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日本は、銅と亜鉛の枯渇の危機に対応する必要があるでしょう。『元素のふるさと図鑑』

『元素のふるさと図鑑』は、鉱物がどこで生まれ、どのように活用していくのかを知るためのビジネス書です。

「インジウムは特別なインジウム鉱山があるわけではなく、亜鉛を製錬するときに分流して回収されます」「仮に品位0.5%の銅鉱石から1年間に100万トンの銅を生産するとしたら、1.9億トンの沈積物が排出される計算になります」「リチウムは電池の用途が急激に増えていますが、リチウムの埋蔵量は豊富で、しばらく枯渇の心配はありません」など、鉱山以外の産出方法があることがわかります。

特に「マグネシウム:2010年のレアアース危機と似たボトルネックをもつメタル」は、レアアースとは別に中国の政策によって危機に陥る可能性を示しています。

「世界のマグネシウム化合物生産の70%、金属マグネシウム生産の36%を中国が占め、日本は金属マグネシウムの99%を中国から輸入」しているために、生産量の大きな偏りにより、意図的に危機を生み出してしまうのです。

ちなみに「レアアースの危機:ジスプロシウムの流れを見越して、人為的なボトルネックをつくりだし、政治に利用した」のが原因です。

なぜなら「ジスプロシウムを増産しようとすると、鉱床に混ざっているほかのセリウムやランタンなどのレアアースの生産量が過剰になり、バランスが崩れるから」と、他の物質の供給過剰を利用して、希少性を演出してみせたのです。

日本も再びレアアースのような危機に陥りたくなければ、中国からの依存を分散させる必要があるでしょう。

 

「セレンは主産物としては産出せず、9割が銅を電解製錬したときのバイプロダクトとして回収されています」「銀は、埋蔵量の少ないメタルで、古くから枯渇が心配されています」「枯渇にもっとも近い位置にあるのは銅と亜鉛、とくに銅だと考えられます」などを通して、意外な物質が枯渇の危機に陥っていることを知ることができます。

特に「白金族:白金/パラジウム/ロジウム/イリジウム/ルテニウム/オスミウム」は、ひとつの元素としてあつかわれていたものを6つの元素に分けることで高機能な材料が開発されることを教えてくれます。

昔は、技術的に白金族を分離できず、1つの物質として扱っていました。

しかし、今は技術が発展し、6つに分離することで、「それぞれの性質、特異な化学反応性、広い温度範囲にわたる安定性、高い融点などをたくみに組み合わせる」ことが可能になり、高い性能を持った元素を生み出すことができます。

知られざる鉱物の知識を知りたい方にオススメです。

 

#元素のふるさと図鑑 #西山孝 #化学同人

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