロスポーツビジネスにおいて重要なことは「予定調和を生じさせないこと」、すなわち「どっちが勝つかわからない」「どのチームが優勝するかわからない」という状況を常に生み出すことです。音楽や映画などのエンタメコンテンツとスポーツとの違いは、再現性が無いことであり、結果が不確実であることにあります。だからこそスポーツには「ハラハラ・ドキドキする」という独特の価値が生じるのです。

よってプロスポーツの価値を最大化するためには、予定調和が生じない状況をいかにつくるかということが鍵になるのですが、一方でチームや選手は自分たちが勝ちたい・勝てれば良いという発想に当然なっていきます。なので放っておくと経済力や歴史・実績や人気のあるチームが強くなり、そうでないチームが弱くなるという二極化が進み、結果スポーツとしてのコンテンツ価値が劣化するという事態が生じてしまいます。もちろん選手の努力や戦術の妙で下剋上が起こることも稀にありますが、特に1試合あたりの出場選手数や得点数の多い集団競技においては、中長期的にみると予定調和化が進行する傾向にあります。

これに真っ向から挑んでドラフトやサラリーキャップなどいわゆる戦力均衡を促す制度を開発したのが北米プロスポーツリーグであり、完璧な戦力均衡というものはもちろんないものの、数年周期で強いチームと弱いチームが入れ替わったり、諸制度を活用することで多くのチームに優勝するチャンスが巡ってきたりしています。「予定調和を生じさせないこと」はチームの思惑とコンフリクトが生じるのでなかなか難しいことではあるのですが、プロスポーツビジネスとしての価値を高めるためには重要な考え方なのです。

上記は2022シーズンのリーグワンDiv1各チームの各種数値を比較した図表です。静岡ブルーレヴズの立場でいろいろ述べると「なんだよ!負け惜しみかよ!」と突っ込まれそうですが💦いろいろな傾向が見えてくると思います。鶏が先か卵が先かの議論になるかもしれませんが、戦績順位や過去の優勝回数と観客動員や日本代表選手数は比例している傾向にあります。

そして自分もあらためて驚いたのですが、リーグワンの前身であるトップリーグにおいては、過去18シーズンに参戦した24チーム中、優勝したことがあるチームは4チームのみとなっており、統計的には予定調和が進んでしまっていたという見方もできると思います。

もちろんどのようなリーグの制度であっても、現行のルールのもとで各チームが切磋琢磨し努力して戦績や集客を向上させることが大切であることは言うまでもないのですが、リーグワンが後発のプロリーグであり相対的に野球やサッカーと人気の差が生じてしまっている状況にあっては、戦力均衡に関する制度については他競技以上に重視する、という視点や論点はあっても良いのではないかと思います。

長々と書いてしまいましたが、プロスポーツビジネスの本質に立ち返るに、リーグワンを発展させるためには、何よりまずは「試合という機会を増やすこと」、そしてその試合をよりハラハラ・ドキドキする面白いものとするために少しでも「予定調和を生じさせないようにすること」が必要不可欠と思います。

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